僕が大学を卒業してから医療職に就くまでの経歴は以下の通りです。
① コンピュータ会社に就職
② 体外診断薬メーカーへ転職
③ 新規事業に伴う別会社への転職〜退職
④ 紆余曲折の黒歴史
⑤ 病院へ転職
今回は、病院勤務となった⑤以降の話です。
「地域高齢者へ向けた健康教室」でご一緒したことがきっかけで、言語聴覚士のKさんとの距離がグッと近くなりました。
言語聴覚士のKさんは、事務職の僕が興味津々だった「言語聴覚士」について、沢山のことを教えてくれました。
言語聴覚士は1999年に第一回国家試験が行われた新しい国家資格であること
失語症・構音障害といったスピーチの障害の他、摂食・嚥下障害にも対応すること
「聴覚」や「小児の発達」も専門分野で耳鼻科や学校などの教育現場にも活躍の場があること
当院は高齢者が多いので、成人分野で脳血管障害由来の構音障害や失語症の患者様が言語リハビリ対象であること
と同時に嚥下障害に対するニーズが高いこと
…などなどを教えてくれました。
また、そうしたことに加えて…
新しい資格なので言語聴覚士を配置している病院がまだまだ少ないこと(当時の話です)
新しい職種が故に現場の理解が得られにくいこと〜例えば、言語訓練は個室で訓練をやることに対して「部屋にこもって何をやっているかわからない」とか「患者さんと話するだけだから楽な仕事だ」とか言ってる人がいるらしいということ〜
病院によっては、同じリハビリ職なのに理学療法士・作業療法士に比べ給与が低かったりすることもある
…といったネガティブな実情も話してくれました。
「だから変えていく必要があるのです」
とも話してくれました。
実際に言語聴覚士のKさんは、周囲の理解が得られやすいように、仕事の「見える化」を実践していました。
個室にこもりっぱなしはやめて、できるだけ病棟に出かけたり
可能な場合はベッドサイドやデイルームを使ってリハビリを実施したり
といった工夫が見られました。
なによりも、笑顔を絶やさず、穏やかな物腰の言語聴覚士のKさん。
病院各所で自分のファンを作っていきました。
当時は20代前半とまだ若い言語聴覚士のKさんでしたが、社会人として学ぶところが多かったのです。
「言語聴覚士としての僕」の患者様や他のスタッフに対する態度やスタンス。
それは間違いなく、この頃の言語聴覚士のKさんの影響を、多大に受けていることは間違いありません。
もっとも当時は、「言語聴覚士を目指そう!」なんて考えはさらさらありませんでしたが…
そんな言語聴覚士のKさんの言動を目の当たりにした事務職の僕は、心が動かされました。
「仕事を進める上で困ったことがあれば、遠慮なく相談してくださいね。」
と思わず言っていました。
すると、人懐っこい笑みをたたえた言語聴覚士のKさんは
「うわぁ、ありがとうございます。」
と握手を求めてきて、手をしっかり握ってきたのです。
それから、言語聴覚士のKさんは、病院で起きたいろんなことを、事務職の僕に話してくれるようになりました。