46歳の春、それまで病院に勤務していた僕は、一念発起!某医療専門学校の言語聴覚学科に入学しました。
言語聴覚士になりたい一心で
起床:朝4時半
帰宅:午後8時
通学:片道2時間半
といった生活を2年間続け、国試に合格することができました。
当時の自分を振り返っていきます。
まずは、言語聴覚士になるために必要な就学年数についてのお話です。
言語聴覚士になるには、法律に定められた教育課程を経て国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
国家試験の受験資格を得るには、
・3~4年制の大学・短大
・3~4年制の専修学校
・2年制の専修学校
で学ぶ必要があります。
それまでの自分の職場(病院)では、3年間専修学校(夜間であれば4年)で学んだリハビリ職の人ばかりでした。
それが、2022年現在では、4年制大学で学んだリハビリ職の人が増えつつある感があります。
そうしたなか、僕が選択したのは専修学校の2年コースでした。
2年コースがなかったら、言語聴覚士になれていなかったかもしれません。
40代後半の身にとって、短期間で取得できることは、とても魅力的だったからです。
定年までの折り返し地点を過ぎていた自分にとっての1年の差は馬鹿にならないくらい大きなものでした。
例えば学校に3年行く場合と、2年行く場合のお金の計算をしますと…
【収入の差】
無収入3年 ➖ 無収入2年 🟰 A
【支出の差】
1年分の学費と諸経費 🟰 B
1年長く学校に行くと、その分の年収が得られないばかりか、1年間の学校にかかる経費がかかってしまうことになります。
つまり、無収入状態で支出がかさむことになり、
言語聴覚士に2年後になるか3年後になるかで
( A ➕ B )
の金額差が生まれるのです。
もっというと、その差の1年間で得られる、臨床での知識や経験はお金では買えない価値があると思いました。
迷う理由はありませんでした。
2年制の言語聴覚学科のある学校は、自宅からかなり遠く、電車バスを乗り継いで片道2時間半かかりました。
しかし、そんなことは言ってられませんでした。
そして、1日も早く病院に戻り、患者様のために働きたいと思っていました。
一言で言うと…3、4年コースと比較するとかなりキツいと思います。
大卒の資格を活かしたカリキュラムとは言え、3〜4年かけて学ぶことを、2年でやってしまうわけですので、当然です。
僕の場合は、学校での学び自体は、たしかにキツくはありましたが、それほどキツいとは感じませんでした。
社会人として「日々起きるさまざまなことに対応しながら、仕事を続けること」の方がよっぽどキツかったからです。
そうした意味では、学生時代は勉強だけに専念すれば良いわけですから、精神的には楽でした。
学業というかどちらかと言うと、毎朝の4時半起床と通学にかかる時間(往復5時間)と短い睡眠時間がかなり負担で、そこから心身の調子を崩さないようにコントロールすることが大変でした。
身体が資本、僕も若くありませんでしたので、睡眠時間と食事にはかなり気を遣いました。
…とは言うものの、かなり広い範囲から出題される言語聴覚士国家試験対策ということを考えると2年間という準備期間はギリギリだと思います。
さらに国試受験のためには実習を受ける必要があります。
僕らの時は
1年生の時:2週間の介護実習
2年生の時:4週+8週の計12週の臨床実習
がありました。
そのため、教室での学びは実質1年数ヶ月です。
ですので、授業は月曜から土曜日まで空き時間なく詰まっていました。
そうした中で、医学、心理、言語、聴覚、音響、障害など多岐にわたる範囲を学ぶ必要があります。
アルバイトする時間なんて、あるはずはありません。
このように2年課程で学ぼうとすると、窮屈なカリキュラムであるという一面もあります。
若くて時間に余裕があれば、3〜4年過程でじっくり学ぶというのもひとつの選択肢だと思います。
僕のように事情を抱え、1日でも早く資格を取りたいと考える者にとっては、2年課程はとてもありがたい制度だったのです。
ですが、社会人経験者にとっては、金銭的な負担やプレッシャー、そして不安と向き合うことになる2年間となります。
そうした意味でも、僕が学んだ2年間の言語聴覚学科は、人生の中で大きな決断をした者たちが集う場所でもあったと言えます。
当時の就学年数別の言語聴覚士国家試験の合格率は、2年制の言語聴覚学科出身者が、3〜4年制で学んだ学生達を抑えてトップでした。
僕の私見ですが、その違いは「覚悟の違い」だと思っています。