ある日のこと。
そういえば名前を聞いていなかった。
「そういえば自己紹介が遅れたわ。」
階段の中で、キョロッとした目が、クリンとした。
「わたしのこと知ってる?」
『みたところ・・・、大学生。制服が無いみたいだから。
でももしかして女子高生?』
当時高校生だった わたし。
周囲の人達からいわれる“大人っぽい”が、
窮屈に感じていた。
「うん。女子高生♪この前16歳を迎えたのよ。」
『それはおめでとう。僕は20代で郵便配達をやっている。
これからよろしくね。』
自宅の古い階段の、4~5段目に
匍匐前進状態で入った彼。
赤いトレンチコートを着ていて、郵便配達の砂利声をしている。
◇