- ホテルローヤル/集英社
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廃墟のホテルローヤルから物語が始まり、それぞれの人間模様が繰り広げられ最後はホテル誕生エピソードで終わる。時間軸を逆にした群像劇の設定が面白い。ホテルローヤルを中心に交わった決して幸せとは言えない複数の男女の切なさ、寂しさ、欲望、絶望が紡ぎ出される。抜け出すことの出来ない、主人公達の半ば諦めぎみの不幸の中で、突如ポツリと現れるかすかな幸せが読者のこころに染みます。
廃墟のホテルローヤルから物語が始まり、それぞれの人間模様が繰り広げられ最後はホテル誕生エピソードで終わる。時間軸を逆にした群像劇の設定が面白い。ホテルローヤルを中心に交わった決して幸せとは言えない複数の男女の切なさ、寂しさ、欲望、絶望が紡ぎ出される。抜け出すことの出来ない、主人公達の半ば諦めぎみの不幸の中で、突如ポツリと現れるかすかな幸せが読者のこころに染みます。
「ジャンゴ 繋がれざる者」を観ました!(ネタバレなし)
何よりおもしろいのが、歴史の中で虐げられてきた人々のために、映画を使い仇討をし続けるタランティーノ監督。前作、彼の大傑作と謳われたイングロリアスバスターズは「パルプフィクション」を抑え、興行的にも大成功をおさめた傑作中の傑作です。1941年、第二次世界大戦中のナチス・がドイツ占領下のフランスを舞台に、ユダヤ系アメリカ人がナチスに次々と制裁を加えるという史実とは大きく異なる逆襲物語です。
新作、「ジャンゴ 繋がれざる者」の構図もそれと同じであり、今回は舞台を1860年代、奴隷解放宣言前のアメリカ南部に移し、凄腕賞金稼ぎの相棒、クリストフ・ヴァルツ扮するドクター・キング・シュルと一緒に、ジェイミーフォックス扮するジャンゴが白人の奴隷になっている奥さんを助けだすというあらすじ。
今回の悪役は、奴隷を冷酷に虐待する残忍な男キャンディを演じるディカプリオ。初の悪役に挑戦したディカプリオですが、これがはまりにはまっています。
映画の前半は、冷酷なキャンディが奴隷に対して虐待行為を繰り返していく様子を延々と描いていきます。奴隷どうしで殺し合いをさせ、その目の前で友人と平然とお酒を飲み交わすシーンや戦えなくなった奴隷を獰猛な犬をけしかけ食い殺されるシーンなどは、とてもまともには見ていられず、劇場内は観客の憤怒と憐れみが入り混じった感情が今にも溢れんばかりに、異様な雰囲気に包まれます。とくに彼の非情さをうまく描いているのが、骨相学を語るシーン。黒人の人骨を持ち出してきて、いかに劣等人種であるかと得体のしれない骨相学を用い科学的に証明しようとする様が極悪卑劣さの極みです。
長いハリウッドの歴史のなかで、様々なテーマの映画が大量に作られている中、実はこの「ジャンゴ繋がれざるもの」のように、奴隷がどれだけ虐げられていたかを描いた作品はほとんどありません。
それはアメリカが目を向けたくない歴史の暗部だからです。
今回の見どころのひとつはクリストフ・ヴァルツが演じる賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツのキャラクターです。司法でなく暴力で遂行する商品稼ぎという生業に対するある種の汚れを彼は自覚しており彼がどこか冷めた視線で悪党に制裁を加えるのが印象的で心に残ります。
青い奴隷の衣装を脱ぎ、シュルツと友情の証である握手を交わし、相棒となったジャンゴ。
物語の終盤、キャンディに握手を求められるシュルツ。
そこで突如、犬にけしかけられ殺されてしまった奴隷のフラッシュバックが彼を突き動かします。ここでなぜか神経にさわる『エリーゼのために』がBGMとして流れ、劇場内は緊迫していきます。賞金稼ぎのプロとしてすべて計画的に実行してきた冷静なシュルツでしたが、彼は確かに「賞金稼ぎである自分の手は汚れているがおまえよりはましだ」と言わんばかりのある行動に出ます。
