「イルカせんせ~!!」

少年期の2年半の月日は長いものだと、自分の目の高さまで背が伸び成長したナルトを見て、つくづく感じた。

かがんで金色の柔らかい髪をなぜてやったのは、ほんの数年前だったのに。

「ナルト!大きくなったなぁ」

「へへへっ」

里の三忍と称された伝説の忍と修行の旅に出たのが、ついこの間のことのようだ。

持ち前の元気と真っ直ぐで力強い瞳は変わっていないが、その表情には大人へと近づいている落ちつきが見える。

「イルカ先生は変わらないってばよ!」

「お前、それは俺をバカにしているのか」

首に腕をかけながら締め上げる。ナルトはあわてて叫んだ。

「くっ、苦しいって。俺を殺すつもりってばよ」

「ハハハ、これくらいで音を上げていたら火影どころか、中忍にもなれないぞ」

ナルトが素早く何やら印を結ぶと共に、ボンと煙に姿が消え、代わりに俺の腕の中には全裸の若い金髪女がもがいていた。

「イヤ~ン、イルカ先生ってば、エッチ……!」

「えっ!?」

イルカはあわてて手を離した。

途端に煙が立ち、金髪女がナルトに変化した。

ナルトはお腹を抱えて笑った。

「ガハハっ!ホンっと、イルカ先生は変わらないなぁ。」

「ナルト~~っ!!」

イルカはナルトの頭上に拳骨をひとつ落とした。

「イテっ」

「相変わらずしょうもない術を使いやがって。一体、自来也様から何を教わってきたんだ!」

イルカはハァ~とひとつ溜息を吐いた。ナルトは不満気に頬を膨らませた。

「え~新エロ戦術気に入らなかったってばよ!?たとえば胸のハリ具合とか、腰のくびれとか、もっとリアルに変化できるようになったってのに。センセー、触ってもわからなかったのかよ?」

「なっ!!人聞きの悪いことを言うな、おれは触っていないぞ、断じて!」

イルカは真っ赤になって必死に否定した。

「……センセー、そんなで彼女できんのかな?俺、心配……」

「余計なお世話だ!!ったく、自来也様は何を吹き込んだんだ?しょうがない奴だなぁ。

まぁ、ゆっくり今夜にでも話を聞こう。一楽でどうだ?」

「さんせー!!」

ナルトは行く前と全く変わらない太陽のような笑い顔を見せて、親指を立てた。

「イルカ先生。ねえ、お願いがあるんですけど」


うっそりと目を細めながら囁いたカカシの額にはまだ汗が滴り、銀色の髪が張り付いていた。

細められた右眼にも深い濃紺の潤みが残っているのが、ひどく色っぽい。

額に張り付いた銀髪をかきあげる細く長い指の動きまで、イルカの官能をそそる。

わかっている。

何もかもがカカシの手管だと。

派手な噂そのままの、褒められたものではない多くの経験から培われたものだと。

わかっていながら、カカシから目を離せない自分自身に腸が煮えくりかえる。

目を奪われたり苛立ちを感じたり。それはイルカひとりで、カカシは涼しげな薄笑いを浮かべ、極めて平然とイルカを観察している。

その余裕が一層腹立たしい。

イルカはついと目をそらし、ぶっきらぼうに言い放った。

「急にあらたまって何ですか。あなたの言う願い事なんて、きっとろくなものではないでしょう」



「アナタのオレに、そんな冷たいこと言わないで。ちゃんと聞いてよ」



カカシは眉を寄せて苦笑しながらコンとイルカの額に自分の額を軽くぶつけ、耳に口を寄せて囁いた。

耳元に低い声で囁く男の生暖かい息が項をなでる。



この男は、それが他者に対してどれほどの魅力になっているのか、ちゃんと知っていながらやっている。いわゆる確信犯てヤツだ。


わかっているのに、俺は。

項が熱い。そこだけ熱を孕んでいるかのように。


「そろそろ、こうしていられなくなるような気がします」


平坦な声が鼓膜を震わせる。俺の髪をゆっくり梳く白い手はひろく滑らかで美しい。

一瞬の間に人の命を奪える手だとは到底見えないほど。


「砂での不穏な動き、アナタも知ってますよね」

「ええ……」


カカシの言葉にうなづきながら、イルカはアカデミーでの昼間のナルトとの再会を思い出した。