恋に恋する②

🌸

黄色の声援に見向きもせず試合を後にする彼と、しっかりと観客に一礼するペアの子（Rくんとしよう）。

このぺアは、ずばぬけた強さだった。

きくところによると、2人は同中でずっとペアを組んでいたらしい。

あの息のかけあいをみると納得のものだった。

そしてなにより、このルックス。

（私はどちらかというと犬顔が好みのためなんとも思わなかったが、、）

Rくんは186㎝、濃いめの顔立ちにくりっとした目、よく笑う太陽のような子だ。

さわやかを人間にしたらこんな子なんだろうと思う。

なにより愛嬌と、礼儀、そして少しモテることも自負しているが嫌味がない。

Ｒくんがもつ天性の人柄だ。
 

そして彼。

185㎝、きれいな骨格に端正な顔立ち、眼の色素がうすく、すこしにらみ顔。

筋肉はついているが、ごつすぎず、ひきしまった体型である。

だが親しい人以外は受け付けない性格で、愛嬌は全くない。

これは、、、たしかに黄色の声援だ。

こんな二人と同チームであることを周囲の女子からはうらやましがられた。

そんなものだろうか。たかがチームが一緒でなにがうれしいのか。

その頃の私には恋とは無縁で、はるかかけはなれたものだった。

2日目の練習日。

男女混同ラリーの際、私ははげしく転げてしまった。

それはもうはげしく。

出血を止めるためにコートをはなれ、水道の蛇口をひねった。

痛い。。。

滅多にこけないが、男子のボールはやはり重かった。

身体がもってかれたのを感じた。まだまだだな、自分は。。

なんてことを思いふけっていると、首元にひんやりするものを感じた。

思わず声がでた。振り返ると、そう彼がいた。

「ごめん、力いれすぎたよな。」

そう言って、水を差しだしてくれた。

たしかにあなたとのラリーでこけたけど、そんなことをいわれると少し悔しい。。

「こっちこそ打ち返せなくてごめん。

　大丈夫やけ、つぎはちゃーんと返すから、みとって。」

こんな強い人とテニスができる機会はもうないと思うと、やる気が満ちてきた。

彼はすこし申し訳なさそうな顔をしながら、「おう。」と一言返してくれた。

思えば、初めての会話はこんなひょんなことだった。

水を差しだす彼の顔は太陽の光と重なって、まぶしく、汗がきらめいて、きれいだった。

いまおもうと、これが「恋」のはじまりだったのかもしれない。