今はもうない小さな居酒屋。
その小さな居酒屋に、昔、友人につれられてよくいっていた。
そこに酒癖が少々悪いけれど…
ちゃんと話すと、とても真面目で優しい人がいた。
昔野球をやっていて、高校野球にもでていたらしい。
とてもすごい選手で、町のヒーローのような人だったらしい。
だけれど、シゴキとか、そういうのを雑誌にすっぱ抜かれて
彼はダークヒーローのようにされ、退学をしたらしい。
そのころの話は新聞やらにでたとかでないとかいう大騒ぎの話だったらしい。
私は小さい頃だから何も知らないけれど・・・
まぁ実際には彼がやっていたというよりも
どこにでもあるような話レベルだったけれど
彼は目立っていたから「目を付けられた」感じだったらしい。
今のイジメやらの犯罪というのとは程遠いレベルだったわけで。
彼も先輩にやられていたレベルのもだったらしい。
(もちろん自分がやられたから、他人にやって良しとは思わないが)
これは、周りの常連が教えてくれたことで彼の口からは聞いていない。
彼は片目が義眼だった。
マスターから聞いた話で、彼が自暴自棄で荒れていた時期に
酔っぱらってやく●と喧嘩になって、ビール瓶が刺さったかららしかった。
とても精巧でいわれないとわからないレベルだったので
何も気にはしてなかったのだけれど。
マスターに
「あいつは悪いやつじゃないけどよ。
酒癖は悪いから、あぶなくなったら追い出すけど。危険を感じたらかえれよ。」
といわれていたので、危険な酒癖の持ち主と心にメモして
それなりの距離を置いて話をしていた。
ある日、その彼と友人(男)となんとなく3人になった。
出身をきかれ「徳島だ」と答えたら
彼はいきなり語りだした。
彼が義眼になるような喧嘩を起こす前…
実はジャン●尾●(徳島出身)の付き人というか弟子入りをしていたそうだ。
野球をしていたから、いろいろなつてでジャン●さんを紹介してくれた人がいるのだろう。
(ジャン●さんも元々は野球をやっていた)
それだけの身体能力があったのだろうけれど・・・。
彼をかわいがって、いろいろと指導してくれたらしい。
そんな義理がありながら、野球の夢もやぶれて自暴自棄だった彼は
いろいろと迷惑をかけるような事をしてしまったらしい…。
いろいろと本当に面倒をみてくれたのに、これ以上迷惑をかけるわけにいかなくなり・・・
やめざるを得なくなったらしい。
そして、なおのこと自暴自棄になっていた彼は、やく●と酔って喧嘩をした。
片目を怪我し…プロゴルファーになるという夢もあきらめないといけなくなった。
自暴自棄でただ暴れるだけだった彼が
絶望に立たされて、その時「死」を何度も考えたらしい。
その時にジャン●さんから直筆の手紙が来たらしい。
励ましの言葉が書いてあり、「お前の事を信じている」と書かれていたらしい。
その手紙を読んで「この人をまた裏切ってはいけない」と思ったらしい。
彼は家の家業を継いだ。
たまに酒で失敗をするけれど。
自暴自棄のころのように、誰も寄り付かないような状態ではなくなって
本当にいいやつとして、相談したり話したりする酒飲み仲間の一人になっていた。
彼:俺ね。俺の前でジャン●さんの悪口いうやつは絶対に許さないよ。
あんなに優しい人はいないよ。
俺みたいなやつにもね、ちゃんと手を差し伸べてくれて。
俺ね。絶対にね。ジャン●さんの悪口言うやつはね…言うようなやつはね…
うっうっうっ。
そういって泣きだした。
いつもの酒癖の悪さは、喧嘩っぱやくなるだけで
彼が泣くのはマスターも友人も初めてでびっくりした。
私:素敵な人だっていうことはわかったよ。泣くなよー。
同郷だもん。悪口いうやつは私も許さないよ。
乾杯しよう。
そんなことを言ったかなんかで、なんとか場を収めようとした覚えがある。
友人とマスターに「酒癖が悪い奴に酒をすすめるなよ」と
後で注意されたのも覚えている。
その店が閉まり…彼とも会うこともなくなった。
きっと今も元気な気がする。
ああいって泣いていた彼が、悪いことをしているとは思えない。
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昨日、ぴったんこカンカンでジェットの結婚式をやっていて
ジャン●さんが泣いているのを見て彼がいっていたことを思い出した。
彼:本当に大きな人なんだよね。
絶対に足を向けて寝れないんだよ。
あの人がいなかったら、俺、死んでたかもしれないんだよね。
変な言い方かもしれないけれど。
ジャン●さんのことは絶対に嫌いにならないでほしい。
強面だけど、彼のいってる優しいところや大きなところをなんとなく感じた。
彼のことを嫌いじゃなかったし、彼があれだけ真剣にいっていたこと…
なんか、すごく心に染みた。
だからきっと・・・彼の大好きなジャン●さんのこと
私は嫌いになる事は絶対にないと思う。