アサクラシネマレビュー

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レビューを読んで映画館に足を運んでいただいたり、DVDで観ていただければなによりです。

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ホテルローヤル/集英社
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廃墟のホテルローヤルから物語が始まり、それぞれの人間模様が繰り広げられ最後はホテル誕生エピソードで終わる。時間軸を逆にした群像劇の設定が面白い。ホテルローヤルを中心に交わった決して幸せとは言えない複数の男女の切なさ、寂しさ、欲望、絶望が紡ぎ出される。抜け出すことの出来ない、主人公達の半ば諦めぎみの不幸の中で、突如ポツリと現れるかすかな幸せが読者のこころに染みます。


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「アメリカが目を向けたくない歴史の暗部にメスを入れる勇者タランティーノが放つ仇討映画第二弾」90点

「ジャンゴ 繋がれざる者」を観ました!(ネタバレなし)


何よりおもしろいのが、歴史の中で虐げられてきた人々のために、映画を使い仇討をし続けるタランティーノ監督。前作、彼の大傑作と謳われたイングロリアスバスターズは「パルプフィクション」を抑え、興行的にも大成功をおさめた傑作中の傑作です。1941年、第二次世界大戦中のナチス・がドイツ占領下のフランスを舞台に、ユダヤ系アメリカ人がナチスに次々と制裁を加えるという史実とは大きく異なる逆襲物語です。

新作、「ジャンゴ 繋がれざる者」の構図もそれと同じであり、今回は舞台を1860年代、奴隷解放宣言前のアメリカ南部に移し、凄腕賞金稼ぎの相棒、クリストフ・ヴァルツ扮するドクター・キング・シュルと一緒に、ジェイミーフォックス扮するジャンゴが白人の奴隷になっている奥さんを助けだすというあらすじ。

今回の悪役は、奴隷を冷酷に虐待する残忍な男キャンディを演じるディカプリオ。初の悪役に挑戦したディカプリオですが、これがはまりにはまっています。

映画の前半は、冷酷なキャンディが奴隷に対して虐待行為を繰り返していく様子を延々と描いていきます。奴隷どうしで殺し合いをさせ、その目の前で友人と平然とお酒を飲み交わすシーンや戦えなくなった奴隷を獰猛な犬をけしかけ食い殺されるシーンなどは、とてもまともには見ていられず、劇場内は観客の憤怒と憐れみが入り混じった感情が今にも溢れんばかりに、異様な雰囲気に包まれます。とくに彼の非情さをうまく描いているのが、骨相学を語るシーン。黒人の人骨を持ち出してきて、いかに劣等人種であるかと得体のしれない骨相学を用い科学的に証明しようとする様が極悪卑劣さの極みです。

長いハリウッドの歴史のなかで、様々なテーマの映画が大量に作られている中、実はこの「ジャンゴ繋がれざるもの」のように、奴隷がどれだけ虐げられていたかを描いた作品はほとんどありません。

それはアメリカが目を向けたくない歴史の暗部だからです。

今回の見どころのひとつはクリストフ・ヴァルツが演じる賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツのキャラクターです。司法でなく暴力で遂行する商品稼ぎという生業に対するある種の汚れを彼は自覚しており彼がどこか冷めた視線で悪党に制裁を加えるのが印象的で心に残ります。

青い奴隷の衣装を脱ぎ、シュルツと友情の証である握手を交わし、相棒となったジャンゴ。

物語の終盤、キャンディに握手を求められるシュルツ。

そこで突如、犬にけしかけられ殺されてしまった奴隷のフラッシュバックが彼を突き動かします。ここでなぜか神経にさわる『エリーゼのために』がBGMとして流れ、劇場内は緊迫していきます。賞金稼ぎのプロとしてすべて計画的に実行してきた冷静なシュルツでしたが、彼は確かに「賞金稼ぎである自分の手は汚れているがおまえよりはましだ」と言わんばかりのある行動に出ます。

