「人の夢と書いて
 儚い、…か。
 なんだか寂しいものよね。」
ハルカは
そうつぶやいた。
三者面談を控え、
進路に悩む彼女ならではのつぶやきだった。

彼女が今読んでいる本は
世の中のすべての漢字が載っている
「The 漢字」
という本だった。
これを読んでくるのが宿題だった。



同時刻、
マサルも
同じ本の別のところをみていた。
そうして
「糞って、米が異なるって書くけど
 うまいこと考えたもんだねぇ。
 まてよ?
 じゃあ、もしも、基本パン食の人が考えてたら、
 パンが異なる、って書いたのかねぇ?」
などと思った。

うんこちんちんで喜ぶ癖だけは
幼稚園時代から
まるで変わっていない
マサルだった。



一方、
マイコは
同じ本のタイトルだけをみて
「これって、某百円ショップみたいだよね」
と感じた。



また、
カンフー歴五年のヒロシは、
本をほっぽり出して
テレビを見ていた。
ある邦人登山家が
高峰登山に成功した
というニュースを見たとき
「登ったとき、この人ときたら
 山下さんなのに、山の上にいたのか。」
とどうでもいいことに気づいて
笑いがこみ上げてきた。

しかし、ヒロシは知らない。
明日、「功夫教室」と書かれたチラシを見て
カンフーを五年もやってるくせに
“いさお”
と読んで大恥をかくということを。





いつだって勉強は大事だよね、
という話。