ボコボコの本棚

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私は読書も好きですが、珈琲も好きです。雰囲気の良い喫茶店で美味しい珈琲を飲みながら小説を読む時間は何物にも代え難い贅沢だと思っています。

さて、今回の本はそんな私にぴったりと言えるような、喫茶店を舞台にした作品のこちら↓

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森沢明夫著『虹の岬の喫茶店』です。

★あらすじ

人の手の余り入らない、ともすれば見逃してしまいそうな細道の先にある小さな岬。そこには一人の老婦人が営む小さな喫茶店「岬カフェ」がある。そこでは美味しい珈琲とともに、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。喫茶店を訪れるのは、人生に躓いたり、心に傷を負った人々。そんな人々を、老婦人は言葉と珈琲、そして音楽によって優しく癒していく。


もう…読後は胸がいっぱいで…本を閉じて暫く涙していた程でした(喫茶店に居たのでだいぶ恥ずかしかった)

最近、喫茶店を舞台にした小説(特にミステリが多いかな?)が多いと感じますし、私自身がそういう舞台設定が好きなのでよく読むのですが…この本は一味違いました、勿論ジャンルが違うという事もあるのですけれど。

車などが無いと簡単に来れないような辺鄙な所に居住まいを構える喫茶店。その店主の悦子おばあちゃんと、店を訪れるお客さん達との触れ合いの物語なのですが…なんといえば良いのか…普通なんです。出て来る登場人物が本当に、いちいち普通過ぎて…この作品の登場人物達は他作品よりも、ああいるいる、こういう人いるー!と感じる事が多かったです。最近読んだ作品の中ではとても珍しい感覚でした。最近の小説は、登場人物に色をつけ過ぎる嫌いが強く、それはそれで面白いのですが「普通」では無いのですよね。

普通の人間の普通を描いている。
この点にこの作品の素晴らしさがあると思います。

店主のおばあちゃんが本当に本当に優しい方で、素敵だなぁ、こんな風に歳を取りたいなぁなんて思いながら読み進めていたのですが、章が進む毎に徐々に徐々におばあちゃんの過去だったり、こんな場所に喫茶店を構えた理由だったりが明らかになるにつれて、胸が締め付けられるような思いになっていきました。
悦子さんは、所謂おばあちゃんのテンプレートでは無いのです。相応に歳を重ね、長い人生を歩んで来た重さが確かにあるのです、読んでいてそれを感じる程に。

この作品、章毎に繋がってはいるのですが、章の間に年単位で時間が経っています。なので前章で出て来た学生客が仕事についていたりもします。この繋がりが妙で、普通の人達が頑張って生きた結果として、まだ見ぬ普通の誰かを知らない間に助ける事になっています。これが素晴らしいですね、直接的な接点が無くても、自分が頑張って生きていく事で知らない誰かの助けになってゆく、それが大樹の枝葉のように拡がってゆく………とても素敵な事だと思いました。

基本的に、喫茶店を訪れるお客さん視点で描かれているのですが、最終章は悦子さん視点で描かれています。
この最終章のラスト数頁で鳥肌が立ちました。いつも優しい、微笑みを絶やさない悦子おばあちゃんの胸の内に秘められた重たい気持ち。それが報われた瞬間はもう、涙が止まりませんでした。
音楽がテーマのこの本(章タイトルは全て曲名です)での、最終章の『選曲』に著者のセンスを感じずにはいられませんでした。

どんな年代にも手放しで勧められる素晴らしい本です。
日常に疲れた方は是非是非是非!美味しい珈琲を飲みながら、この本を読んでみてください。

2015.02.04 読了