前作に続きクリストフ・ヴァルツの凄まじい演技が冴えわたり、主役はジェイミーフォックスでなく、ヴァルツだなと思わせるほどの存在感です。実はジェイミーフォックスの役ではじめにオファーがかかったのは、ジェイミーフォックスでなく、あの大スターウィルススミスだったそうです。彼が台本を読んだときに、この映画の主人公はジャンゴでなく、キング・シュルツだ。圧倒的な存在感のキャラクターがいるので主役がかすんでしまう。だからやりたくないと辞退したとかしないとか。映画を観たあと、ウィルスミスのエピソードも納得できるほどの演技を見せつけてくれます。2年連続オスカー受賞も誰もが納得の結果です。

前半に溜まりに溜まった憤り。シュルツの正義により戦いの火蓋が切っておろされ、大逆襲劇が幕を開けます。

クリストフ・ヴァルツとディカプリオがとにかく物凄い演技を魅せる本作品。少々血なまぐさい描写もありますが、役者の演技が冴えわたり、タランティーノ映画の秀作として名を連ねることでしょう。


ちなみにウィル・ススミスは「素晴らしい作品だったよ。ただ、俺向きではなかっただけさ」と述べた…。

ジャンゴ役を断って出演するのは、彼が溺愛している息子ジェィデンスミスと共演しているどうでもいい映画。役者魂を忘れ、どこまでも親バカぶりを見せつけます。


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「今求められる真のリーダー像とはなにかと巨匠が問う、誰もが知る英雄の知られざる戦略」90点


「リンカーン」を観ました!(ネタバレなし)

巨匠スピルバーグの「リンカーン」には驚かされました。その理由は、リンカーンで有名な話といえば、「南北戦争」「奴隷解放宣言」「ゲティスバーグ演説」「リンカーン暗殺」といったところですが、巨匠スピルバーグはそれらを大胆にもカットするという戦略にでました。

ではこの映画ではなにが描かれているのか?本当にこれで大丈夫なのか?スピルバーグファンは不安を覚えます。
この映画のポイントはリンカーンが奴隷制度撤廃を実現するために、反対派である民衆党員に説得工作をしかけ、党内の派閥議員を(急進派)を懐柔し、いかにしてアメリカ合衆国憲法修正第13条へ賛成票を投票させるかという徹底的な政治戦略ついてです。そこにはリンカーンの英雄的でドラマティックな話は存在せず、ましてやは私がひそかに期待していた南北戦争の戦闘シーンなどは描かれていません。なんと150分という長い上映時間のあいだ、ただひたすら描かれるのはリンカーンの政治戦略のみです。

見どころはやはり同じ共和党員であるとトミー・リー・ジョーンズ扮する、サディアス・スティーヴンス下院議員との党内論争です。超左派のスティーブンス議員は、リンカーンが提唱する奴隷解放だけでなく、黒人に選挙権を与えるといった完全なる黒人の平等を目指しています。実はこのころリンカーンを含め完全なる平等を目指している人はいませんでした。つまり奴隷制度はひどいけど黒人と白人が完全なる平等だと思っている人は当時のリベラルな党である共和党でもほとんどいなかったのです。唯一完全な平等を目指すサディアス・スティーヴンス議員は、1776年のイギリスからアメリカが独立する際の独立宣言の中に、「すべての人間は神によって平等に作られた」と書いてあるではないかと主張します。一方、民主党員はそれがあてはまるのは白人のみで黒人は除外されると反論します。今では考えられないとんでもないことを平気で言う奴隷解放反対派の議員たち。サディアス・スティーヴンスが完全なる平等を唱えるので、民主党員は引けるに引けない状況になってしまいます。

