『 細 い 小 枝 ( 続 続 ・ 石 の 花 ) 』
ダニーロとカーチャの間には、子供が沢山生まれました。
8人もです。
しかも皆、男のでした。
カーチャは、1人位女の子が欲しかったと、
良く言っていましたが、
それを聞くたびにダニーロは、笑ってこう答えるのです。
『どうやらそれが、俺たちの定めなのさ。』
子供たちは、元気いっぱいに育ちました。
ただ、1人だけ、不幸に見舞われました。
階段から落ちてしまったのです。
その為に、背中が曲がってしまったのでした。
村の衆の、病気を治癒するお婆さん達が、
色んな事をしてみたのですが、
残念ながら、この怪我ばかりは元には戻らなかったのです。
それでこの子は、背中が曲がったまま、
生きていくことになってしまったのです。
ですが、この子はそんな自分の不幸を不幸ともせず、
明るく、元気に育ったのです。
その上、とても考え深い子になったのです。
上から3番目の子供だったのですが、
皆は、この子の言うことを良く聞き、
そして解らないことがあると、いつもこの子に尋ねるのです。
『ねえミーチャ、これをどう思う?
何のためだと思う?』
それに両親も、
『ミーチャ、ちょっとこれを見ておくれ。
お前が見て、これで良いと思うかい?』
とか、
『ミーチャ、母さんが糸巻きをどこに置いたか知らないかい?』
などと、いつもミーチャに尋ねるのです。
父親のダニーロは、小さい時から笛を吹くのが上手でしたが、
ミーチャも笛を吹くと、
ひとりでに、笛が、歌を歌い出すかのようでした。
ダニーロは、石細工の仕事でかなりの稼ぎがあります。
それにカーチャも、何もしないでいたわけでは無いのです。
2人で力を合わせて暮しを立てて、
誰にも頼るような事はしませんでした。
子供たちの着る服にも、カーチャは気を配りました。
どの子どもにも、フェルトの長靴や、
冬のオーバーを着せたのです。
夏は、裸足でも良いでしょうが、
ミーチャは身体が弱かったので、夏でも、
高価な長靴を履かせてもらっていたのです。
上の2人は、そんなミーチャを羨ましがったりしません。
しかし、弟たちは、
『ねえ、お母さん、
もうそろそろ新しい靴を、ミーチャに買ってあげてよ。
今のはもう窮屈そうだよ。
僕にだったら、あれ、ピッタリなのに。』
と、早く、ミーチャの物を、お下がりに貰いたいので、
精一杯、色んな事を母親に言うのでした。
こんな風にこの家では、何もかも上手くいっていました。
近所の奥さん連中も、カーチャに、
『カーチャの子供たちは、本当に仲が良いね。
喧嘩一つ、しないのだからね。』
と、感心して言いました。
しかしそれは、ミーチャがいたおかげだったのです。
明るいミーチャが、みんなの気持ちを明るく、
そして朗らかにしたり、
良いアイデアを与え続けていたからなのです。
さてダニーロは、石細工の仕事には、
子供たちを近づけさせませんでした。
まだ身体が出来上がってない幼い子供たちには、
クジャク石の粉は、とても毒だからです。
『まずは、大きくならなきゃな。
クジャク石の毒の埃を吸うのは、
もっともっと大人になってからで良い。』
と言って、けっして近づけませんでした。
カーチャもダニーロと同じ考えです。
細工仕事をするのは、皆まだ早すぎると思っていました。
それに子供らに読み書きや、算数を覚えさせようと、
考えていたのです。
~今日は、ここまで~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
つづくですっ。