君の目的ははっきりしている。
その目的を達するために、君は急角度で話題を変えてくる。
回答を知っているいまだから、
このとき並べ立てた君の発言のすべてが嘘だと分かる。
当時の俺も世間知らずのお子ちゃまではないので
君の説明を額面通りに受け取ってはいない。
だが、何の証拠も確信もないから
「君は嘘を言っている」
と決めつけることもできない。
となれば、君の嘘に乗りつつ、
君の言葉を
「やさしさ」でコーティングした正論で
片端から撃墜していく。
悪いが頭の回転はこちらの方が早い。
しかも君はどうしても明かせない秘密を回避して
言葉を選ぶしかないから、
本能的にブーストして研ぎ澄まされた俺の敵ではない。
どんな言葉をもってしても俺を説き伏せることはできないし、
「やさしさ」であふれる俺の言葉に、
君はどんなに理屈をこねても目的を達することができない。
この夜、君は一夜でキメることができず、
俺に「異常事態」を察知され、考える時間を与えてしまった。
だが、君の正体を垣間見てしまった俺はショックを受ける。
会話は終わったのにブーストは切れず、
脳圧があがるほどに思考は回り続けた。
ひどい夏の始まり。
この夏から1年という時間をかけて俺の心は形を失い、
それまでとはまったく違うものに作り替えられていく。