そこでねじれる国会をまとめるためにリンカーンが打った一手は、まずは身内を説得すること。超左派の頑固ものスティーブンスに歩み寄ることを選択します。

最終的な目標は完全なる平等だが、それでは 民主党院が納得しないので、今は法的な平等だけにしておいてほしい、つまり穏便にしてほしいと申し出ます。

この映画のメッセージは、実現すべき大事なことが存在する場合、真のリーダーというものは党を超えた立場で決定していくことが必要であり、それを実現させるためにはどこまで妥協させるか、どこまで説得できるかが重要であるということです。

実は、巨匠がこの映画に秘めた想いは、現在のオバマ大統領に対してのメッセージでもあるのです。

2010年にオバマ大統領が成立させた医療保険制度改革法。
本来、オバマ大統領は日本やヨーロッパ諸国と同じように国民健康保険を作ろうとしました。ところが野党である共和党から大反対をうけます。その理由は、共和党のバックには、既得権をもつ民営保険会社がついているからです。国民健康保険がすべての国民が加入すれば巨大企業である民営保険会社が破たんしてしまいます。

南北戦争以前から南部では広大な土地で行っていたプランテーション農業が産業の主軸。運営維持するには黒人の労働力が必要でした…。
ここでオバマ大統領がとった戦略は、リンカーンと同じように妥協案打ち出すことです。最終的には保険にどうしても入れない人だけを国が負担する法案に妥協しました。

150年前に完全な平等でなく、奴隷解放のみにとどまらせた妥協案が、後世の1963年、リンカーン記念公園で「わたしには夢がある」と演説したマーチン・ルーサー・キングやケネディ大統領の時代に引き継がれ、現在では、黒人が選挙権を獲得できただけでなく黒人が大統領になれる時代を作りました。あの妥協案があってこそ現在につがっていると思います。

リンカーンの偉業は100年、200年たっても永遠に語り継がれます。
それと同様に、このときに奴隷解放なんかばかばかしいと言い、反対票を投じた民主党議員の名も歴史に記録されます。あのとき反対していた議員は、150年たった現在だけでなく未来でも永遠に笑いものとなります。

大事なのは、未来を見ること。

リンカーンはこう言っています。
「この法律を通すことが虐げられている400万人の黒人を解放するだけでなく、将来この黒人の子孫である何千万何億の人々も解放することになる。だから今、なにがなんでもこの法案を通す。そのためにはどんなことでもやる」

またこの映画の見どころはほかにもあります。それは何といってもダニエル・ディ・ルイスの素晴らしい演技です。わたしが知っている「ラスト・オブ・モヒカン」や「ギャンブ・オブ・ニューヨーク」のダニエル・ディ・ルイスではなく、彼の新バージョンともいえる新たな一面が観られます。苦悩する英雄を見事に演じきった彼の演技に脱帽です。特に、かなしみと優しさを帯びた眼差しや苦悩で心労しきった印象を与えるしゃべり方や少々甲高い声がとても印象的でした。むかし本で読んだリンカーンのイメージそのものでした。

ちなみに製作起案当初は、ディ・ルイスではなくリーアム・ニーソンがリンカーンを演じる予定でした。スピルバーグの傑作「シンドラーのリスト」のあのリーアム・ニーソンです。年齢が違いすぎるとのことでニーソンは辞退したそうです。ニーソン版リンカーンをちょっと見てみたい気がしていましたが、ディ・ルイスの演技を目の当たりにしてその気持ちは一変。
また、あの時代に、トミー・リー・ジョーンズ扮するサディアス・スティーヴンス下院議員が完全な平等をなぜ求めたのかが、映画の終盤に明かされます。このシーンはとても胸が熱くなります。
ここでようやくスピルバーグらしい演出が観られます。

この映画は「南北戦争」「奴隷解放宣言」「ゲティスバーグ演説」「リンカーン暗殺」といった有名なシーンがほとんどなく全体的に地味な作りですが、随所にスピルバーグらしい演出が散りばめられており、お涙頂戴の英雄物語になりすぎず、真のリーダー像はなにかを明確に提示しています。

