1)中近東では、戦火が広まりつつあります。シリアやイラクでは、スンニ派過激組織「イスラム国」が勢力をつけつつあります。米国は、その「イスラム国」を危険な組織とみなし、爆撃を繰り返しています。その直接の影響で、トルコには、クルド人難民が侵入しています。国際平和で懸念されるのは、米国が戦争で勝利しても、世界中のイスラム教徒の反発と憎悪を買うことです。「イスラム国」は、米国人、英国人の一般人を公開処刑しましたので、その映像はまた、欧米人の民族的宗教的憎悪を駆り立てます。アフガニスタンも、国連の皮を被った米国の傀儡政権で、比較的富裕かつ金銭で管理しやすい都市部を中心に管理しているだけです。あそこは、外国の介入がなければ、清廉潔白で統制の取れたタリバンが政権を握るはずです。
宗教的民族的憎悪を無くすことは、<u>現実の人間と歴史を俯瞰して、</u>不可能でしょうが、それを減らす方法はあります。まず、敵視し合う人びとを互いに隔離しあう事です(ユーゴの内戦から、多くの独立国の出現)。もともと、価値観自体がずれている人びとですから、同じ所に一緒にしてはいけないのです。例えば、学校や企業などで、著しく反目している人を一緒に仕事させ住まわせることが大変危険な事と同じであり、互いに接する機会を無くすことが、一番の有効な策です。
2)
しかし、経済のグローバル化、企業の多国籍化、情報化サービス化で、先進国や先進国化しつつある国々で、貧富の差がひろまり、搾取する者が膨大な富を貯めこみ、搾取される者の生活が再生産されにくくなっています。より、具体的には貧困率が高くなり、家族を持てない人びとの比率が高くなっています。いわゆる実質的に「国民から疎外」された人びとです。
第二次大戦が終結し、既に69年になります。先進国間で、これほど平和が続いたのは、産業革命以来、全くありえなかった事態です。しかし、この国際秩序も、第一次世界大戦後のベルサイユ体制と同じく、あきらかに失敗しつつあります。貧富の差を解消する強いイデオロギーを持つ思想や社会集団は、グローバル資本主義や資本家に対抗できないのです。
大部分の先進国と新興国で、貧富の差を実効的に解消する政権で占められるのは、空想です。仮に、社民党が政権を取り、福祉の充実、貧富の差の解消を目指すとします。しかし、税金を逃れようとし、グローバル企業は、その国から出て行こうとします。
中央政府の金利の引き下げと企業減税では、景気の回復は根本的に無理です。人口減少の続く先進国では、人口要因ではマイナスで、先進国だけでは企業は淘汰されるのを見越しています。消費割合の高い低所得者層の賃金の上昇は見込めないので、景気上昇は、特にこの層では実感できないのです。
先進国は、これから金融バブルと恐慌を何度も繰り返し、第一次・第二次大戦前の国民感情(強い不安やイライラ)が必然的に生じる事になります。リーマンショックでもまだ社会体制は変革出来ていないのですから、今後はより強いショックが出てこない限り、現在の体制が継続し、強化されるのです。
3)
最後に、米国の経済力が低下し、国際社会が多極化しつつある事が国際平和の直面する問題です。
現在でも米国は、軍事力では断トツの一位です。欧州と日本に加え、インドを加えて自国の影響力を維持しようとするに違いありません。これから米国に対抗する国は、中国です。
ロシアが米国寄りか中国寄りになるかは、今後の国際秩序のゆくえ、それどころか人類の歴史に危機をもたらすかもしれません。なぜなら、ロシアは、米国以外に大量の核兵器を持つ国だからです。
それから、イスラム教徒、イスラム教国家、発展しつつあるアフリカ諸国も視野に入れるべきです。
10年後20年後に大戦が起こらなければ、その時は今より遙かにグローバル化が進んでいると思います。<u>それゆえ、景気の波も世界的になり、リーマンショック以上の世界大不況が起こりやすくなります。</u>先進国では、企業減税に付随する財政難も加わり、不況時に金融政策しか取れなくなります。
現在の欧州、アメリカ、日本の小春日和を思わせる景気回復は、やがて見通しのつきにくい長期の深刻な不況にとって代わられます。それを何度も繰り返すのです。
そうなれば、為政者の中に、国民の経済的政治的不満(特に貧困層)を国外に逸らすため、特定の外国や民族への敵対感情を煽る政治家が現れます。国内外における小規模な紛争があちこちで増加します。やがて、一般国民が、だんだん戦争熱に駆られるようになります。(これが、20世紀の2回の世界大戦の「熱狂の火薬」=大戦の必要条件となったのです)
国際間の利害関係が先鋭化し、各国は核保有国を中心に同盟関係を結び、敵と味方が明確になれば、世界は第三次世界大戦に向けて引き返すことのない道を、つるべ落としのように転落してゆく事が予想されます。