「帰りたくない」と、彼女や女の子から言われれば胸もときめくでしょう。ああ、なんて甘酸っぱい響きの言葉なのでしょうね。
けれども、そんなのはだいたい有り得ません。ドラマや漫画の中だけの話なのです。
こう言うと、「夢が無い」と言われるかもしれません。
けれども、僕がこう思うのには理由があります。「帰りたくない、帰らない」という態度を取った人間の面倒臭さ、迷惑さを知っているからです。
セールスウーマンが我が家にやってきました。女性のセールスマンです。その女性は、太陽光発電システムの販売をしている人でした。
僕はバツイチで、二歳の息子がいます。「綺麗だなあ」とか「女性のセールスマンって初めて見たなあ」とか思いながら、女性の話を聞いていました。
太陽光発電システムのメリットを必死になって訴えてきます。ですが、バツイチで息子も居る私にそんなものを導入する余裕なんてあるはずありません。
相手の話が全て終わったところで、僕は「やっぱりお金の問題もありますし、検討だけしておきます」とやんわり断りました。
しかし、相手は食い下がりません。「そこをなんとか!」と言われてしまい、困りました。
困って言葉に詰まっていると、相手の女性は「買ってくれるまで帰りません」と言いだしたのです。
居間で話を聞いていたので、強制的に追い返すにも苦労しそうです。それに何より女性相手にあんまり手荒なことはできません。セクハラよ! と言われれば勝てませんし。
こんなに嬉しくない帰らない宣言は初めてでした。
僕は、構ったら負けだと思って女性のことを無視して夕飯を作り始めました。その間もずっとちょこんと座っています。
なかなか帰りません。夕飯が出来ても帰りません。夕飯を食べても帰りません。そうやって何時間か居座られました。
そうするとこっちも根負けしてきます。もういいや、買ってやれ。そんな気分になってきました。
結果、僕は太陽光発電システムを買うことになりました。ソーラーパネルは、今も我が家の屋根についています。
あの時払った初期費用が、あと数年は回収できそうにありません。今更になって、あの時クーリングオフしていれば……という後悔に襲われることがあります。