やはりスピルバーグは天才です。
捻じれてばかりで何ひとつ大事なことが決まらない、現代の日本やアメリカ。真のリーダーが求められるこの時代で、巨匠スピルバーグが英雄リンカーンの知られざる一面を描く、今見るべき傑作です。


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「東映ヒーロー祭りも顔負けの世界最強のマーケッター、ディズニーの陰謀」75点


「シュガーラッシュ」を観ました!(ネタバレなし)


このたび「ラストスタンド」で約束通り、久々の俳優業にI came back!したシュワルツェネッガーですが、長年のブランクからか、はたまた度重なるスキャンダルが原因なのか、長年のファンですら出戻り感をどうしても拭えません。この映画が全米で興行的に大ゴケした事実がその印象をさらに強めます。


さてそんなシュワちゃんが少し前、プチ出戻りしていた映画が「エクスペンダブルズ」。アクション映画全盛期の1980年-90年代に、ハリウッドで大暴れしていたヒーローたちが顔を揃え真面目にやったおバカ映画です。シルベスタースターローン、ミッキーローク、ブルースウィルス、そしてシュワルツネッガー。誰もが熱くなったアクションヒーローたち。合言葉は『CGを使う映画なんかくそくらえ!』ちなみにエクスペンダブルズとは日本語で消耗品たち…。そんな自虐的ともいえる、ノスタルジックな映画で話題を呼んだのも記憶に新しい。


さて前置きが長すぎましたが、今回紹介するディズニーの新作「シュガーラッシュ」はシュワちゃん世代にノスタルジーをとことん感じさせる映画です。言い換えるなら 「エクスペンダブルズ」と「トイストリー」を掛け合わせたような設定。子供はもちろんのこと30代40代男性にはたまらない映画に仕上がっています。映画の導入部でいきなり、ストリートファイターのゲーム機がスクリーンに映し出され「波動拳!」「昇竜券!」とやりあうケンとリュウの姿におじさんたちは感動を隠せません。当然、その横で見ている子供たちがハテナマークを並べるのは無理もない話。


もちろん、おじさん世代だけ楽しませるのではなく、主人公ラルフがシュガーラッシュというメルヘンたっぷりでかわいらしいゲーム機に入り、スリリングなカーアクションが観られ劇場の女の子たちも胸を躍らせます。また男の子も楽しめるように、最新のポリゴンを駆使した超リアルシューティングゲームでの戦闘シーンも迫力満点で、少年の心を鷲掴み。最強のマーケッターディズニーのしたたかさに脱帽です。文字通り大人も子供も楽しませるマーケティング手腕には東映ヒーロー祭りも顔まけ状態。またカオス出演でパックマンの悪役のおばけやストリートファイターのあんな人、こんな人までがカオス出演。これには親父たちのドリームチーム、エクスペンダブルズも影をひそめること必至です。


しかしこれで終わらせないのがマーケット王者ディズニー!


なつキャラを使いノスタルジーだけの小手先だけで、大人たちを引率者としての役割から解放するわけではありません。意欲的にも子供向ファンタジーと大人向け社会的メッセージの二重構造という離れ業に挑戦します。この映画がすごいのは、子供狙いのファンタジーと大人へのノスタルジーで興行を稼ごうとする見え見えの作戦のほかに、現実社会を模写するような描かれ方をされていて、身につまされる想いを大人たちに募らせるという完成度の高い二重シナリオです。若い世代におされ、時代交代を迫られる中、なんとか自分の居場所を探し求め奮闘するキャラクターの姿が大人たちの涙を誘います。また誰もがやりたくない悪役を誰かがやらなければゲーム(世の中)は成り立たない。社会を存続させる為には、社会で暮らす各々がこのヒエラルキーに嘆くのではなく、現実の持ち場に身を置き、自分の場所に納得していくこと。 おじさんたち、男の子、女の子、家族みんな大満足で、この映画について語りあいながら、帰宅の途につける素晴らしい映画ですが、ただ一点おしかったのが、東映のヒーロー祭りのように、奥様がたをターゲットにすればもっと飛躍的に興行を稼げたのではないでしょうか。東映おそるべし。


