『 アッシリアの王、アッサルハードンの伝説 』




 アッシリア王国アッサルハードン王は、

ライーリエ王の領土を征服して、

町という町を全部壊したり、焼き払った上に、

住民を残らず自分の領土へ追って来て、

軍人は、皆殺しにされ、

当のライーリエ王は、囚われの身となってしまったのです。



 夜、アッサルハードン王は、ベッドに横たわったまま、

ライーリエ王の処分をどうするか、考えておりました。

その時、突然、近くで、

サラサラという音が聞こえてきたために、

王は目を開けて、音のする方を見ると、

長く真っ白な髭を生やした老人がそこに立っていたのです。



『お前は、ライーリエ王を罰しようと思っているのか?』



と、老人はアッサルハードン王に訊ねました。



『そうだ。』



王は、静かに答えました。



『ただ、わしは、どういう刑罰を

 彼に与えれば良いのかが、わからぬのだ。』



『そりゃ、そうであろう。

 ライーリエとは、お前自身だからな。』



と老人は、言ったのです。



『何を言う。それは嘘だ。』



王は、答えました。



『わしは、わしだ。

 ライーリエは、ライーリエだ。』



『いいや、お前とライーリエ、これは一つなのだ。』



と再び、老人は言いました。



『お前が、ライーリエでは無く、

 ライーリエも、お前では無いと言うのは、

 ただお前にそう思われているだけに すぎぬのだ。』



『どうして そう思われるというのだ。』



と、王は尋ねました。



『わしはこの通り、柔らかなベッドで寝ておるし、

 それに、わしの周りには、

 忠実な男女の奴隷が侍(はべ)っておるぞ。

 そして、明日もわしは、

 今日の様に、大勢の友人たちと酒盛りをするだろう。

 しかし今、ライーリエはまるで小鳥の様に、

 檻の中に捕らわれて、その中でただ、座っておるだけだ。

 明日、奴は、舌をだらりと垂れ下げて串刺しにされ、

 命が絶えるまで、全身を痙攣させ続けるだろう。

 そして最後には、その身体は犬どもの餌になるのだ。』



『だが、お前は彼の命を滅ぼすことは出来ないのだよ。』



と、老人は言いました。



『では、どうしてわしが、奴の1万4千もの兵隊を殺したのだ。

 そしてその身体で、塚を築いたというのだ。』



と、王は聞きました。



『わしは生きているが、奴らは既にいない。

 それならばわしは生命を滅ぼすことも出来るじゃないか。』



『彼らが居ないという事を、

 どうしてお前は知っているのか?』



『そりゃ、わしが奴らを見ないからさ。

 肝心な事は、奴らは苦しんだが、わしは苦しんではおらん。

 奴らには、それは良い事では無かったが、

 わしには、それは良い事だったのだ。』



『それもお前に、そう思われているだけに、すぎぬぞ。

 お前は、自分で自分を苦しめたのだ。

 彼らを、では無い! お前をだ。』



『全く、理解出来ぬ。』



と、王は言いました。



『では、お前は、わかりたいか?』



『ああ、わかりたい。』



『では、ここへ来るがよい。』



老人は、王に水がたっぷり入った水盤を、

指で示しながら言いました。



王は、ベッドから起き上がると、

水盤の方へ歩いて行きました。



~今日は、ここまで~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

つづくですっ。
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