偽造の看護師免許と向き合った決断

看護師になることが子どもの頃からの夢だった私は、受験に3度失敗した後、絶望的な気持ちでいた。経済的に余裕がなく、もう受験を続けられない状況の中、ある日インターネットで「看護師免許証偽造発行」という広告を見つけた。迷いながらも連絡を取ると、驚くほど本物そっくりの免許証が届いた。

最初は罪悪感に苛まれたものの、地方の小さなクリニックに就職すると、そこでは思いのほか温かく迎えられた。毎日必死に仕事を覚え、患者さんから感謝される喜びを知るうちに、いつの間にか偽造のことは記憶の隅に追いやられていった。

しかし3年後、クリニックが電子カルテシステムを導入したことで、資格証明の厳密な確認が行われることになった。ある朝、院長から「免許証の原本をスキャンしてデータ化する」と言われた瞬間、私は冷や汗が止まらなくなった。

その夜、自宅で偽造免許証をじっと見つめながら葛藤した。これまで築いてきた患者さんとの信頼、院長や同僚からの評価——すべてが偽りの上に成り立っていたことを痛感した。翌日、私は院長室を訪れ、震える声で全てを打ち明けた。

「ずっと後ろめたい気持ちでいました。でも、この仕事が本当に好きで…」

驚いたことに、院長は静かにこう言った。「あなたのこれまでの努力と患者想いの姿勢は本物でした。過ちは認めなければなりませんが、看護師としての素質は確かにあります」

私は自ら偽造免許証を破棄し、看護師としての仕事を辞めることを決意した。その後、院長の励ましもあり、正式な看護学校に通い直す道を選んだ。今では当時の過ちを隠すことなく、むしろそれをバネにして勉強に励んでいる。

あの時の選択は間違っていましたが、その経験を通して「誠実であることの大切さ」と「看護師という職業の重み」を深く学びました。いつか本当の看護師として、あのクリニックの方々に再会できる日を目指して、今日も前を向いて歩んでいます。