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「前半はアーティスティックな芸術作品。後半はファン待望の
007の定番が詰まった娯楽映画」



「007 スカイフォール」を観ました!(ネタバレなし)



007シリーズ23作目の本作品。
クレイグ版の1作目である『カジノ・ロワイヤル』は、今までのシリーズとは一味違う魅力を確立したリアル志向なスパイ映画です。

今回はそのリアル志向な魅力にアーティスティック映像がプラスされよりグレードアップ。
監督は『アメリカン・ビューティ』でオスカーを受賞したサム・メンデス。『アメリカン・ビューティ』や『ロード・トゥ・パーディション』で観られる重厚でアートのようなシーンが本作品の前半に詰め込まれているので、また新たな007が楽しめます。


わたしは『ロード・トゥ・パーディション』が個人的には大好きなので、少々ひいき目に鑑賞しました。前半はファン待望のシリーズを象徴するあのテーマソングやあのスパイアイテムがなかなか出てきません。



ところが後半、事態は一変。


肩透かしをくらった007ファンがまだかまだかと待ちわびる中、おなじみの007のテーマがあるシーンでいきなり流れます。過去のシリーズをあまり知らないわたしでも、このにくい演出には正直シビレました。

それはまるでダークナイトライジングでバットシグナルがやっと出たあのときの興奮と同じです。


そのテーマソングを皮切りに、ファン待望の007定番ネタが連発。

ボンドカーのアストンマーチン。

操縦席に赤いボタン。

武器調達部のQとの軽快な会話や渡される秘密兵器。

シリーズファンしかわからないようなQとのやりとり。
おそらくここでも、ファンはドカンっとくるのであろうと想像しながら鑑賞しました。



実は007シリーズの過去作品はほとんど観たことのないわたしにとっては、後半のファン待望のお決まりパターンがしっくりこず、この点数でとどまりました。過去作品もすべて熟知されているかたにとっては、後半の過去作品へのオマージュ連発に酔いしれることができると思います。



できれば過去作品をすべて観て、本作品に臨むことがベストですが、さすがに不可能だと思います。

そこでこの1本だけ観ればOKという過去作品をご紹介します。

シリーズに詳しいかたが言っていましたが、シリーズ3作目『007ゴールドフィンガー』だけ観れば、このオマージュもすべて理解できるそうです。

『007ゴールドフィンガー』はシリーズの定番ネタがはじめて確立された映画です。

ダニエル・クレイグが好きなだけで、シリーズは初めて見るよというかたには、是非鑑賞前に、予習として『007ゴールドフィンガー』をDVDでチェックすることをおすすめします。

ちなみにダニエル・クレイグ版前作2作の『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』は観ていなくても大丈夫。本作とは全く関係のないストーリーです。

ただ『カジノ・ロワイヤル』は傑作ですので機会があれば是非。



そして定番中の定番のボンドガールですが、本作品終盤では意外な人物がボンドガールに選抜されます。


『あれはボンドガールではない!』と激怒するコアなファンもいるとかいないとか。

わたしは、あの描き方はボンドガールで間違いないと思います。


アデルが歌うオープニングも含めサム・メンデスらしいアーティスティックな描写が多かった前半。オマージュ満載のファンサービス中心の後半。両方楽しめることができればかなりの高得点になるはずの007最新作「007 スカイフォール」見所満載です。



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「驚きの結末。幻想的で迷走するストーリーだが、最後はすべて納得できる斬新な映画。」90点

「ライフ・オブ・パイ」を観ました!(ネタバレなし)

