30代の始めの頃の大阪で勤務していた頃の話しです。
大阪ミナミの行きつけのBARで、
たまたま一人で飲んでいた日のこと。
夜中二時頃、そのBARのマスターが、
マスター:「久しぶりに飯でもいこか?」
私:「いきましょか!」
既にそのとき、私は当然客との会食後であるから、
ハラは減っていなかったが、
「きっと、スシやなあ」と踏んで、その話しにノッテいった。
それが、その後に繋がる「過去最大の汚点」のスタートであった。
その後、BARにいた常連の女の子も誘い、
予想通り、寿司屋へGO。
寿司屋でも快調な会話と日本酒は進んでいった。
当然、私は「一丁上がり」の状態であった。
私の頭の中の時間割では、
この店で、最後の力を発揮して、タクシーで帰ろうと思っていた。
この時間割は、大きく狂っていった。
マスター:「カラオケでもいこか?」
私:「???」
時間は、夜中3時を大きく回っていた。
私の勝手な時間割設定は、ほとんど余力を残していなかった。
「ペース配分間違えた!」
ラストスパートをかける時間帯を大きく間違えた私は、
寿司屋を出た地点では、
「もう、ヘロヘロ」
無理やりカラオケ屋に連れて行かれた私は、
辛うじて、「やしきたかじん」を1曲歌い、
よくいる酔っ払いのように、人の歌に手拍子しながら、
白目をむいて、無理やり笑顔を作りながら、そのソファで睡眠。
マスターに、
「帰ろか、疲れてるみたいやから。」
普通サラリーマンが、夜中4時で疲れていないはずがありません。
マスターと常連の女性と別れ、
よろよろ、千鳥足で、ひとり、道頓堀を歩いていきました。
もう少しで、「くいだおれ」や。
それを越えたら、「戎橋(ひっかけ橋)」や。
それを越えたら、タクシー乗り場や。
うわごとのように、つぶやきながら、
「あ~、しんどい、あ~、しんどい」と
大声の独り言。
あっちふらふら、こっちふらふら。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
記憶が途切れていきます。
シャッターの閉まった店の前に、ダウン。
タクシー乗り場まであと200m。
睡魔と酔いに負けました。
スヤスヤ。
スヤスヤ。
ゴソゴソ。
ゴソゴソ。
ゴソゴソっ何??
目が開いた。
「おまえ、誰や?」
「ここどこ?」
目の前に、マスクをした知らん人。
酔いと寝ぼけで、なにがなんだかわからない。
ひとつだけ、わかりました。
そいつが、私の上着の内ポケットをまさぐっています。
「やめてくれや、ゆっくり寝てるのに。」
違う違う、
「おまえ、なにしてんねん!」
きっと、そんなことを言ったと思う。
まだ寝ぼけてます。
私が目覚めたのに気づいても、まだまさぐっています。
私は、身体を起こしました。
「ええ加減にせえ!」
ふらふらの私は、立ち上がり、
そいつの腕を振り払いました。
マスクをしたそいつは、こちらを見ながら走りだしました。
颯爽と追いかけようとした私は、
足が動きません。
当たり前です。
ミスミス逃がしました。
もとい、逃げられました。
「くそ~」
金品は、なにも盗まれ無かったのが、幸いでした。
すぐ近くに交番あるのに、チャレンジャーな盗人でした。
ふらふらの私は、カバンを持って立ち上がり、
タクシー乗り場に向かい、家に帰りました。
家に着いたら、朝刊がきておりました。
すずめも鳴いておりました。
おじいさんが、ウォーキングしてました。
そんな夢のような一夜を過ごした私は、
その日、風邪を引いて会社を休みましたとさ。
それ以来、道路では寝ておりません。