暗い森の入口~ヴィルギリウスとの出会い

そこに、じっと黙ったままの人の姿。
「私を助けてください!亡霊でも人間でもいいですから!」

「なぜ君は安息のない場所へ後退りする?
なぜ至福の山*1へ登らない?あの山こそ喜びの源なのに?」

「ではあなたはヴィルギリウス*2
多くの詩人達の灯明であり誇りであり、我が師ヴィルギウス。
私の後退りの原因となった獣達をご覧下さい。助けてください!」泣ながら訴える。

「君は他の道を行かねばなるまい。
再び猟犬ヴェルトロ*3が牝狼を地獄へ封じ込めるまでは。
それでは私について来るが良い。
地獄をまず案内しよう。一度死んだのに、死を願う亡者を見るだろう。
次に、心満ち足りた者がいる煉獄へ行くだろう。
更に君が天国へ登りたいと望めば、導者となる霊(ベアトリーチェ)に引き合わせて私は別れよう。
なぜなら天国の神は、掟に背いた私がその都に入るのを喜ばな
いからだ。」

ダンテはヴィルギリウスの知らない神の名(キリスト)にかけて請い願った。ヴィルギリウスは歩き始め、ダンテは後に従った。
(注:ヴィルギリウスはキリストが生まれる前に亡くなっているので、キリストを知らない)



*1至福の山=煉獄の山の山頂

*2ヴィルギリウス=ローマ最高の詩人(BC70~BC19)。
マントゥア生まれ。理性の象徴。
未完の代表作「アエネイス」は、トロイの英雄アエネイスが、
落城後各地を放浪し、
果ては冥界をも旅した後ローマ建国の祖となる物語。

*3猟犬ヴェルトロ=土地や銭を食料とせず、
知恵、愛、勇気を食料とする。
フェルトロとフェルトロの間に生まれイタリアを救う。
何を指すか定説はない。