病院で事務職として働いていた僕は「言語聴覚士になりたい」と一念発起!…46歳の時でした。
そして48歳で国家試験に合格して、言語聴覚士として同じ病院で働き始めました。
今回のブログ記事では、当時のことを振り返りながら綴っていきます。
言語聴覚士になってから数年間は数々の講習会に出かけ、時間とお金を費やしてきました。
基本的には、日帰りの終日コースでしたが、なかには3日間にわたるものもありました。
現在は、そうした「講習会熱」も冷め、ほとんど出かけることはなくなりました。
情報を得る手段が、講習会から研究論文の検索へと変わってきたことが理由のひとつだと思います。
今まで受講してきた講習会の大きなテーマは以下のとおり
・失語症
・嚥下障害
・構音障害
・認知症ケア
・発達障害
・内部障害
・体表解剖
・神経難病
・薬剤について
我ながら感心するほどに、たくさん受講していますね。
果たして、これだけの講習会を受講して、それが自分の身になっているのでしょうか?
残念ながら、その答えは、僕の場合は「いいえ」です。
もちろん、自分の知識やスキルとして身についたものもありますが、その殆どは頭の中をすり抜けていきました。
理由は明白で、それは自分自身に原因がありました。
それまでに数々の講習会で受講してきて、受講後にその内容を見返すことをほとんどやってきませんでした。
受講してきたことで、満足感と達成感に満たされて、内容を理解したような気になっていたのです。
資料は手元に残していますので、時を経ても受講してきた満足感だけは残ります。
でも、見返すことはほとんどありませんでした。
その結果、数々の価値ある受講内容が無駄になってしまったのです。
病院勤務の言語聴覚士が、講習会に参加する最大の目的は「そこで得たものを臨床に活かすこと」にあると思いますが、僕はそういうことをほとんどやってきませんでした。
そして、受けっぱなしの講習会が意味がないことを、お金と時間をかけて学習しました。
講習会自体は、その道のスペシャリストが厳選した内容ですので、その学びが有意義でないはずはありません。
そこで得た学びを活かすも殺すも自分次第。
たとえ、内容が期待外れの講習会だったとしても、講習会の資料をもとに、自分で調べて知識を得るなどして、その結果、身に付き臨床に生かせれば「その講習会は有意義だった」と言えると思うのです。
その席に座るために、時間をやりくりして臨む講習会を、受けっぱなしにするほど勿体無いことはありません。
もらってきた資料の復習
臨床に活かすためのアウトプット
を伴ってこそ価値ある受講になります。
そんな失敗経験が多いなかでの、自分に役立てることができたケースについて紹介します。
それは「体表解剖セミナー」の講習会でした。
これは「体表解剖セミナー」が自体がお勧めですよという話ではなくて、そのセミナーを受講する自分の動機付けが、しっかりしていたから身に付いたという成功体験のお話です。
「体表解剖セミナー」とはシンプルに言うと
・全身の筋肉を触れるように
・筋肉を正しく触察できるように
なることが目的のセミナーです。
僕が受けた会場での受講者は、理学療法士、作業療法士、マッサージ師等で言語聴覚士は僕一人でした。
現在では、言語聴覚士に向けた「臨床における筋肉について詳しく言及した」書籍等が出回っていますが、当時は、言語聴覚士の関心が筋肉に向かうことは、それほどなかったような気がします。
僕は、嚥下障害の治療において、患者様の顔面及び頭頸部をマッサージする際に「自分が目的とする筋肉を正確に触れているのか」ということに常に疑問を持っていました。
目標とする筋肉に対して施術しないと意味をなさないからです。
当時、僕は訪問リハビリにも行っていました。
そして、訪問先で「足腰肩の痛み」について相談されることが少なくありませんでした。
訪問先は病院ではありませんので、そこにいる医療専門職は自分だけです。
特に訪問先では、言語聴覚士だから「顔面周囲のことだけ対応しておけば良い」という考えは通用しないと思っていました。
また、言語聴覚士の専門分野である嚥下障害と向き合う際にも、全身の筋肉について学ぶ必要性を感じていました。
それは、食事の時のポジショニングがとても難しかったからです。
例えば、脳血管障害の後遺症で麻痺があり嚥下障害がある患者様のポジショニングでは、全身を緊張させないように、負担を軽減して本人が食べやすい疲労しにくい体勢を作ります。
そうした時に、頭頸部だけでない上下肢の筋肉についての知識やスキルの有無が非常に大切になってくるのです。
「体表解剖セミナー」はそのような目的意識を持って臨んだ講習会でした。
同じ内容の講義を複数回受講したり、地域の理学療法士の月1回の勉強会に入れていただいて、約2年かけて,筋肉について学びました。
おかげさまで、上下肢の筋肉が触れるようになり日々の臨床で活かせています。
このように、筋肉について「言語聴覚士がそこまでやるの」と言われるほど突っ込んだところで、比較的時間をかけて学びを継続できたのです。
それを可能ならしめたのは
・何故「体表解剖セミナー」を受講したいのか
・その学びをどのように臨床に活かしたいのか
といった明確な動機付けがあったからこそだと思います。
こうして「体表解剖セミナー」を受講したおかげで自分のことを
オーラルフレイル予防と摂食・嚥下障害を得意とする「筋肉の触察ができる」言語聴覚士です
と胸を張って言えるようになりました。
強い動機付けを持って参加する講習会は、期待以上の結果をもたらしてくれるはずです。