『 貧 し い 者 と 、 金 持 ち 』



前回のお話し  「貧しい者と、金持ち 1」




 食事も済み、いよいよ休む時が来ると、

妻は夫をこっそりと呼び、そして言いました。



『ねえ、あなた、

 私たちは今晩、藁を敷いて、そこで休みましょうよ。

 旅人さんは、ずっと歩かれていて疲れているのですから、

 狭いけれども、私たちのベッドで

 横になって休んでいただきましょうよ。

 きっととても草臥れていらっしゃるでしょうからね。』



『ああ、そうだね。いいとも。

 お客様には、わしからお話ししようね。』



 と言って、神様の所へ行って、

宜しかったら、どうか私たちのベッドに横になって、

手足を十分に伸ばして休んでくださいと、

貧しい家の主は言いました。

神様は、この年とった夫婦から、

ベッドまで借りようとは思ってはいませんでした。

でも2人とも、神様がベッドで横になるまで、

どうしても聞き入れませんでした。

そして神様が、自分たちのベッドに横になると、

夫婦は自分たちの為に、床に藁を敷きはじめました。



 翌朝、2人ともまだ夜が明け切らない内に起きだし、

お客の為に出来るだけの朝食を作りました。

日の光が小窓から差し込み、

神様が起きあがると、神様はまた2人と共に、

朝食を済ませ、それから旅を続けようとしました。

そして戸口まで来ると、神様は2人を振り返って、



『お前さん達は、本当に情け深く、それに信心深い。

 だから3つだけ、望みごとを言いなさるが良い。

 私がお前さん達の望みを、何なりと叶えてあげよう。』



と、言いました。

すると貧しい家の主は、



『私たちの願いは、いつかきっと天国へ行ける事、

 それから生きている間中、

 2人ともずっと健康で、毎日の食事があれば、

 それ以外には、何も欲しい物は無いのですよ。』



と、言いました。

これを聞くと神様は、



『お前は、この古ぼけた家の代わりに、

 立派な新しい家が欲しいとは、思わないのかい?』



と、お訊ねになられました。



『ああ、そうですね。

 もし家まで貰えるのなら、有り難いですが・・・』



と、貧しい家の主が、答えると同時に、

神様は、古い小さな家を新しい家に変えてしまいました。

こうして神様は、驚きながらも感謝を忘れない2人に

恵みを与えると、再び旅に出たのでした。



 一方、金持ちの男が起きた時は、

もうすっかりと、夜が明けていました。

そして、窓から乗り出して、向かいの家を覗いてみると、

そこには、みすぼらしいちっぽけな小屋があるはずなのに、

どうしたことでしょう。

赤い屋根の新しい立派な家が建っているのが見えたのです。

金持ちは驚いて、目を丸くしながら妻を呼びました。



『これは一体どうしたというのだ。

 昨夜は、確かに古ぼけて、みすぼらしい

 小さな家が、あそこにあったはずなのに、

 どうして今日は、あそこに綺麗な家があるのだ?

 おい、向かいの家に言って、

 どういう訳なのか、聞いてこい!』



 そこで早速、金持ちの妻は、貧しかった人の家を訪ねると、

どういう訳なのかを聞き出しました。

貧しかった家の主は、金持ちの妻に言いました。



『昨夜、旅の方が見えましてね、

 我が家に宿を求められたのでございますよ。

 その方が今朝、旅立つ間際、別れ際に、

 3つの望みを叶えてくださったのですよ。

 1つはいつか天国へ行く事、

 2つ目は、生きている間中、ずっと健康で

 毎日、食事が出来る事、

 そして最後に、神様が家が欲しくないか?

 と聞いてくださったので、

 家まで貰えるのなら、有り難いですと、答えたら、

 私たちの古い家の代わりに、綺麗な家をね・・・』



金持ちの妻は、貧しかった家の主の言葉を、

最後まで聞かずに、急いで走って家へ戻り、

今聞いてきた一部始終を、夫に話して聞かせました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
ペタしてね