『 シ ン デ レ ラ 』
前回までのお話し 「灰だらけの姫 1」 「灰だらけの姫 2」 「灰だらけの姫 3」 「灰だらけの姫 4」
やがて皆が、家の中に入って来ると、
灰だらけの姫は既に、汚い服を着て、
灰の中に座りこんでおりました。
うす暗い、油のランプが、
煙突の中で揺れながら燈っていました。
灰だらけの姫は、王子から素早く離れた後、
急いで鳩小屋に入ると、すぐさま小屋の後ろへ飛び降り、
母親のお墓の、はしばみの木の下に行き、
美しいドレスを脱いで、墓の上に置きました。
そのドレスを、鳥たちが咥えて持って行くのを見届けると、
直ぐにまた、元の灰色の服を着て、
家に戻り、灰の中に座りこんだのです。
王子はあの美しい姫が誰だったのか、
解らないままになってしまいました。
さて、その翌日にも、また舞踏会が始まりました。
両親と、姉たちがまた一緒に出掛けて行ったあと、
灰だらけの姫は、はしばみの木の下に行って言いました。
『はしばみの木さん、
その幹を揺すって、その身体を揺すって、
私に、金と銀をまいておくれ。』
すると鳥たちは、昨日よりも
もっと立派なドレスを、灰だらけの姫の上に落としました。
灰だらけの姫がそれを着て舞踏会に、再び現れると、
誰も彼も、その美しさに目を見張りました。
灰だらけの姫が来るまで、
誰とも踊らずに待っていた王子は、
直ぐにその手を取って、灰だらけの姫とだけ踊りました。
他の人が来て、灰だらけの姫にダンスを申し込むと、
いつも、
『この方は、僕だけのお相手ですよ。』
と、言って断るのです。
夕方になると、灰だらけの姫は帰ろうとしました。
王子は、その後から、こっそりと付いて行って、
姫が、どのお家に入るのか見届けようと思いました。
けれども灰だらけの姫は、
王子から飛んで逃げて、家の後ろの庭に飛び込みました。
そこには美しい大きな木が1本立っていて、
沢山の熟した梨の実がなっていました。
灰だらけの姫は、まるでリスの様に、
すばやく、梨の木の枝の間によじ登りました。
その為に王子は、姫を見失ってしまいました。
しかし王子はあきらめきれず、
娘の父親が来るのを待っていました。
そして父親に、
『あの見知らぬ少女は、僕から逃げてしまいました。
どうも、あの梨の木に登った様に思うのですが。』
と、言いました。
父は、「それは灰だらけの姫かもしれない。」
と、思いましたので、
家の者に行って、斧を持ってこさせると、
その梨の木を切り倒したのです。
けれども、木にはもう誰もいませんでした。
そして木を切り倒した後、皆が台所に入っていくと、
そこには灰だらけの姫が、
いつものように暖炉の傍の灰の中に座っていたのです。
灰だらけの姫は、梨の木の反対側から飛び降り、
はしばみの木に、とまった取りに美しいドレスを返すと、
急いで、いつも着ている灰色の服に着替えたのでした。
~本日は、これにて~
ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。
おしまいっ。