写真
晩御飯を食べて少し家の片付けをした
棚の上にあった薄い木の箱
たっぷりと埃をかぶってた
何通かの手紙と何枚かの写真
母の残した物
もう3回忌になるな
小さな俺と一緒に海辺でピース
誰が撮ったんやろう
どこの海やろう
思い出せへん
借金にギャンブル
浪費癖のすごい女やった
後先考えずに生活してたな
全然知らん男連れて授業参観に来よったし
友達にも説明しようがなかった
あの男に撮ってもろたんかもな
俺が働き出す頃にはギャンブル覚えて
昼間はパチンコ屋行って夜は雀荘でマージャンして
週末には馬券に買うて
毎日怒鳴りあいして
ほんま早よ死んで欲しかった
足かせみたいな女やった
雀荘から電話受けて
お母さん倒れたって言われて
入院させて
そっからは早かったな
あっと言う間に死んだもんな
ほとんど話できひんかった
死ぬ一週間前くらいに
あんた言うたよな
私が死んだらあんたひとりぼっちやなって
あん時のあんたの涙
思い出した
早よ死んで欲しいなんて思って
ゴメンな
どっかの海で撮った写真のあんたは
優しい笑顔で息子の肩を抱いて
ええお母さんに写ってるからな
2月 久々に会う
寝る前に考えた
刺激のない毎日だな・・って
朝起きて思った
毎日刺激的なのも嫌だな・・って
まぁ そんな事思っていてもしょうがないので・・・いつもより少し早く家を出た
1時間くらい早い通勤路は、少し人も少なくって歩きやすい
ホームに降りる足もちょっとだけ軽いかも
電車の座席も空いてる
でも立ったまま・・・いつものドア付近・・・・
流れる風景にも目をやる余裕がある
後から不意に肩を叩かれた
ポンポンと軽く2回
振り返ったら・・・・
「久しぶり~」って笑顔で
3年・・・4年ぶりかな
以前付き合っていた彼女が立ってた
「・・・よっ!」って・・・・ちょっと間があいた
たわいもない話 「仕事は?」とか「痩せたね」とか
聞く方も答える方も 視線は窓の外
何が原因で別れたんだろう
この時一番聞きたかった事
ドアが空いて彼女が降りてドアが閉まって彼女が手を振って
ドアが閉まって電車が動き始めてもしばらく彼女が手を振ってくれて
小さくなっていく彼女の後姿
僕の記憶の中の彼女は出不精で少し気の強い女
イベント事は嫌い・・・・
3月生まれの彼女
明日ももう一度、1時間早い電車に乗ってみようか・・・
再会が僕の中で刺激へと変わったんだから
そうは思ったけど・・・
やっぱりやめておこう
3月になったらまた1時間早い電車ののってみよう