配役
イージェ・テンペスタス(♂):
葵嗣陽(あおいつぐはる・♂):
月華1(げっか・不問):
月華2(不問):
※月華1、2は兼ね訳OK

イージェM
「そこは地獄だった。」
葵M
「道は絶えている。」
イージェM
「今日という日が焼け落ちている。」
葵M
「明日という未来は閉ざされている。」
イージェ
「俺には……。」

「わっちには……。」
イージェM
「闘い続けることしか、出来なかった。」
葵M
「それしか知らなかった。」
イージェM
「だが、封魔の世界で、俺たちは知った。」
葵M
「この力は、明日を求める為にあるのだということを……。」

場面転換、イージェの過去

イージェM
「斬る……叩く……抉る……突き刺す……そして殺す……殺して、殺して、殺して、殺して、殺し尽くして……俺は、俺という自我を見失いかけた……」

イージェM
「戦えればそれで良かった。それだけで、見失う事を忘れられた。感情を封じられる恐怖を、抑えられた。」

イージェM
「ある時、おかしなじいさんに会った。俺の力を元に戻してくれるという……。いや、本来の形に直す?とにかく、そこから俺の道が、拓けたような気がした。」

イージェ
「んん……。」

「随分深く眠っておりんしたね、イージェ様。お疲れでありんすか?」
イージェ
「いいや、たまたまだ。俺はいつも深くは眠らねぇ。ところで嗣陽……何してる……。」

「え?膝枕でありんすけど……。」
イージェ
「俺が深く眠ってるのをいい事に勝手に俺に触れるな。ぶっ飛ばすぞ。いや、死ね!」

「怖い怖い……うふふ、良い寝顔でありんしたよ?」
イージェ
「やっぱここで殺す……。」

「冗談でありんす。険しいお顔をしておいででありんした。」
イージェ
「ちっ……別に……大した事じゃねぇが、夢を見ていた。過去の事だ。忘れていたと思ったんだがな。お前にはそんなものねぇのか?」

「ありんせん。気づいたらわっちはわっちでありんしたし、思い出そうにも頭の中で霧でも掛かってるみたいにボヤけているのでありんすよ?」
イージェ
「そういや前に言ってたな。記憶喪失ってのも大変だねぇ……。」

「記憶喪失とは言ってござんせん。そういうのとは違うと思いんすが…。わっちは気づいた時には封魔でありんした。この力を使い、魔性を封印して来んした。生きる為に魔性を封印するのが、わっちの使命だと、それだけはわかりんしたけど……。」
イージェ
「その他は自分の特性しか理解していない、と。厄介なもんだな。」

「お陰で強い人を求めるようになりんしたなぁ。イージェ様みたいな、ねぇ?」
イージェ
「迷惑極まりないぜ……。んで?次のターゲットは?依頼人からは情報下りて来てんだろ?それから珋緂の嬢ちゃんは?此度の任務は何故同行しない?」

「珋緂は前の戦闘で力を使い過ぎたのでありんす。超展開を長時間使用し続けておりんしたから……。御狐亭に居たのは予め御狐亭が困らないように作っておいた、珋緂の贋作、術式人形でありんしたよ?本物は隠し部屋で眠りについているでありんす。もう10日も目を覚ましんせん。」
イージェ
「そうだったのか……気づかなかったぜ……どうりで俺には笑いかけるしかしてこなかったわけだ。ならいい。敵の情報は?」

「依頼人……まぁ、傭兵皇帝様でありんすけど、国境の街に夜な夜な魔性が出るとの事でありんす。階級は霊瘴。街の封印術士総動員してもどうにもならず、わっちらに依頼してきたようでありんすなぁ。」
イージェ
「霊瘴まで来ると封印術士程度じゃどうにもならんしな。で?どんな霊瘴だ。」

「戦闘情報を見るに、霊瘴は2体居るようでありんす。ただおかしなことに倒しても倒しても復活してくるようで、にっちもさっちも行かないようでありんすなぁ。」
イージェ
「ちょっとばかし厄介か?復活のからくりを暴かないと長期戦になりそうだ。」