舞台は1970年台のインド。動物園を経営する家族に育てられた主人公パイ。インドで幸せに暮らしている中、動物園が経営難で、急にカナダに移住することになります。
ストーリー前半は、とても美しいインドの風景やパイ少年の日常的な出来事がたんたんと綴られる少々たいくつな展開。インド人であるパイ少年は、ヒンドゥー教徒ですが、キリスト教に触れてみたり、イスラム教も試してみたり。パイ少年の神探しストーリーが描かれます。

謎めいた映画のタイトルに惹かれて映画館に足を運んだ観客がとても心配になる前半。
ところが話はそこから急展開。

『インドをすててカナダに移住するぞ』と唐突に宣言するパイ少年の父。

カナダへ向けて貨物船で移住するパイ少年と家族と動物園の動物たち。
そこで貨物船が嵐に遭遇し沈没してしまいます。

なんとか緊急用のボートに乗り込んで助かった少年パイ。
そこからパイはボートで漂流することになりますが、残念ながら家族とは離ればなれになってしまいます。

かわりにそのボートに乗ってきたのは、なんとシマウマとオラウータン。
しばらくして突然、ボートの中に隠れていたどう猛なハイエナがパイ少年や動物たちに襲い掛かります。
ハイエナはシマウマにかみつき。つづいてオラウータンも噛み殺してしまいます。
大ピンチの少年パイ。このままハイエナに食い殺されてしまうのか?と手に汗握っているといきなり船の中からとてつもなく大きなトラが出現!
ハイエナもトラに噛み殺されてしまい。ボートに取り残された一匹のトラとパイ少年。
飢えたトラと漂流することを余儀なくされたパイ。

パイ少年はいかにしてトラと共存していくのか?はたしてこの弱肉強食的なワンシュチュエーションを切り抜けることができるのか?

この映画の見所は、奇妙なサバイバルストーリーはもちろんのこと。
観客がとても美しく幻想的な世界をパイ少年と一緒に体験できることが、最大の魅力です。
わたしは3Dで観られませんでしたが、絶対に3Dがおすすめだと思います。

トラと漂流しているうちに、現実ではありえない情景がつぎつぎと展開されます。
さきほどまで大嵐だったにもかかわらず、海面は完全な凪の状態に。
ひとつの波もない、現実ではありえない完全な凪。
夕焼けが照らし、鏡のように反射する海面。
真っ暗闇の中、青白く輝く無数のクラゲ。
とてもこの世のものとは思えない情景。
夜になり、満天の星が輝く夜空がその海面に映し出され、まるで宇宙空間をパイ少年の船が進んでいくかのような世界。

いったいこの映画はなんなのか?

前半のパイ少年の生活でふれたような哲学的な話なのか。
パイの物語がどこに向かおうとしているのか、わからなくなってしまいます。
そんな不思議な映像体験で放浪させられる観客に待ち受けているのは、驚きのエンディング。

絶対に予備情報なしで観たほうがいい本作品ですが最後にひとこと。
この謎多き映画の重大なヒントが、『リチャード・パーカー』という人のようなトラの名前に隠されています。
鑑賞し終えた後に、ネットで検索してみることをお勧めします。
また映画パンフレットの表紙デザインを良く観てみるとこの結末を知る人だけがわかるヒントが描かれています。
まさに虎視眈眈とオスカーを狙う『ライフ・オブ・パイ』絶対おすすめの一本です。

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「JとKの意外な関係が解き明かされるシリーズ最高傑作」86点


「メンインブラック3」を観ました! (ネタバレなし)


メイインブラック3を観てないかたの中には、今さらあの映画。もう飽きた。マンネリでつまらない。ただの宇宙人をバシバシやっつけるだけの単純コメディ。といった印象をもたれているかもしれません。そんなかたにわたしは断言します。
メンインブラック3はそんなあなたの期待を裏切る近年稀に見る最高のバディムービーに仕上がっていることを。これには日本の名コンビ、浜ちゃん・スーさんも嫉妬するほどの出来栄え。

