内容を簡単に要約します。

 

 ジャニー喜多川氏、は主に自分のジャニーズ事務所に所属する12歳~13歳くらいの男の子を自宅にレッスンなどと称して呼び、泊まらせた。

 その時、大抵は以下のようなパターンで性的な虐待行為を繰り返した。まず、お風呂に一緒に入ろうと誘い、体を触ったりして性的な行為を行った。夜になると男の子たちの寝室に忍び込み、さらなる性的な行為を朝まで行った。

 被害を受けた男の子たちは全く無防備なまま、恐怖の中でただ我慢してその行為に耐えるしかなかった。そうした行為は一人につき、10回から20回に及んだ。

 そうした行為は被害者である彼らの多くに精神的な傷を負わせた。30歳、40歳になった被害者たちは今でもそのことを

語るとき、涙を流したり、体を震わせたりしながら、苦悶の表情の中で語るのだ。

 しかし、そうした性犯罪が長きにわたって行われていたにもかかわらず、そのジャニー喜多川氏の犯罪は表面化しなかった。うわさは常にあり、被害者も常にいたのだが、だれもが口を閉ざし続けたのであった。

 

 そして、番組が進むにつれ、このジャニー喜多川氏の性犯罪をめぐるアザー氏の取材は思わぬ方向に傾いていく。

 

 インタビューに応じた中の一人は、そうした性的虐待を受けた経験を持ちながら、今でもジャニー喜多川に好意を持っているという。また、かつてジャニーズ事務所に所属していたある人はそんな行為を繰り返したジャニー喜多川氏はむしろ、多くの少年たちから愛されていたと証言する。

 

 いったいこれはどういうことなのか。性犯罪の対象となった幼い少年たちがその被害を訴えることができないとすれば、それは大変悲しい事実ではないか。BBCのアザー氏は、ジャニー喜多川によって、少年たちが巧妙に心理を操作されていたと推測する。多くの少年たちはグルーミングによってジャニー喜多川氏の犯罪を容認させられていたのではないか。それはほとんど疑いようのない事実とアザー氏には思われた。

 

 一方、ジャニー喜多川氏が死去した今、一般の人々はこのことを追求することにあまり乗り気ではないようだ。むしろジャニー喜多川氏の功績に目を向けようとしている。

 

 また、かつてジャニーズ事務所に所属していたある男性は、有名になるために必要なら、そうしたことを受け入れる覚悟はあったと振り返る。それは彼らの両親も同じ思いではないかとも語った。

 

 最後にアザー氏は、ジャニーズ事務所に突撃取材を行う。何としても直接取材をしないと問題の核心にはたどり着けないと決死の覚悟で臨んだが、ジャニーズ事務所は全くとりつくしまがない。懸命に食い下がるが、結局門前払いとなり、ジャニーズ事務所を後にする。番組は、アザー氏のフラストレーションと怒りの表情で幕を閉じる。

 

 日本において甚大な影響力をもつトップ芸能事務所のゴッドファーザージャニー喜多川。彼の長期にわたる被害者を多数出した性犯罪になぜ人々は口を閉ざすのか。なぜジャニーズ事務所はこの事実を無視して平然としているのか。そしてなぜ日本人の多くがこのジャニー喜多川氏の性犯罪に寛容なのか。これは全くの謎である。だが、多くの証言者が言及していたのは、この問題の根本的な部分に、日本社会の在り方が関係しているのではないかということだった。