
飼い主ママはボクのヘソを探す。
『あんたのママはどんななんだろうね』
いつもヘソを撫でながら飼い主ママは言う。
顔も覚えてない母犬のことを言われても
ボクは困る。寂しいとかそんな感情はないけど
なんとなく困る。
一度だけ、飼い主ママがボクに言ったことがある。
『私が14歳の時に、お母さんは病気で天国に行っちゃったんだけど、あの世で見守ってくれてるなんて、そんなのおとぎ話だね』
飼い主ママは、珍しく酔っている様子で
また話し始める。
『とっくに昔の話だから、寂しいわけでもないけどさ。
24年も前の事だしね。
居ないことに慣れちゃって、
最初から居なかったような感覚にまでなっちゃって
そんな感覚にゾッとする時あるわ。
とにかくね、自分が造られた母体?
故郷?自分のルーツ?
言葉で説明できないけど、それらがとても自分には必要な時があるの。
それらが、自分に有った。
確かに有った。
それを証明できるのはね、
ヘソ。臍なのよ。』
それから、飼い主ママはボクのへそを撫でて
いつも言う。
『アンタもヘソがあってよかったねー』
ボクはいつも、ちょっと困る。
ボクは寂しくなんかないよ。別れの日だって記憶にないんだからね。
飼い主ママが寂しいんじゃないかって、
気づいてしまうから
困る。

充分過ぎるほど大人の飼い主ママなのに。
いい歳過ぎてるのに。
笑えなくて、困る。笑