さて、前回には、サーブなどに必要とされる「回内」という運動は、
1.前腕の2本の骨のねじれによっておこること
2.そのために、腕を伸ばした状態での可動域は、100°程度しかないこと
などを説明しました。
さて、その続き。
腕を伸ばした状態での「回内・回外」の可動域は100°程度ですが、肘を曲げると、一気に可動域が広がります(図4。図1とほぼ同じですが)
外側にほぼ70~80°、内側にもほぼ70~80°で、合計で150~160°近く回すことができるんです。
橈骨と尺骨のヒジとの接合位置や回内筋・回外筋の引っ張られ具合が変わるからなんですが。。。難しいので説明は省略。
そんなもんなんだ、って思ってください。
問題は、これが何を意味するのか、です。
よく雑誌やネットなどで「プロネーション」として紹介されている腕の動きは、チョップを繰り出すように小指から腕を伸ばし、インパクトを通して腕を回転させ、親指から落とす「180°以上のひねり」なんです。
下の図を見てください(図5 スマッシュ2013年2月号。編集者の方々ごめんなさい)。
ほら、このコーチも、肘を曲げてるでしょ?
実は「回内」とは言っても、腕を伸ばしたままでは100°程度しか可動域がない小さな動き。
上図のコーチのように、肘を折りたたむことで、180°のひねりを生み出している人はたくさんいます。
かつての№1プレイヤー、ピート・サンプラスも、サーブのフォロースルーで、大きく肘を曲げていたのを覚えていらっしゃる往年のテニスファンも多いかも。
あるサイトや本などでは、
「サーブの後に、肘を折りたたむのは、肘を痛める原因になるからやってはいけない」
と書いてあるものもありますが、これは間違い。
少なくとも、サーブでの回内運動を推奨しておきながら、そんなふうに言うのは全くの無責任です。
腕を伸ばしたままの回内は可動域が100°程度しかなく、フォームによっては、肘を曲げなければ前腕の回外筋の伸張によって急ブレーキがかかり、かえって肘を痛める可能性のほうが高い。
回内運動で生じたラケットの慣性を、ゆるやかに「受け流す」ためにも、肘を曲げることは十分にありえるんです。
逆に、肘を曲げることにとらわれすぎて、
「肘を折りたたむことで、パワーのあるサーブを打てる」
というのももちろん間違い。
パワーのある回内運動や腕の振りによって、結果、肘が曲がってしまうだけですから、原因と結果を取り違えるとただの強引なスウィングになってしまいます。
回内運動一つでも、すごく奥が深いでしょ?
少なくとも、
「手首をひねれば(手のひらが外側を向いていたら)OK」
なんていう単純なものでは全くない。
さて、ここでもう一つ。
下の図をごらんください(図6 スマッシュ2013年2月号。これまたごめんなさい!他に手が無くて。。。)
お気づきになりましたでしょうか?
アザレンカとツォンガのサーブの写真ですが。。。そう、先ほどのコーチの写真(図5)と違って、思いっきりヒジが伸びてますよね?
それなのに、腕が180°ひねられてますよね?
さっき、僕が言ってることと、矛盾してますよね?
おかしいですよね?
「プロだからできる」なんていう、野暮なことは申しません。
これも、実は、腕の骨格構造に秘密があるんです。
それについては、また、次回。