さて、前回の続き。
シューズは、コートサーフェスと足にフィットしていればOK。
ガットはすぐに張り替えるのが前提だから、自分のプレイがなれてからでも遅くない。
問題はラケットです。
自分に合っているかどうかなんて、打ってみないと分からないのに、テニスの練習のためには、とりもなおさず一番最初に買わなきゃいけない、っていう矛盾。
しかもけっこう高価なものですから、気にくわなかったら買い換える、というわけにもいかず、一般の高校生の中には、はじめに買った1本をずっと使い続ける選手も多い。
最近は、試打ラケットを準備しているショップも多いですが、あれはあくまでも「比べられる」経験があればこそ役立つサービス。
初心者にとっては、何がいいのか悪いのか、自分に「合っている」とはどういうことなのか、分かるわけがありません。
これは、僕がもっているラケットを何本か持って行って生徒に説明します。
「値段は、すごく安いのもあるけど、さすがに安いモノで『いい』ラケットはない。
ただ、高いラケットとは言っても、電化製品と違って、値段に比例して機能オプションが増える訳じゃない。
だから、最初は1万円台以上なら十分やし、かっこいいやつを買って、もしも物足りなくなったら、買い換えればいいよ。
おばあちゃんになるまでテニスをするつもりなら、高いの買っても元がとれるかな」
「ラケット面の大きさは、平方インチで必ず表記されてる。90平方インチ~110平方インチを超えるやつまでいろいろあるから、気をつけて。
小さいやつはスイートエリアに当てるには技術が必要だけど、当たったときの感覚はやっぱり気持ちいい。
だから、50点か100点か、っていう両極端。
大きいやつはスイートエリアに当てるのは簡単だけど、いつも70点の打球感になる。
最初は、100インチぐらいでいいです」
「ラケットには、重心がラケットトップ側にある『トップヘビー』と、グリップ側にある『トップライト』がある。
物理的に言えば『トップヘビー』だと慣性モーメントっていうやつでラケットが安定する代わりに、その分、動かしにくいってことだから、筋力がないと小手先のラケットワークはきかない。
逆に『トップライト』のやつは、ラケットワークは楽になるけど、いわゆる『ボールに負ける』っていう状態になりやすい。
人差し指の上に天秤みたいにラケット乗せると、ラケットごとに重心の違いが分かるから、お店でやってみて。
ラケットの重さも、ピンキリで、重い方が安定しやすく、軽い方が動かしやすい。
ただ、300gを超えるやつだと、長い練習とか試合で、持ってるだけで疲れるから、女の子は辞めた方がいいよ。
『疲れない程度の重さで、トップヘビー』っていうのがいいと思うから、ラケット売り場のスペースで飾ってあるラケット、片っ端から、軽く振ってごらん。
違いが分かるから」
と、こんな感じです。
ホントは、実際の重さと重心の違いによる「スウィングウェイト」の話とか、スウィングスピードをどれだけ速くすると、ラケット何グラム分のエネルギーを補完できるか、とかを説明したいぐらいなんですが、理科嫌いからテニス嫌いになっても困るのでガマン(笑)
結局は、ほとんど「しばり」はつけません。
なかには、メーカーやラケットの種類まで限定する顧問がいますが、僕は反対です。
家庭の事情によって、選べるラケットに限りがある生徒も最近多くなっているからです。
部活動で最悪なのは、「いいラケット」「悪いラケット」という本来は個人それぞれに体感の違う基準が一般化したかようなデマが広がり、
「自分が持っているラケットは『良くないラケット』」
と思ってしまう、または思われてしまい、寂しい思いをする生徒や保護者が出ること。
僕にとっては、
「デザインがかわいいから選んだ」
と(本心は別にして)、そういう理由が許される部活のほうが、健全だと思うんです。
ただ、グリップは、
「1(4+1/8)、2(4+1/4)って書いてある『細い』グリップのやつを買って、自分の手の大きさに合わせて、あとでオーバーグリップを巻いて太くしなさい」
といいます。
グリップの太さは、ラケットのフィーリングを左右する大きな要因となります。
グリップの太さだけでプレイスタイルがガラッと変わるわけじゃないですが、やはり「しっくり」こないと、いいプレイはできない。
そこで「グリップの太さ」についての簡単な考察を、次回してみたいと思います。