そこは、まるで広い「手術室」のようだった。
中には、白衣を着た連中が、黙々となにやら準備をしている。我々は手錠をしたまま
その場に立ち尽くしていた。中には、体を揺らし涙を流す者をいた。
いよいよ我々の運命が動き出す。その場にいた者はすべて覚悟を決めているようだった。
白衣の男が話を始めた。
「それでは、これから皆さんを【植物人間法】に則り、植物人間化させて頂きます。
順番に処置していきますので、順番が来たら、隣の部屋に速やかに入ってください。
皆さんは植物人間として、社会の役に立ちます。なので、誇りをもって植物人間になってください。あなた方一人ひとりの命がこれからの日本を救います。
運命を受け入れてこれからは植物人間としての新しい人生を送ってください。
それでは・・最初の●●番さんどうぞ・・・」
・・・・「植物人間としての新しい人生?」・・・・
最初の男が隣の部屋に入っていった。
私は奇妙だった。私はてっきり「死ぬ」と思っていたのだが、どうやら死なないらしい。
一体どういう事なのだ?肝心な事を私は今の今まで知らなかったのである。
・・・思考回路を働かせている中にも同じ部屋にいた者たちは、一人・・また一人と
隣の部屋に吸い込まれていった。
・・・・
そして、私の番が来た。
・・・・恐る恐る扉を開けた。
中は、薄暗かった。暗かったがここが普通でない事は容易に想像できた。部屋の隅には
巨大なスタンガンを持った男が睨みを利かせていた。先に部屋に入っていった者たちの
姿は確認できなかった。薄明かりの中、医療機器のような物のセットをしている白衣の
者が、座れ、と指示をした。
鉄製の頑丈そうな椅子に恐れながら腰を下ろした。その間、部屋の隅にいる男がずっと
こちらの睨んでいた。椅子に座ると、睨みを利かせていた男が突然動き出し、椅子に
取り付けてあった器具で椅子と私の体を固定し始めた。
この瞬間私の恐怖が限界まで達した。声をあげそうになった。恐怖で気が狂いそうになりながらも私の脳は活動していた。
目が慣れ周りを見渡すと何人もの男がスタンガンを担いで、警戒していた。さらに部屋の奥の方に何やら、人間らしい形が確認できた。と同時に、男が器具で椅子と私の体を固定した。
私は覚悟し、目を瞑り、口を固く閉ざした。
男が私の体を強く押さえつけた、と思った瞬間、右腕に激痛が走った。
痛みで目を開けると、緑色の液体が注射器を通して私の体に注入されているのが見えた。
・・・・
第13回に続く。