ある日のこと。

まだ園児だったか、小学生低学年か、
人間として未熟な時に、
わたしは 体験した。

いつものように、
大人の気配がなかった朝の2階。

祖父の書斎。

横に広く、高さもあった頑丈な机は、
今と変わらず木で作られていた。

祖父と同様、
魔法のようなあの偉大さといったら
目に焼き付いて忘れられない。

こんにち、わたしの部屋に在る その机が、
あの日の机と同じものかと思うと
自分の身長が高くなっただけだったのか?と
とても残念でならない。

その、
まるで広大な何かが生まれて行くような
魔法の性格を備えた木の机の上で、
珍しく開かれっぱなしの本があった。


あの日、わたしは視てしまった。