「ええ。それに雑魚も多く出てきんしょう。短期決戦が望ましいと思いんす。」
イージェ
「よっしゃ!とりあえず片っ端からぶっ飛ばして行くか!」

「ふふっ、単純なお人。」

場面転換

イージェ
「おいおいおいおい!!!マジで雑魚しか出てこねぇじゃねぇか!!霊瘴はどこだ!?」

「この量の魔性共による波状攻撃。かなり後方にいると見んした。イージェ様、早速でありんすがまずはお掃除と行きんしょう。」

イージェ
「しゃあ!目に物見せてやるぜ!!」

「わっちらの封力(ふうりき)も、頃合でありんす……!行きんしょう!」
イージェ
「おうよ!さぁ、目ェかっぽじってよく見とけ雑魚共!」

「これから見る景色が、あなた達の最後の景色になりんすえ。」
イージェ
「行くぜ!四神顕現!」

「黄龍顕現!」
イージェ
「光携(たずさ)え現るは、穢(けが)れを祓う五柱(いつはしら)!」

「我らの名のもとに、不浄なるモノを封殺せん!」
イージェ
「聖獣陣!

「封縛殺!」
イージェ
「天魔!」

「覆滅!」
イージェ
「ここら一帯は封印したか?」

「そうでありんすね、けれど、気配は消えてありんせん。丁度北と東から強い気配を感じるのでありんす。ここは二手に別れる方が効率が良さそうでありんすなぁ。」
イージェ
「んじゃあ俺ぁ北。お前は東を行け。」

「よござんす。」
???
「くくく……狙い通り二手に別れたようだぞ?私。」
???
「そのようだな、私。2人一緒なら強力でも各個撃破なら問題あるまい。東は任せたぞ。」
???
「ああ、任された。北を頼むぞ、私。」

場面転換

イージェ
「おお〜、おお〜……ははっ、心地良い殺意だ……居るんだろ?出てこいよ。そんで名乗りを上げやがれ。首を取ってやる。」
???
「くくっ……愚か、愚か愚か愚か!たった一人で私に挑もうと言うのか、流石は下等種族。頭の悪さは最上よな。貴様はまんまと我らの策に嵌ったのだ。我が名は月華……貴様らを滅する者だ……!」
イージェ
「魔性如きがマジで名乗り上げるんかよ…くくっ、策だぁ?…まさか、本当に俺らがてめぇらの策に嵌ったとでも思ってんのか?」
月華
「然り。我らは見たぞ?貴様らのあれ程の力、二人揃っていないと出せないのではないか?人間は力を合わせねば魔性一匹と倒せない脆弱な種族だ。なれば……、どんなに力が強くあろうと各個撃破すれば問題はない。」
イージェ
「あー、そういう事ねぇ……んで?もう一方の奴にも同じ事宣ってやがんのか?」
月華
「そのようだ。今頃苦戦しているに違いあるまい。……どうした、私?」
月華2
「こ、こやつ!人間ではないのか!?これ程私を追い詰めるなど!」
月華1
「何を手こずっているのだ。心配は要らん。人間に我らは絶対に倒せない。冷静になr」
イージェ
「おっと悪い、隙だらけだったんでな。」
月華1
「貴様…私の首を……!だが無駄だ!」
イージェ
「ふーん……再生すんのか…封印するには魔性の核を潰さにゃならんが……どっちかに保管?それとも両方か…基本頭にある筈だが……」
月華1
「思考する間など与えぬ!」
イージェ
「おっと危ねぇ、とりあえず攻めて行くぜ!!覚悟しな!我はイージェ!封魔が一人、イージェ・テンペスタスだ!推して行くぜ!!」

場面転換

月華2
「有り得ぬ……有り得ぬ有り得ぬ!!貴様何をした!?霊瘴である私に人間風情がここまで傷をつけるなど!!」

「何をした?んー……見えなかったのでありんすか??霊瘴なのに??わっちはただ、我が愛剣、黄龍を存分に振るい、主様を切り刻んだだけでありんす。流石に頭を残して他は細切れにしてしまえば、再生は遅いんすなぁ。優先して再生しているのは頭……という事は、頭に核があるのは必然。ね?何度でも、何度でも、潰してさしあげんしょう……ついでに教えてくりゃれ?」
月華2
「な……何を?」

