ある日のこと。


 汗っかきの夏休み、エプロンと三角巾を身につけて、

 竹箒を持っていた夕方。


  彼は話しかけてきた。

  

     『 そうそう。君にだよ。お嬢さん。』

  
    

  あたりを確認したが、教職員の姿はなかった。


 目の前に、  

 古木が聳え立つ道を掃除していた わたしは、

 

この声の主を、“我が目で”、さがした。


すると相手の穏やかな心持が、空気感染して

わたしのところに やってきた。


 『お嬢さん。熱心にやっているね。

  私と話をしよう。掃除は、好きかい?』


       わたしは心の中で、古木を黙認した。