あたしは19歳のとき、アメリカに滞在していた。

そのときに知り合ったのが元配偶者だった。

日本に帰国してすぐにあの人から連絡があって…。

あの人は某地方都市出身で就職のために上京していた。

最初、あたしは東京になれないあの人が寂しいのかと思って、ショッピングや東京案内?に付き合った。

その後、あの人とお付き合いを始めた。

あの人は大手企業のサラリーマン、あたしはまだ大学生だった。


大学生から見た社会人というモノは、やはりオトナにみえた。


やがて留学期間が終わって帰国し、なんと!あの人と同じ会社に入社してしまったのだ!

どうせ同じ職場にはならないだろうし、なんといっても内定を頂いた企業の中では、その会社は一番条件が良かったからだ。

ほとんどの新卒女子は支社に配属になったがあたしはあの人を同じ本社勤務を命じられた。


社内でほとんどあの人と顔を合わすことなんて滅多になかったから、お互いに極秘で交際を続けた。

知り合って6年後、電車がホームに滑り込むのが当たり前のように、何の躊躇もなくあの人と結婚した。

あたしは25歳になっていた。


今まで走り続けたあたしにとって結婚生活はまるで世界が違うような環境だったし、あの人が会社に行くために存在するような感じがした。

仲が悪かったワケではない。むしろ仲が良いと周りから思われていた。

あたしは本来、依存症?っぽくって、あの人と過ごす時間が大切だった。

結婚後、あの人が変わってしまったワケではないと思う。

ただ、あの人はあたしが何を思い、何を考えていたのかを知るという気持ちよりも「仕事」で精一杯だったと思う。

夜、9時を過ぎても10時を過ぎてもあの人は帰ってこなかった。


あたしは寂しかったのだ。


あの人は穏やかだったし、常識的だったと思う。

もちろん、DVや大きな声を出したりするような人ではなかった。

でも何かが足りなかった。


あの人の帰宅だけを待つ生活を持て余し、結婚ってなんだろう?と思った。あの人はあたしを自由にさせてくれた。

バイトや外出も自由だった。

それはあの人がおおらかとかそういうのではなかったと思う。

「ねぇ、何時に帰ってくるの?」と尋ねられるのが煩わしかったのだと思う。

バイトをしたり、習い事をしたりしても愉しくなった。

それはあたしはあの人と一緒の時間を過ごしたかったからだ。

深夜近くに帰宅し、食事やお風呂など生活にとって必要なコトを済ませるとすぐにベッドに入ってしまった。


そんな生活はあたしにとって相当なストレスだったと思う。

やがて結婚後1年もしないうちにあたしは少しずつストレスに押しつぶされていった。


「パニック症候群」


当時はそんな言葉すらなくて、あたしは病院を転々とした。

電車に乗れない、外出できない等の症状が出てきた。


このやっかいな病気は今でもあたしと共存している。

あたしはいつも思っている。

「My life is not so bad.

(あたしの人生は思っているほどそんなに悪いモノじゃない。)」って…。

そしてあたしの身に起こることは大抵の場合、予測が可能だった。

だってあたしが生れ落ちたときから歩んできた道は両親が(父が…の方が強いかも?)道標を立ててくれていたから。

逸脱することなく、ごくごくフツーに生きていくことが出来ると信じていた。

父も母も人として何が一番タイセツなのかを力説していた。

其れは「お金(Money)」じゃない、「人と人との繋がり」だった。

人に迷惑をかけない生き方、人に愛される生き方などだ。


屈折することなく育ってこられたと思う。


しかし教育熱心すぎる両親だったため、遊びたい盛りの10代の前半はいつも家庭教師が傍にいるか、電車を乗り継いで各地から集まってきた子供たちが学ぶ「塾」というところにいた。

そして常に両親の期待に応える程度の学力はあったと思う。


特にネコを被る必要もなく、素直に素直に…どんなコトにも素直に反応し、学業も両親の期待に応えていたと思う。

自分で言うのも気が引けるが(かなり引いちゃうよ!)、見た目も悪くない、むしろ大人たちから「可愛い子」と言われていた。(恥ずかしいねぇ)


所謂、「いい子」だったと思う。


たった一人の弟がぼそっと言ったコトがあった。

「お姉ちゃんは顔もまあまあだし、頭もイイし…。どうして僕は違うんだろう?」と…。

其の5歳年下の弟は今ではあたしにとって最上の理解者であって、最上の相談相手であって…。飾らない真実の言葉であたしの悪いところを痛烈に批判し、指摘してくれる大人になった。


あたしが離婚を決意してから、思いもよらなかった数々の災難や思いもよらなかった人生の選択肢を一番良く知っていて、客観的に見ていてくれる。

子供の頃、弟が羨望していた姉は、蓋を開けてみれば、ただの世間知らずなオトナだということも弟は熟知しているだろう。


今、あたしは生まれて初めて「妊娠」というモノを体験している。

あたしがお腹にいる子に逢う前にあたしが歩んできた道をあたしが納得し、受け入れられるよう、此処に認めようと思う。