文化祭が終わり、寒さが増し始めた晩秋
“進路”というものが一気に現実となった
卒業後…どうしよう…
過去のトラウマから無理言って私立の進学校に通っているけど、お姉ちゃんの助けがないと卒業すら危うい
おおよその生徒は付属の大学にエスカレーターで上がる
光啓も?
彼と一緒に大学に通ってみたい
けど……
ただでさえ母子家庭のうちはお母さんの苦労が半端ない…
ましてや大学なんて今までとは比べ物にならないくらいお金がかかる…
早く働いてお母さんを楽にしてあげたい…
けど…
1枚の「進路希望」と書かれた紙と睨めっこする
『紗矢香?』
「!…お帰り、早かったんだね」
『たまには早くあがりなさいって部長がね…進路希望調査票…
そっか、遥香の時以来だから忘れてたわ…紗矢香ももうそんな時期なのね…』
「私、働こうか?」
『……ふふっ…思ってもない事言っちゃって、お母さんに気遣ってるんでしょ?』
「………」
『大丈夫よ、何のために進学校通わせてると思ってるの(笑)
紗矢香の行きたい所行っていいのよ?』
「でも……」
『お母さんがまた仕事量増やすと思ってんでしょ?』
「………コクンッ」
『ほんとに大丈夫よ…遥香が助けてくれてたぶん貯金だって出来てるし、あんたの学資保険だってあるんだから心配しなくていいのよ…』
「ほん…とに?…」
『だから、ちぃちゃんと日高くんと楽しく大学通いなさいな(^^)』
「お母さん……」
『さ、ご飯しないとね。先にお風呂入っちゃいなさい』
「うん…」
チャプンッ
お気に入りの入浴剤を入れて体を温める
「大学かぁ…」
行くからには何か目的をもたないと、だよね…
私は何がしたいんだろう…
色々学部あるもんね…
うちの付属ならテスト受けたら上がれるし…
やりたい事はとりあえず入ってから決めても良さそうだけど…
考えてみれば必ず付属に上がらないといけないわけじゃないんだよね…
お姉ちゃん……
7歳上のお姉ちゃんは、小中高と公立の学校に通って、美容室でバイトしながら通信で学校に通って美容師の免許をとった
そんな道もある…
実際美容師してるお姉ちゃんを見た時、最高にかっこいいと思った
それにお店のみんなも親切で…
とりあえず明日提出する時は付属に進学にしておこうかな…
いくらでも変更はできるし、もう少し考えよう…
お母さんはああ言ってくれてるけど、かかる費用は少ないに越したことはないはず…
お姉ちゃんに相談…してみようかな…
『紗矢香~そろそろ出れる?ご飯できたよ~』
「はーい、今出るね~」
光啓は……どうするのかな?