今日はビスケットの日 | SuperJuniorウネ小説さくやのブログ

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ウネ多め
傷んだお魚が大好物です( ´艸`)

ビスケット、好き?

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ポケットの中には、ビスケットがひとつ----





「…あ、兄さん?」

誰もいない空間に、ヒョクチェがやさしく笑い掛ける。
目の前にいないのに----、耳にあてたスマホの向こうの相手には、そんな風に笑う。

ヒョクチェが兄さんを想っていることは知っていたし、オレとのことは単なる暇潰しなのも知っていたし、オレはその状況に満足している----つもりでいた。


ポケットの中には、ビスケットがひとつ----、欲張ったりしない。






----それでも。

オレの髪を耳に掛ける指先とか、頬をなぞる手のひらとか、そーいうの全部、兄さんのための仕草なんだなぁって、思い出したりするときは。

「…大丈夫?」

まるで懺悔するみたいに親友に愚痴ってしまうのは----、シウォンが神父さまみたいに笑うのが、悪い。

暇潰しだからって、ヒョクチェがオレを雑に扱うのが、悪い----。 

「ヒョクチェとちゃんと話してごらんよ」

シウォンがやっぱり、神父さまみたいに笑う。

----でもさ、シウォン…

オレは不思議なポケットをもってない。

ポケットを叩いたら、オレのビスケットは砕けるだけ----。




----そして。

オレはその日も曲を作っていて。
コードを確認するのに、鍵盤に指を置いた----、ところで。

「…やめろって」

背中から無遠慮に躰をまさぐってくる手に告げる。

「いいじゃん」

べつにスケジュールがあって作っている曲じゃなかったから。
そのまま振り向いて、ヒョクチェのしたいままキスをしても----よかったんだけど。

「いやだ」

なんだかそのときは、むきになってしまった。

おまえの曲を----、作ってたんだ。

歌い出しはアカペラで、意外とおまえが得意なミディアムで、おまえが一番うまく歌える音域で----、いつかヒョクチェが歌う曲を、作ってたんだ。

「なんだよ、機嫌わりぃなぁ…」

背中から、ヒョクチェの腕が強引に抱き締めてくる。
オレの言葉を無視して----、オレの気持ちを無視して。

「いやだったらっ!」

つい、大きな声が出た。
そのままの、勢いで----、

「兄さんにも…、こんな風にするのかよ!」

オレはポケットを、叩いてしまった----。






羞恥か----、憤怒か。
ヒョクチェの色白の頬が朱に染まるのをボンヤリと見送って。

オレのポケットの中には、粉々のビスケットだけが残った。


幸か不幸か、特に仕事もかぶってなくて。
なんというか、平穏な数日が過ぎた。

このまま会わなければ、オレの恋心もなかったことにならないか----なんて、ボンヤリと考える。

ヒョクチェは案外----、モテるから。
きっと暇潰しには事欠かないだろう。

----それなのに。

「…よぉ」

姿が見えなければ、平穏でいられるのに。
微妙に絶妙なタイミングで、ヒョクチェに会ってしまった。

暇潰しならヨソに行ってほしい。
なんにもなかったみたいに笑わないでほしい。

その、どちらも言えずに。

どーせ。
そろそろ持て余した熱を、オレで処理したいだけのくせに、ヒョクチェが"愛おしい"みたいな仕種で、オレの頬に触れる。

このまま----、オレが目をつぶれば。

なしくずしにまた、元通りになるんだろう。
ポケットの中のビスケットは、粉々のまま。

----それでも、いいや…

そう思って。
鼻先が触れるほどヒョクチェの顔が近づいたのを確かめて、まぶたを閉じる----刹那、

「なぁ…、好きだって言えば、いいの?」

唇が触れる手前で、ささやいて----、

「おまえとっくに、知ってると思ってた…。」

肩にまわした腕で体こと、ヒョクチェがオレを抱き寄せた----。




ポケットの中に、ビスケットがふたつ----。