小学生のころからのちょっと悪い友達が高校に入ってから原付を乗り回すようになり、ソイツがソレに乗ってうちにやってきたのだった
僕はそれまでバイクなんてものに特に興味がなく、友達がバイクに乗っていることがただ凄いなとしか思わなかった
バイクは僕の遠くにある存在だった
しかし、その悪友は僕にこんなことを言い放ったのだった
「ちょっと乗ってみろよ」
免許のない人間に何を言っているんだろうと思ったし、興奮状態の馬のように暴走したらどうしようと不安に思ったので「え、いいよぉ~」とヘタレのように断った
だがしかしソイツはなぜか僕に乗ってもらいたいらしく強引に勧められ(そういえば初めてタバコを吸ったのもコイツから無理矢理吸わされたのだった)家の前だけという条件で僕は原付を初めて運転した
スロットルを少しずつ少しずつ開け、ほんの少し車体が前へ進む
そのまま足をよたよた地面につけながら3km/hくらいの速度でノロノロと5mくらい進む
ゆっくりゆっくりUターンして戻る
友達の立ってる場所についてエンジンを切ると「ふぅ・・・」と息を吐いて「楽しかったありがとう」と言ってバイクを返した
2stバイクの独特な臭いが辺りに立ち込めている...
たしかに楽しかった
その一月くらい後だろうか
幼馴染の別の友達がメールでこんなことを言い出した
「原付の免許取らね?」
まじかと思ったけど、先日のアイツのアレに乗らせてもらったときのことを何気に気にしていた僕は
「OK!ブラザー!」と返事をし、
忘れもしない6月9日(ロックの日)その友達と一緒に府中の試験場まで免許を取りに行った
この日僕は初めて学校をサボった
朝起きて、ご飯を食べて、制服に着替えるといつものように家を出た
見つからないようにこっそりと自転車を押しながら(僕は電車通学だった)幼馴染の家に向かった
心臓がドキドキしたのを鮮明に覚えている
ソイツと待ち合わせ、学校に電話して欠席の旨を伝える(この時もえらく緊張した)
無断欠席をすると停学になるという仁義なきシステムがあったから
そしてチャリで府中の試験場へと向かう
府中まではけっこうな距離があったけど、友達と一緒ならそう遠くは感じない
そして道路交通法なんて全く存じ上げない我々は、まず裏校と呼ばれる試験場でよく出る問題を教えてくれる怪しげな施設に行って道路標識だとか交通ルールを学んだ
そしていよいよ試験場へ乗り込みチャチャっと30分の筆記試験をこなし、地下の食堂でクリームソーダをすすった
発表は午後だった
どっちかが落ちてたらどうしようとか考えながら発表を待った
そして発表、ドン!
2人とも合格だった
こうして晴れてアテクシは公道デビューしたのだった
その後間も無く親に免許を取ったことを申告し、早速バイクを買おうとした
親はなんか色々言っていた気もするけど覚えていない
僕の頭の中はもうバイクでいっぱいだった
この後、期末試験の微分積分学で見るにたえない点数を叩き出したのは言うまでもない
そうしてなんやかんやでスクーターを手に入れた僕は毎日狂ったように乗り回したのであった
今まで行ったことのない道をぐんぐん進める
行き止まりならすぐに引き返せる
それまでの主な移動手段は自転車だったから行動範囲がぐっと広がった
家と遠く離れた学校はこんな道で繋がっていたのかとか
この道を抜けるとここへ繋がっていたのかとか
車道から見える景色はとても刺激的だった
夜走る道はそれはそれは大冒険であった
山道へ分入れば、頼りはヘッドライトの光だけ
日常に飽き飽きしていた中二病真っ盛りの僕の目はもうギラギラと輝いていた