駄々をこねても通らない、
我を通したくても通らない、
だが、
暗い暗いトンネルの中にずっといるようで、
抜け道がわからない駄々っ子が、どうしていいかわからないというような
そんな顔をしていた。
ただ項垂れて、
ただ何もする気が起きず、
ただ部屋の片隅に毛布にくるまっている
子供のような。
大きくなって。
何からも逃れてきた息子は、
あんなに小さかったのに、
部屋でどんどん大きくなった。
だらしなくしてきたわけではない。
ちゃんと毎日シャワーを浴び、
若者らしくニキビも気にする、
甘いものを欲しがり、
飲み物はあえてお茶を作った。
誰がどんなアドバイスをしようと、
その時は耳を傾けるのだが、息子の心には響かず。
持っている端末が、
若いものらしく現代らしく、
気持ちの頼りにもなっているのだろう。
そこでどんな検索をし、どんな解釈をしてきたのかは皆無であるが。
今年、受験をすると決めていた息子は、ゼミの試験にも何度か行った。ここからは遠くの地に。
よく行ったと思う。
その為にホテルの予約を取り、バスで何時間も揺られて行って帰ってきた。
天候が悪く帰ってこられなくなった時には私も焦った。
帰りのバスが運行せず、もう一泊しなければならなくなった。
持ち金を少なく持って行った息子も、あの時ばかりは焦ったかもしれない。
何があるのか誰も予想がつかないのだ。
試験の結果を見せてくれと言った。
少しの期待も覆された。
やはり一人きりでの学習では太刀打ちできない程度。
そんな成績でも息子は物凄い高いハードルを選んでしまう。何故かは親の私でも理解不能だ。
そうやって息子はどんどん自分を苦しめていっている。どうにかしてその重荷を、どうにかしてその間違って着ている鎧を脱がしてあげたい。
今、そう思い始めているのではない。
もう、何年も前からそう思っているのだが、
どうしてもどんなにしてもその頑なな鎧は脱げさせてあげる事は出来なかった。
辛いね。
辛いけど、
私には息子の背中を押すことしか出来ない。
頑張って這い上がろうとしたけど、でもやっぱり頑張れない。
そんな時にはどうすればいいのか。
だんまりに似た引きこもりを何日かしてようやく腹が減ったのも限界になり、恐る恐る階下に降りてくる。
音を立てないように静かに食べるものを用意し、又上がっていく。
大寒波で風呂のシャワーも温かい湯にならず、困っていただろう。
綺麗好きな息子にとっては非情な大寒波であった。
日中、誰もいない事を確認し、ようやくシャワーを浴びたらしい。
妹は卒業旅行。
自分は受けるか受けないかの真っ只中ですくんでいる。
どうにもこうにもこちらから突破しなければ息子はこの時期を毛布にくるまってやり過ごそうとしている。
それでは駄目だ。
それでは毎回のことである。
私も勇気を出して挑まねば。
でも、それで息子の気持ちをもっと暗闇に追いやるようなことになってしまうのではないか。
私の不安はそこだ。
旦那は違う。
自信がないのは当たり前。
自信なんてのは後からついてくるもんだ、
それは言われて私もそう思った。
が、
息子の場合はどうだろう。
あんなに縮こまっている息子に、私は…
どの視点で考えればいいのかわからなくなってきている。
今の時点で何からも逃げたい息子の気持ちを、どう汲み取ればいいのか。
そして時が経ち、春になり夏になり、
又同じ繰り返しをのらりくらりとするのをよしとできないのであれば、心を鬼にして。
でも…というような考えばかり。
どうすれば正当なのか、私がした事は間違いだったのではないか、無理強いを敷いてしまったのではないか。
不安な気持ちが、あの子供のような、
顔を腫らして泣いたような、そんな様子の息子に思えてしまう。
図体は大きくなったが、まるで子供なあの様子。
まだ世間は怖いんだ、まだここにこのままいたいんだ。
そう言っているかのよう。