某男はひきこもりが続いていた。
かれは病院でも、被害妄想と思考障害が強いと
毎年診断書に書かれていた。
かれは、数十年前から、人々に「考えるな・・感じろ!!」
と言われていた。
かれは亡父にも、「お前の話は、推測だけで判断して
もの言ってるんじゃないのか・・ あのなあ、物ごとは事実を
土台にして諭じなかったら何にもならないんだぞ!!」と
言われていた。
かれは、人と会っても相変わらず理屈屁理屈しか、もう
いわなかった。かれは、なじみのひとにも「あんたの話は、
例えば、あなたはリンゴとミカンどちらが好きですか?
と訪ねられたら、そういえばバナナもおいしいですね、と
いうようなものだ」と言われた。
かれは、したがって驚くなかれ未だ独り身である。
かれは、つねに「おれは、熟年の甘ったれじゃねえぞ・・
おれはいままで、甘い生き方した覚え全然ねえぞ!!・・」
と頭の中でお決まりの自問自答をくりかえしていた。
かれの姉は、「まあ、どうせ私達、あと18年も生きられりゃ
いい方だよ」と言っていた。
かれは、とにかく落ち付いていないのだ。
かれは、「まあ、どうせ、おれは特に大きな良いことも
わるいこともできねえしな」と、言ってるそばから、また
理屈屁理屈言っている
かれは、とにかく「主よ、世尊よ・・迷えるわたしを救い
たまえ」と座禅を組んでいる・・