『 細 い 小 枝 ( 続 続 ・ 石 の 花 ) 』



前回までのお話し  「細い小枝 1」  「細い小枝 2」  「細い小枝 3」
「細い小枝 4」  「細い小枝 5」  「細い小枝 6」  「細い小枝 7」





『今すぐ、ここにその職人を呼べ!

 職人を今すぐ、引っ立てて来い!』



旦那は怒鳴りつけました。



 こうしてミーチャは、旦那の元へと引っ立てられてきました。

すると旦那は、ミーチャの事を思い出してしまったのです。



(こりゃあ、いつかの・・・あの長靴のガキじゃないか!)



『どうして、おまえ、

 わしの娘に、鉱滓(かなくそ)なんぞを贈ったんだ!』



 旦那は、ステッキを握りしめると、

ミーチャを殴り出したのでした。



 ミーチャは、どうして殴られるのか、

最初はわかりませんでした。

しかし、管理人の手下どもが、

大切に、仕舞っておいた小枝を持って行った事を思い出し、



『あなたの管理人に、

 あの小枝は、無理やり奪い取られたのです。

 だからどうして鉱滓(かなくそ)を贈ったかなんてことは、

 あなたの管理人に、理由を聞いてくださいな!』



そう言いかえしたのですが、

怒り狂っている旦那は、何を言われても聞く耳はもちません。

こうなっては、もうどうしようもないのです。

そして旦那は、しゃがれた声で叫び続けています。



『こいつ! 思い知らせてやる!』



 そして机の上にあった小枝を掴み上げると、

床に叩きつけ、足で踏みつぶしました。

あっという間に、小枝は粉々に壊れてしまいました。



 それを見たミーチャは、怒りに震えだしました。

そしてミーチャは、旦那のステッキの先を掴むと、

握りの所で、旦那の頭を殴りつけたのです。

旦那は驚き、床に尻もちをつくと、

目を回してしまいました。



 部屋の中には、管理人もいましたし、

召使いも何人もいたのですが、

皆、呆気に取られて、ただ茫然と立ち尽くすばかりでした。

やがてミーチャは出て行きました。

それきり、姿を隠してしまい、

とうとう見つける事が出来なくなってしまったのです。

ですが、ミーチャの細工の作品は、

その後も、見かけることは出来ました。

目の肥えた人々には、それがミーチャの作だと、

直ぐに解ったのです。



 それからもう一つ、こんな事もありました。

ミーチャの窓の前で、白い歯を見せて笑っていたあの娘も、

村から忽然と姿を消してしまい、

それきり、何の音沙汰も無かったのです。



 管理人たちは、この娘をそれからも長いこと探しました。

ミーチャを探すより、この娘を探した方が早いと、

考えての事だったのでしょう。

女と云うものは、住み慣れた家から、そう遠くへは、

行きたがらないものだからです。

娘の両親は、管理人



『やい! お前の娘は一体どこに居るんだ!

 早く、言いやがれ!』



と、毎日の様に責め続けられました。



 しかしどうにも、誰にもその行方は分からないのです。



 ダニーロと息子たちも、もちろん、

ミーチャの行方の事で、責め立てられました。

しかし、高い高い年貢を納め続けている家族なので、

直ぐにそれを見逃されることになったのです。



 あの旦那はと言うと、その後しばらくは、

はあはあと、臭い息で荒く呼吸をしてはいましたが、

直に自分の脂肪に押しつぶされて、

あの世に、旅立ってしまったのです。



 ミーチャと娘の行方は、

今も尚、解らぬままという事です。



細い小枝」 おしまい。



石の花シリーズ」も、今日でおしまいっ。




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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