このシリーズの魅力は奇想天外でグロかわいいエイリアンたちやそれを容赦なくバシバシと退治するエージェント“J”(ウィル・スミス)と“K”(トミー・リー・ジョーンズ)の爽快なアクションシーン。なんといっても一番の魅力はJとKが交わす嫌味たっぷりの会話。

MIB1.MIB2につづき相変わらずのマンネリぶりですが、このバディムービーはそれでいいのです。むしろそのマンネリが心地よく素直に笑え、安心して観られる。これこそがバディムービーの醍醐味。
日本で言えばわたしの大好きな映画 『釣りバカ日誌シリーズ』も安定した笑いを与えてくれるバディムービーの大御所。毎回、浜ちゃんこと(西田俊之)とスーさんこと(三國連太郎)が釣りして、喧嘩しての繰り返し。それでも毎回おもしろい。結局22回も続く超ロングランおばけ映画になるほどの始末。
トムとジュリーやシャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)とワトスン(ジュード・ロウ)も毎回おもしろい。

ところがMIB3はそれだけにとどまらず、マンネリにタイムスリップという上質のスパイスとJとKの感動秘話をひっさげて進化した感動SF映画として見事にカムバック。

1作目でJ(ウィル・スミス)はなぜエージェントとしてK(トミー・リー・ジョーンズ)にスカウトされたのか。

Kがなぜいつも無表情で必要以上にしゃべらないのか。

異質な二人がなぜ名コンビなのか。

すべてが解き明かされるラストは思わず胸が熱くなります。

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「素晴らしい音楽がふたりの友情と成長をみごとに映し出す。フランス映画らしい洒落た映画」98点

「最強のふたり」を観ました!(ネタバレなし)


エンドロールが流れている間、誰も席を立とうとしませんでした。
劇場内は満員。エイナウディの雄大なスコアが感動の余韻を観客に与えます。ラストシーンからエンドロールへとつながる芸術的とも言える名シーンに観客は酔いしれます。

物語は、スラム街育ちの黒人ドリスと大富豪の白人フィリップの決して交わることのない対照的なふたりの出会いから始まります。

事故で首からしたが麻痺した大富豪フィリップの介護士採用面接に、ドリスが応募したのがきっかけでした。まさに住む世界の違うふたりは、はじめ反発しあいますが、次第に心を通わせていきます。

少々重たいテーマに思える本作品ですが、そんなことを微塵も感じさせない爽快なブラックユーモアと最高の音楽が観るものを感動の渦に巻き込みます。

特質すべきはラストシーンの音楽。

物語の余韻にしっかりとマッチした楽曲。
それは胸が熱くなった不朽の名作のラストを思い出させます。

『私は、十二歳のときにもった友人に勝る友人を、その後、二度ともったことはない。誰でも、そうなのではないだろうか------。』のナレーションの後、
When the night has come…..とベン・E・キングの曲につづくあのスタンドバイミーのラスト。
いい映画には必ずいい音楽があります。

フランス映画史上歴代NO.2のヒット作品というお墨付きの本作品。
とにかくおもしろい。
はらの底から笑える『最強のふたり』は今年30本以上観た映画の中で、群を抜く傑作中の傑作です。


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「うその映画製作で人質を救いだす、驚きの実話サスペンス。手に汗にぎる子どもだまし大作戦」88点


「アルゴ」を観ました!(ネタバレなし)

押しも押されもせぬ勢いでハリウッドトップスターにのし上がった盟友マット・デイモンと比べ、地球めがけて【急降下】してくる巨大隕石を掘削機で破壊し、ブルースウィルスとともに地球の危機を救った大ヒットお涙頂戴映画を皮切りに、人気も【急降下】したベン・アフレック。

そんな彼が監督デビューし再起を誓ってはや3作目。
前作の【ザ・タウン】の出来栄えの良さで、映画ファンを驚かせたのは記憶に新しい。
目の肥えた映画ファンからベン・アフレック監督に、期待が寄せられる中、3作目『アルゴ』が封切られました。

出来栄えはひとことでお見事!

