ーまじかぁ。やばいだろ、その顔は。-


「わかったよ。もう少しいるからそんな顔するな。」

「よかったぁー。ふふふ~。」

ーおいおい、その屈託ない笑顔もいいなぁー。

うん!?何考えてるんだ俺は-


「こーき、こっち来てよ」

亀にシャワーとバスロープをかりて、ソファーでうとうとしていた俺に亀が呼びかける。

「なんで?」

「そっちじゃ、寝づらいでしょ?」

ーま、それもそうだけどーっておい!

「いいよ。こっちで。ほら俺、ガレージでも寝れるし。それより亀、気分はどうだ?」

「だいぶ、落ち着いた。でもね…」

「でも、なんだ?」

「なんでもない。シャワー、浴びてくるわ」

ーなんだったんだ?今のー

気になりながらも、また眠りに落ちていった。


「ん?どうした?亀か?」

すぐ隣に誰かがいる気配を感じ、目を覚ます。

そこには寂しい表情の亀が、俺をのぞきこんでいた。

ー綺麗だなぁー。その顔ー

「どうしたの?亀。何かあったのか?」

なにも言わない亀が、突然静かに泣きだした。

ーえっ!?-

「かかか、亀。何で泣いてるの!」

同じ歳なのに、末っ子みたいにかわいい亀に泣かれるとまじで心配だ。

「こーきーぃーー。」

「あー泣くな泣くな。」

まるで自分の子供をあやすように、抱きしめて頭をなででやる。

亀のいつもの甘い香りが漂う。

「なんかね、舞台が終わってプレッシャーから解放されたのに妙にさみしくて。苦しかったけど、楽しくもあって…もう次の仕事も来てるから、その事を考えると不安もあって…あはは、何年この仕事してるんだったことだよね。」


亀はいつもそうだ。どんなむちゃ振りされても、ものすごい根性でやりこなしてしまう。本当は不安で押しつぶされそうなのに、その気持ちすら隠してちゃんと“アイドル”を貫いてしまえる。


「亀は偉いな。本当すごいと思うよ。」

抱きしめた腕に、少し力を入れて頭をなででいく。

亀は大人しく俺の腕に抱きしめられて、少しづつ泣きやみつつあった。

ーやべぇ、まじでかわいいー

とその瞬間、

「ん…?こーき?なっ…んんん…」

亀の唇を塞いでいた。