前作に続きクリストフ・ヴァルツの凄まじい演技が冴えわたり、主役はジェイミーフォックスでなく、ヴァルツだなと思わせるほどの存在感です。実はジェイミーフォックスの役ではじめにオファーがかかったのは、ジェイミーフォックスでなく、あの大スターウィルススミスだったそうです。彼が台本を読んだときに、この映画の主人公はジャンゴでなく、キング・シュルツだ。圧倒的な存在感のキャラクターがいるので主役がかすんでしまう。だからやりたくないと辞退したとかしないとか。映画を観たあと、ウィルスミスのエピソードも納得できるほどの演技を見せつけてくれます。2年連続オスカー受賞も誰もが納得の結果です。
前半に溜まりに溜まった憤り。シュルツの正義により戦いの火蓋が切っておろされ、大逆襲劇が幕を開けます。
クリストフ・ヴァルツとディカプリオがとにかく物凄い演技を魅せる本作品。少々血なまぐさい描写もありますが、役者の演技が冴えわたり、タランティーノ映画の秀作として名を連ねることでしょう。
ちなみにウィル・ススミスは「素晴らしい作品だったよ。ただ、俺向きではなかっただけさ」と述べた…。
ジャンゴ役を断って出演するのは、彼が溺愛している息子ジェィデンスミスと共演しているどうでもいい映画。役者魂を忘れ、どこまでも親バカぶりを見せつけます。
「東映ヒーロー祭りも顔負けの世界最強のマーケッター、ディズニーの陰謀」75点
「シュガーラッシュ」を観ました!(ネタバレなし)
このたび「ラストスタンド」で約束通り、久々の俳優業にI came back!したシュワルツェネッガーですが、長年のブランクからか、はたまた度重なるスキャンダルが原因なのか、長年のファンですら出戻り感をどうしても拭えません。この映画が全米で興行的に大ゴケした事実がその印象をさらに強めます。
さてそんなシュワちゃんが少し前、プチ出戻りしていた映画が「エクスペンダブルズ」。アクション映画全盛期の1980年-90年代に、ハリウッドで大暴れしていたヒーローたちが顔を揃え真面目にやったおバカ映画です。シルベスタースターローン、ミッキーローク、ブルースウィルス、そしてシュワルツネッガー。誰もが熱くなったアクションヒーローたち。合言葉は『CGを使う映画なんかくそくらえ!』ちなみにエクスペンダブルズとは日本語で消耗品たち…。そんな自虐的ともいえる、ノスタルジックな映画で話題を呼んだのも記憶に新しい。
さて前置きが長すぎましたが、今回紹介するディズニーの新作「シュガーラッシュ」はシュワちゃん世代にノスタルジーをとことん感じさせる映画です。言い換えるなら 「エクスペンダブルズ」と「トイストリー」を掛け合わせたような設定。子供はもちろんのこと30代40代男性にはたまらない映画に仕上がっています。映画の導入部でいきなり、ストリートファイターのゲーム機がスクリーンに映し出され「波動拳!」「昇竜券!」とやりあうケンとリュウの姿におじさんたちは感動を隠せません。当然、その横で見ている子供たちがハテナマークを並べるのは無理もない話。
もちろん、おじさん世代だけ楽しませるのではなく、主人公ラルフがシュガーラッシュというメルヘンたっぷりでかわいらしいゲーム機に入り、スリリングなカーアクションが観られ劇場の女の子たちも胸を躍らせます。また男の子も楽しめるように、最新のポリゴンを駆使した超リアルシューティングゲームでの戦闘シーンも迫力満点で、少年の心を鷲掴み。最強のマーケッターディズニーのしたたかさに脱帽です。文字通り大人も子供も楽しませるマーケティング手腕には東映ヒーロー祭りも顔まけ状態。またカオス出演でパックマンの悪役のおばけやストリートファイターのあんな人、こんな人までがカオス出演。これには親父たちのドリームチーム、エクスペンダブルズも影をひそめること必至です。
しかしこれで終わらせないのがマーケット王者ディズニー!