実話ストーリーとは言え、観客にスリルを与える演出力は去ることながら、特筆に値するのは、張りめぐらされた数々の伏線です。

それが小刻みに消化されていき、観客が『あーそれがそうなるかー!』『なるほどー!』とつい声をだしてしまうほど、胃もたれゼロの代物。

あらすじはと言うと、1979年イランの過激派がアメリカ大使館を占拠し52人のアメリカ人が人質となります。そんな中、大使館員の6名が命からがら脱出し、イラン国内カナダ大使の自宅にかくまってもらいますが、もちらん過激派もだまってはいません。

過激派に目隠しをされ、銃で脅されるシーン。
クレーン車でつるし上げられた遺体。

劇場に緊張がはしります。

そんな中、ベン・アフレック監督自らが扮するCIAのトニー・メンデスは、ある奇想天外な救出作戦を提案する。

その提案とは、なんと『アルゴ』という題名の映画の撮影ってことにして、一触即発のイランに入国し、6名のアメリカ人大使館員を出国させようぜ!という子どもだましにもならないような作戦。
ところがこの結果が分かっている子どもだましの実話ストーリーが、なぜか手にあせ握る超一級サスペンスに様変わり。

ベン・アフレック監督の才能に疑う余地なし。
そう思える本作品は、彼の代表作品として語り草となることでしょう。


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「これぞB級映画」70点


「トロール・ハンター」を観ました! (ネタバレなし)

POV(ハンディカムで撮影した主観撮影)映画が大好きである。
B級映画を無性に見たくなる。
矢追純一の特番は欠かさず観る。
ネッシー、ビックフット、フライングヒューマノイド、きゃりーぱみゅぱみゅ、等のUMA(未確認生物)を十個以上言える。

上記の条件が当てはまらない人にとっては最低の映画ですが、すべて当てはまった人にとってはこの上ないB級映画を満喫することになるでしょう。

ところで「トロール・ハンター」はわたしの好きなベストPOV映画4位に見事ランクインしました。

1位はPOV映画の草分け的な存在となった『ブレアウィッチプロジェクト』。
衝撃のラストが話題の『パラノーマルアクティビティ』が2位。
3位は、とあるマンションの住民が徐々にゾンビ化していく『REC』
最下位はPOV映画独特のハラハラ度はほとんどない割に、謎のクリーチャーの全貌をラストまで見せないもったいぶり度と観客の数人は必ず気分を害して途中退場させるほどの手振れ度では群を抜く『クローバーフィールド』

それはさておきあらすじはというと、ノルウェーの田舎町でクマの密猟事件をおっかけていた3人の学生。取材中になにやらあやしげな男ハンスと出会う。取材を続ける中3人は、ハンスは実は密猟者ではなく、なんと政府公認のトロール・ハンターだということを知ってしまう。はたして本当にトロールは存在するのか?といった内容。

一番面白い見せ場と言えば、トロールをおびき出すために罠を仕掛けるシークエンスです。

ド真面目に川沿いに生息するトロールを捕獲しようとトロール・ハンターは、橋の真ん中に トロールが大好きなヤギを置きトロールをおびき寄せるシーン。
どこかで聞いたことのあるような話。トロールとヤギと言えば、そうです、名作絵本『3匹のやぎのがらがらどん』絵本ではもちろんヤギが勇敢にもトロールに立ち向かいやっつけるという話だが、この映画では絵本とは違う衝撃の結末がヤギたちを待ち受けます。

B級映画好きにたまらない大真面目なドキュメンタリー。
わたしはこの映画を見て確信しましたトロールは実在すると。