これまで福島県が怪獣に襲われるということは、ほとんどありませんでした。
「大怪獣バラン」(58)で、バランが岩手県から成田空港に行く途中、たぶん福島県上空を通ったはずなんですが……そんなシーンが描かれることありませんでした。
「キングコング対ゴジラ」(62)で、宮城県松島から上陸したゴジラが那須高原でキングコングと対決しています。途中で東北本線の電車急行つがるを壊しているので、福島県の中通りを通っているのはたしかなはずなんですが……素通りされました。
「ゴジラVSメカゴジラ」(93)で、ラドンが仙台駅を壊したあと、出来たばかりのお台場のレインボーブリッジを壊す際にも、福島県上空を通っていったはずなのに……スルーされました。
「ガメラ2 レギオン襲来」(96)で、仙台市を壊滅させたレギオンが栃木県の足利市に行く途中、福島県上空を横切ったはずなのですが……またもや華麗にスルーされています。
このようにみんな怪獣たちは福島県を壊さないで通って行きます。同じ東北の仙台市が何度も壊されているのと対照的。なんかすごく悔しい。
怪獣は皇居を壊さない、原爆ドームを壊さない、という説は聞いたことがありますが、福島県もふしぎに壊していかないんですよね。通り過ぎるだけ。
でもまあ、空を飛ぶ怪獣はわかるんです。バランの飛翔速度はマッハ1.5(時速1834キロ)、平成ラドンはマッハ3(時速3673キロ)、レギオン(亜生体)マッハ1(時速1224キロ)。たった数分で到着しちゃうので途中で休む必要がないのでしょう。
ですが、キンゴジのゴジラは自衛隊員の報告によると、時速50キロで南下していたらしいのです。福島県の南北の長さは133キロ。通過するのに2時間半くらい時間をかけて通ったはず。どこかの都市を壊さないで通るとはちょっと考えずらい。
円谷英二監督の出身地の福島県を破壊するのは恐れ多いと思ったので、こっそり人の住まない山を通ったのでしょうか。
……とこれまでずっと思っておりました。
しかし、ついに福島県を壊している怪獣を発見しました。
寅さんでおなじみ松竹の作った「宇宙大怪獣ギララ」(67)のギララです。
エネルギーを求めて歩くギララが東京を壊したあとに北上していき猪苗代第一発電所を破壊します。
これって会津若松市河東町にある水力発電所のことでしょう。はじめて東北から東京へ電気を送電した歴史的に価値がある水力発電所。実物の発電所と映画に描かれた発電所は、ちょっと風景ちがう気がするけど。
せっかくならついでにちょっと会津若松市内に寄って、65年に再建されたばかりの鶴ケ城(若松城)を壊してくれれば良かったのに。
水力発電所を破壊した後、ギララは新たにエネルギーを求めて、太平洋側に行き原子力発電所を破壊します。いま世界で有名な福島原発!?と思ったのですが、原子力研究所も壊しているところをみると、どうやらお隣の茨城県の東海村みたいです。
映画制作当時、まだ福島第一原発できていなかったからでしょうね。ちょっと残念。
ですがまあ、これで福島県も怪獣に壊されたことのある都道府県の仲間入り。特撮ファンとして自慢できます。
ちなみに……このギララの映画の監修は、SF作家の光瀬龍さん。
「百億の昼と千億の夜」、「夕映え作戦」、「ロン先生の虫眼鏡」などの作品が有名な方。
ギララの前半が懐かしい風景のSFっぽいのはそのせいでしょうか。ちなみに同じ年に東映が制作した特撮テレビ番組「キャプテンウルトラ」の監修もしております。
たしかこのころ、日本のSF作家たちが東海村の原子力発電所に見学し行ったんですよね。
光瀬さんは「たかが原爆の一つも作れねぇのか」と言って職員を怒らせて、「そんなの簡単に作ってみせますよ」と言わせたらしいです。今なら双方、大問題でしょうねぇ。