ダイゴマンの輪道 -2ページ目

ダイゴマンの輪道

2011日本縦断達成!2012年オーストラリア東岸縦断達成!
自転車乗って、走って走ってときどきこけて、
それでもまだまだ走る!
まだまだパワーアップする若年妄想暴走サイクリストの活動記録。

南西オーストラリア横断 ファイル4 丘越え風越え 編 ポートオーガスタ~キンバ


8月14日

この日から、A1エヤーハイウェイを西進することになる。ひとまず、ここから450km先のセデューナという街まで五日間でたどり着く予定だ。起床は午前六時半、しかし準備に手こずり出発は午前九時半になる。
滑り出しは快調。前後に程よく荷物を振り分けたおかげで、車体の反応に不快感は無い。しかし、向かい風に苦しめられる。午前十一時には20km程進んで、別のハイウェイとの分岐を通り過ぎる。すると、横風に襲われる。北、西進する自分からみれば右手からの風だ。猛烈、強烈、重い車体が揺らされさらわれそうになる。肩に力が入り、かなりの体力を使う。また、隣をロードトレイン・二両編成の大型車が通る時など、路肩が狭いので生きた心地がしない。かなり状態の悪い道だ。それを除けば、牧草と丘の広がるのどかな風景が広がっている、とても居心地の良さそうな場所だ。そういった風土の中を走るのが人気なのか、サポートカー付きでサイクリングを楽しむ集団もいた。
一旦昼休憩で、パンにハチミツとベジマイト(野菜などを発酵させたペースト状のもの)を塗って食べる頃にはすっかり精神的に参っていた。そして、日本からもってきた水タンクの水漏れにも気付く。ポタポタと気になるので、臆せず水を捨て、次の街で補修することとした。
以後の道は連続した丘陵、岡の連続。見ているだけなら美しい。背の低い、岩松のような植物が風に揺れ、空は青々として、綿菓子機の中のように雲はちぎれちぎれになって空を飛んで行く。それだけならいい。自分はまさにその綿菓子機の中にいて、風に逆らって進んでいる。それも連続した丘越え。越えても向かい風なので、下りで休むことは出来ない。結局、午後三時に辿り着いたアイアンノブという街でキャンプをすることとした。走行距離は60km程度だ。
アイアンノブは、鉄鉱石の採掘場として栄えた街らしい。しかし、今、ロードハウスとモーテルは廃墟と化しすっかり廃れている。街の入り口に置かれた、古い掘削機がなんとも物悲しい。
街の中には郵便局が一件。そこは売店も兼ねていて、僕はソーダを一本買って飲んだ。局員の人によれば、いつも向かい風というわけでは無いらしい。安心して、局の隣にあるキャンプエリアに行く。キャンプエリアは公営のもので地方活性化のためのものであろうか、様々な出資団体の名前が書いてあるプレートがあった。
キャンプエリアに一台、古い車があった。パースから用事があって旅してきたらしい。なんでも、1958年製らしい。英国車、上品なフロントの装飾とは裏腹に、使い込まれたボディーは物言わぬ凄みを持っている。天井にはキャリアがついていて、そこにはキャンプ道具から、水タンクの、その他諸々、後部座席には主人の愛犬が乗っている。カッコ良かったので写真を撮らせてもらった。一通りメンテナンスを終えると、恐らく空冷エンジンと思われる、軽く響く音を出して走り去って行った。ビンテージが生きている。
水タンク、サイクリングシューズの補強を行ったのち、夕食にヌードルを食し、テントで寝た。


8月15日
あまり早くは目が覚めず、この日も遅めのスタート、九時十分にアイアンノブを出る。やはり、冬だけあって朝は寒く、行動も緩慢になる。
水はすべて汲みかえた。無料のキャンプエリアであるにもかかわらず、雨水のタンクが用意されていたのだ。雨水と聞くと、ネガティブなイメージを持ちやすいが、オーストラリアの雨水はうまい。
走り出せば無風、快晴、雲のない美しい一日だ。道はひたすらまっすぐ、上り下りの連続したアスファルトロードの脇は茶色の砂利が転がり、その周りには低い木々、緑の牧草が生い茂っている。何の変化も無い道だが、久しぶりに死んだカンガルーを見た。少しだけ腐敗が進んでいるが、臭くない、気候が乾燥している証拠だろう。死体を見た直後、生きたカンガルーと並走する機会にも恵まれた。今回のオーストラリアでは二度目の並走だが、かなり近距離での並走となった。

午後二時には100km近く走り、キンバという街に着く。オーストラリアのちょうど真ん中、という表札があるように確かに地図を見ると見事に真ん中だ。それをウリにしているらしく、かなり大きい立て看板がある。
キンバは比較的栄えている街で、スーパーやホームセンターもあった。そこで食材や、やはり水漏れのひどい水タンクの買い換えをした。水タンクのに関しては妥協したくなかったが、いささか大きすぎるものを購入してしまった。
午後四時には、街のロードハウスでテントを張る。しかし、ここでテントのポールが折れるアクシデントが発生。応急処置として、ペグを当て木のように使い、ダクトテープで固定する。しかし、テントはいびつな形でしか自立しない。モンベルのクロノスドーム、購入して一年しか経っていないが、使用日数は普通の人よりは多いし、強風時や積雪時の使用もある。しようがない。
結局、応急処置をしたテントで一晩明かすこととした。