二浪目に突入したが、
僕は同時に、その唯一受かった学校に籍を置いた。

僕はどうしても嫌だったのだが、
「二浪する条件」として「学校に籍を置くこと」を強要されてしまったからだ。

仕方なく入学した。
だが今考えると、入学していなかったら、僕は三浪していただろう。

その大学には「相談室」というのがあり、
カウンセラーの先生が相談を聞いてくれるのだが、

4月。僕は「退学したい」と相談に行った。
親には内緒で、勝手に退学するつもりだった。

カウンセラーの先生に会い、事の全てを話したとき、僕は号泣してしまった。

どれだけ泣いたか覚えていない。
「僕にとって、大学受験は中学受験のリベンジだということ」
「幼稚園の頃から憧れていた開成中学に入れなかった事を今でも引きずっていること」
「それが親に理解されないこと」

僕は中学受験に失敗している。
大学受験で、僕を笑った上のクラスの連中を見返したかった。
開成高の生徒を倒したかった。

だからどうしても、
日本最高の偏差値の大学に入りたかった。

カウンセリング室で、いままで蓄積していた想いが抑え切れずに爆発してしまった。

最初のカウンセリングでは、先生は頷いていただけだった。

二浪目の勉強は大幅に見直した。
参考書のランクを数段下げて、繰り返し繰り返し、

朝やった内容を夜に
夜やった内容は朝に

とにかく同じ問題を繰り返し解いた。

ただ、睡眠時間は変わらなかった。
1科目あたりの時間を割くことは出来ず、
削ることが出来なかったからだ。

それに勉強は「質より量」だと小学校の時通っていた塾で知っていたからだ。

カウンセラーの先生とは月1で会うようになった。

勉強のこと,睡眠時間の事を話すと、
「睡眠時間は最低7時間。
12時前に寝た方がいい」とアドバイスされた。

何でも、現役高3と19才とでは、
年齢は近くても、体力は落ちていて、
中2の時にしていた無茶な勉強でも体がもっていたのは、
体力が今とは違うから。
6時間睡眠だったり、奇数単位の睡眠時間をオススメする媒体もあるが、
あれは18才までの話らしいです。

最初に聞いたとき、
「この人は受験をわかってない」と思った。

でも、話を聞いているうちに、それが間違いだということはすぐに分かった。

この先生は、僕と同じような人達を何人も捌いていて、
先生自信の大学受験時代の話も聞いたからだ。

それから、睡眠時間をなるべく多く取るようにした。
7時間が理想なのだが、どんなに削っても、6時間。
ほとんど5時間30分の睡眠をとった。

だが、結果はすぐに着いて来た。
これまでに経験したことのないスピードで成績が昇竜のように伸びていった。

夏休み期間のラッシュはホントに凄かった。

今まで、忘れているんじゃないかと不安になり、
そこまで戻って復習していたが、
そんなこと、この1年ではほとんど無い。

問題を解くとき、
かなり前にやった内容が浮かび上がり、
他の知識と網を張るように連結していくのが手に取るように分かった。

平常時では絶対に思い出せ無いであろう知識が、
集中して問題に向かった時、
引き出しが開くようになった。

先生にこの事を話したところ、
睡眠中に記憶が整理されていって、忘れていても、いざという時引き出せるようになる。
その引き出しを開ける鍵が「睡眠」だという。

身体も楽になり、
心にゆとりが持てるようになった。
毎日切羽詰まっていたのが嘘のように、
のびのびと勉強することが出来た。

勉強が楽しいと感じられたのが、
ホントに久しぶりだった。

「成績は上がるもの」だというのも、
正直ずっと長いこと忘れていたが、
久しぶりに思い出した。
心にゆとりが持てるようになったので、
朝の特撮番組もまた見始めた。

ゴーオン,キバ…
もっと前から見たかった…