痔の原因・種類・症状・治療・予防

■痔の原因

便秘がち、排便の際に強くいきむ、長時間座りっぱなしなど肛門に負担がかかることで痔が発生するといわれています。
肛門に負担がかかると、内肛門括約筋と肛門の粘膜の間にある組織(毛細血管などが集中するクッション部分)がうっ血して血行障害が起こり、その部分が痔核(いぼ痔)となってしまうことがあります。また、便秘がちな方は、排便時に強く、長くいきむことでうっ血を起こしやすいだけでなく、水分が吸収されて硬くなってしまった便が肛門を傷つけ、裂肛(切れ痔)を引き起こすこともあります。
肛門に負担をかける場面は、排便時のいきみや長時間座りっぱなしでいる時だけではありません。例えばゴルフなどスポーツ時のいきみ、刺激物やアルコールの過剰摂取などによる下痢、冷えなども肛門に負担をかけてしまうと考えられています。

■痔の種類

痔は、大きく①「痔核(いぼ痔)」、②「裂肛(きれ痔)」、③「痔ろう(あな痔)」の3種類に分けられます。
いぼ痔が男女ともに大半を占め、痔ろうは手術が必要になりますが

、痔全体の中では少ない傾向にあります。



■痔の症状

①いぼ痔
いぼ痔(痔核)は、その名のとおり、肛門にいぼ状のはれができる状態です。
歯状線をはさんで肛門の内側にできるものを内痔核(ないじかく)、外側にできるものを外痔核(がいじかく)と呼びます。

②切れ痔
きれ痔(裂肛)は、肛門の出口付近の皮膚(歯状線の下にある肛門上皮)が切れた状態で、「さけ痔」とも呼ばれます。便秘による硬い便の通過や、下痢便の強い勢いなどで、肛門の出口付近が切れ、直腸肛門部の血液循環が悪くなることが原因です。歯状線より下にある肛門上皮は、肛門内側の粘膜と違い、知覚神経(痛みを感じる神経)が通っているため、きれ痔には、強い痛みが伴います。

③痔ろう
「痔ろう」は、直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐトンネルができる痔のことです。肛門周囲に膿がたまる「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)」が進み、慢性化すると痔ろうになります。

■痔の治療

①いぼ痔
症状があっても普段の生活に支障のない場合は、保存的治療を選択します。
日常生活が制限される場合には手術的な治療法(手術、硬化療法など)を検討します。
排便時に肛門外に脱出する痔核が自然に戻らず指で押し戻す必要がある場合、指で戻してもすぐに脱出する場合は、根治するためには手術的な治療が必要です。
ただし良性疾患のため、治療法の説明を行ったうえで最終的には患者様の希望により手術を行うか決めます。
手術的な治療法の代表的なものは結紮(けっさつ)切除術です。さまざまなタイプの痔核に対応できます。近年では内痔核に対する治療法として、ALTA療法(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸を用いた硬化療法)が注目され、ALTA療法単独での治療や、結紮切除術との併用が行われています。ALTA療法は術後の痛みが軽く、出血が少ないので入院期間の短縮も期待できます。

②きれ痔
最初に便秘や下痢を改善する排便コントロールを行います。また外用薬(注入用軟膏)や、局所の血流を改善する内服薬を投与します
改善が見られない場合や、慢性裂肛になって肛門ポリープや見張りいぼ、肛門狭窄などを起こしてきた場合には手術を考えます。
代表的な術式は、側方皮下内括約筋切開術(LSIS)です。LSISは感覚の手術であり、切開する程度が難しい治療法です。切開を受けてちょうどよいと思っても3か月後や数年後に肛門が緩く感じることがあるので、筋肉の切開を少なめにすることが大切です。
また指で直接肛門部を押し広げる手法(用手肛門拡張術)もありますが、LSISよりもさらに術者の感覚で決まる治療であり、強く拡げてしまうと肛門が緩くなることも報告されており、この治療法を行う医師は減少しています。
硬くなった慢性裂肛のために肛門狭窄を生じた場合には、慢性裂肛とその周囲の瘢痕(はんこん)(硬く縮んだ組織)を切除して、肛門外の皮膚弁を移動して切除した創を覆うSSG(Sliding skin Graft:血流のある外側の皮膚を中にずらす方法)が行われます。
LSISとSSGは優れた治療法ですが、治療成績や後障害の評価にはいろいろな意見があります。
手術を受けて改善することよりも、裂肛は早期に保存的な治療を行い、慢性化させないことが大切です。

③痔ろう
肛門周囲膿瘍を切開排膿するだけで、痔瘻根治手術をせずに30~50%は治癒すると報告されています。
しかし、痔瘻の状態となり排膿を繰り返す場合は手術治療が検討されます。
肛門内と外が管でつながる痔瘻には、方向や深さなどによりさまざまなタイプがあります。
また、治療成績を重視する方法や括約筋の機能を重視する方法など、手術術式も数種類あります。
代表的な手術としては、以下が挙げられます。

瘻管開放術
瘻管切除術
痔瘻結紮療法(シートン法)
括約筋温存手術

■痔の予防
痔疾患を悪化させないための生活習慣として、排便習慣の改善が第一ですが、長距離運転や立ち仕事、デスクワークで長時間座り続けるなど肛門に負担をかける姿勢を避けることや、

便通を整えること、肛門環境に留意するなども大切です。

 


 

 

  

 

 

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