「魔性にも……痛みはありんすか??」
月華2
「ぐぁぁぁあ!」

「ふふふ……痛い?痛い?もっと聞かせておくれやす?主様が殺した人間たちの分まで、声を上げてくださいましね?」
月華2
「あぁ……あぁ……!やめろ!やめろぉ!ぐぁぁ!痛い痛い痛い痛い痛い、もうやめtぎゃぁぁあ!!」

場面転換

月華1
「念話が出来なくなった……!くっ……!何をしているのだ!」
イージェ
「大体察しが付くが、残念だったな。俺達はそんじょそこらの封印術士とはわけが違う。後悔して果てろ……!」
月華1
「認めぬ……認めぬぞ!!はぁぁぁぁ!!」
イージェ
「護れ!核鉄強羅!!甘いんだよ!!」
月華1
「ぬぅ!!」
イージェ
「玄武双撃打!!」
月華1
「ぐぅ!早い……!早過ぎて視認出来ぬ!」
イージェ
「遅い!白虎連冥牙!はぁ!!もう1つ貰っていけ!青龍風巻閃!!」
月華1
「何故だ……何故ここまで手が出ない……やっと霊瘴になれたのに…
これからもっと殺戮が出来ると思ったのに!まだだ!まだ終われぬ!この下等種族がぁ!!!」
イージェ
「冥土の土産に教えてやるよ……てめぇは勘違いしている。」
月華2
「か、勘違い?」

「えぇ…!多大なる勘違いでありんす!」
イージェ
「二人の力が合わさって強いって?ははっ!抜かせ!」

「わっちら、手を組まない方が強いのでありんすよ?」
月華1
「馬鹿な……!馬鹿なぁ!!!」
月華2
「人間なんぞに!!!我らが負けるなど!!」

「トドメでありんす。」
月華1
「だ、だが我々の弱点は知られていないはず…!生きてさえいれば…!」
イージェ
「まさか倒しきれないとでも思ってるんじゃねぇだろうなぁ?」
月華2
「!?」
イージェ
「てめぇは弱い。各個撃破なら束になった封印術士にやられているな?だが倒せなかった。まぁ、答えは単純だったんだ。てめぇらはどちらかの個体さえ生きていれば死なねぇんだろ?」

「一個体が二つに別れて核を共有した…ってところでありんしょう…やっと倒したと思ってももう一体残っているから復活してしまう…なんともまぁ面倒な存在でありんす。消耗した先に倒されるんでありんすからなぁ。」
イージェ
「そういやさっき念話もしてたな。互いに指示を出し合って、一体は隠れて、もう一体で消耗戦に持ち込む、倒されたとしても隠れた方が見つけられずに復活される。全く狡いことしやがるぜ。」
月華1
「何故念話の事がバレている…!まさか!」
イージェ
「俺達も使えるんだよなあ。念話…!……さぁ!!幕引きと行こうや!!嗣陽!!!合わせろ!!」

「よござんす!今、舞貫くは黄龍の牙!」
イージェ
「空駆ける朱雀は煉獄の如く…!」

「黄龍突剣!累!!」
イージェ
「朱雀絶閃衝!!」
月華1
「これまでか…」
月華2
「これが……封魔…」
イージェ
「天魔!」

「覆滅!」
イージェ
「厄介な奴かと思えば、意外に単純なネタだったな。合流するぞ、嗣陽。」

「すぐ向かいんす。」
[少し間を空ける]
イージェ
「さて、と。使い魔は傭兵皇帝に送った。後は帰るだけか…
よお、嗣陽、遅かったじゃねぇ…か!?!?てめぇ、なんのつもりだ…?」

「今なら気分も高揚してござんしょう?闘いに応じてくれると思いんして…ダメ?」
イージェ
「めんどくせぇよ!!テンション上がって文字通り斬りこんでくるんじゃねぇ!!!」

「そうでありんすか…残念、滾る殺し合いが出来ると思ったのでありんすが……」
イージェ
「なんか言ったか…?」

「なーんもありんせん。部屋に戻るでありんす。」
イージェ
「全く……」
イージェM
「今宵の魔性殺しはこれにて終いだ。俺達はこれからも魔性を殺し、封印していくだろう…。それが、俺達の道だからな。
封魔、陰の章……
これは魔を封じ、やがて神足り得る魔性を穿つ、人になり損なった者たちの物語……。
何?てめぇも魔性だって?だったら覚悟を決めな!俺の中に…永遠に堕としてやるよ……!!」

終幕