なつキャラを使いノスタルジーだけの小手先だけで、大人たちを引率者としての役割から解放するわけではありません。意欲的にも子供向ファンタジーと大人向け社会的メッセージの二重構造という離れ業に挑戦します。この映画がすごいのは、子供狙いのファンタジーと大人へのノスタルジーで興行を稼ごうとする見え見えの作戦のほかに、現実社会を模写するような描かれ方をされていて、身につまされる想いを大人たちに募らせるという完成度の高い二重シナリオです。若い世代におされ、時代交代を迫られる中、なんとか自分の居場所を探し求め奮闘するキャラクターの姿が大人たちの涙を誘います。また誰もがやりたくない悪役を誰かがやらなければゲーム(世の中)は成り立たない。社会を存続させる為には、社会で暮らす各々がこのヒエラルキーに嘆くのではなく、現実の持ち場に身を置き、自分の場所に納得していくこと。 おじさんたち、男の子、女の子、家族みんな大満足で、この映画について語りあいながら、帰宅の途につける素晴らしい映画ですが、ただ一点おしかったのが、東映のヒーロー祭りのように、奥様がたをターゲットにすればもっと飛躍的に興行を稼げたのではないでしょうか。東映おそるべし。
「前半はアーティスティックな芸術作品。後半はファン待望の007の定番が詰まった娯楽映画」
「007 スカイフォール」を観ました!(ネタバレなし)
007シリーズ23作目の本作品。
クレイグ版の1作目である『カジノ・ロワイヤル』は、今までのシリーズとは一味違う魅力を確立したリアル志向なスパイ映画です。
今回はそのリアル志向な魅力にアーティスティック映像がプラスされよりグレードアップ。
監督は『アメリカン・ビューティ』でオスカーを受賞したサム・メンデス。『アメリカン・ビューティ』や『ロード・トゥ・パーディション』で観られる重厚でアートのようなシーンが本作品の前半に詰め込まれているので、また新たな007が楽しめます。
わたしは『ロード・トゥ・パーディション』が個人的には大好きなので、少々ひいき目に鑑賞しました。前半はファン待望のシリーズを象徴するあのテーマソングやあのスパイアイテムがなかなか出てきません。
ところが後半、事態は一変。
肩透かしをくらった007ファンがまだかまだかと待ちわびる中、おなじみの007のテーマがあるシーンでいきなり流れます。過去のシリーズをあまり知らないわたしでも、このにくい演出には正直シビレました。
それはまるでダークナイトライジングでバットシグナルがやっと出たあのときの興奮と同じです。
そのテーマソングを皮切りに、ファン待望の007定番ネタが連発。
ボンドカーのアストンマーチン。
操縦席に赤いボタン。
武器調達部のQとの軽快な会話や渡される秘密兵器。
シリーズファンしかわからないようなQとのやりとり。
おそらくここでも、ファンはドカンっとくるのであろうと想像しながら鑑賞しました。
実は007シリーズの過去作品はほとんど観たことのないわたしにとっては、後半のファン待望のお決まりパターンがしっくりこず、この点数でとどまりました。過去作品もすべて熟知されているかたにとっては、後半の過去作品へのオマージュ連発に酔いしれることができると思います。
できれば過去作品をすべて観て、本作品に臨むことがベストですが、さすがに不可能だと思います。
そこでこの1本だけ観ればOKという過去作品をご紹介します。
シリーズに詳しいかたが言っていましたが、シリーズ3作目『007ゴールドフィンガー』だけ観れば、このオマージュもすべて理解できるそうです。
『007ゴールドフィンガー』はシリーズの定番ネタがはじめて確立された映画です。
ダニエル・クレイグが好きなだけで、シリーズは初めて見るよというかたには、是非鑑賞前に、予習として『007ゴールドフィンガー』をDVDでチェックすることをおすすめします。
ちなみにダニエル・クレイグ版前作2作の『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』は観ていなくても大丈夫。本作とは全く関係のないストーリーです。
ただ『カジノ・ロワイヤル』は傑作ですので機会があれば是非。
そして定番中の定番のボンドガールですが、本作品終盤では意外な人物がボンドガールに選抜されます。
『あれはボンドガールではない!』と激怒するコアなファンもいるとかいないとか。
わたしは、あの描き方はボンドガールで間違いないと思います。
「うその映画製作で人質を救いだす、驚きの実話サスペンス。手に汗にぎる子どもだまし大作戦」88点