今年度に入って読書熱が再熱してるのですが、主に図書館から借りてるので内容諸々をパッと思い出せないことがままありそうな気ががが
ので、ここらで備忘録に読書感想文でも書いておこうかと思います。
あとアウトプットの練習としても。
今回読んだのは『虐殺器官』。伊藤計劃さんの作品で、ベストSF2007に選ばれてます。
本屋かどこかで見かけた時から読んでみたいとは思ってたものの、結局こんな遅くなってしまいました。鈍足ッ…
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舞台は今より少し未来の21世紀。サラエボに落とされた核爆弾を皮切りに世界中でテロや戦争が頻発するようになった世界。
数十年を費やして先進国のテロへの脅威は減ったものの、次は途上国の内紛・大量虐殺が後を絶たないように。
この事態を打破するため、アメリカは軍の特殊部隊による暗殺を行うようになる。
主人公のクラヴィス・シェパードは暗殺を行う特殊部隊に所属する大尉であり、途上国の虐殺との関連が疑われるジョン・ポールの暗殺を命じられるところから物語が始まる。
一度は失敗に終わったジョンの暗殺を成功させるため、主人公はジョンと交際していた経歴のあるルツィア・シュクロウプに身分を隠して接近する。
しかし、スパイとして接触を重ねるうちに主人公は彼女へ好意を抱くようになる。
ある時ルツィアに連れられてクラブへ行くが、その店のオーナーはジョンの協力者であり、帰路を襲われて拘束されてしまう。
そこで初めて邂逅したジョン・ポールの口から語られたのは、「虐殺には『文法』がある」ということだったーーー。
物語の中のキーワードとして「母親の死」がありますが、ああいった問題は近い将来必ず出てくるだろうなーと思います。
脳の機能が解明されるに連れて曖昧になる生と死の境界。
分かれば分かるほど分からなくなる、という矛盾した表現が皮肉にも一番しっくりと来そうなお話。
脳死の診断ができなくなったら今より遥かに多くの人が命の天秤の前に立ち尽くさなきゃならないのでしょうね。重い重い。
そして物語の肝となる『虐殺の文法』。この話はすごく興味深かったです。
言語を生み出す器官。僕も言語は後天的に習得するものと無意識に思ってましたが…
ちょっと調べてみたらそれっぽい記述が結構出てくる。これって結構メジャーな学説なのかな?
気が向いたらいつか深く調べます。気が向いたら。
主人公に関しては、なんというか…ある意味では軍人らしからぬ弱さ、というか、脆さ、というか…そんなものを感じました。
作中の「ぜんぜん大人になれていない」という言葉からすると、これは少年的な不安定さのようなもの?
最後にはジョンの用いた虐殺の文法をアメリカで奏で、混沌の渦に巻き込んだのですが、
「けれど、ここ以外の場所は静かだろうな、と思うと、すこし気持ちがやわらいだ。」
これも、果たして本当の気持なのかな?と思ってしまいます。
混沌の最中、死人の山が築かれるアメリカは主人公が見ていた、母親の存在を強く感じさせる「死者の国」を髣髴とさせる。
ほんとうは、母親の伝記を信じたくなかったのでは?
ほんとうは、母親が近くに存在するような世界にいたかっただけなのでは?
と、勘ぐってしまいました。
これも狙っての終わり方なのかと思うと、してやられた!となります。ううむ
惜しむらくは2009年に著者が他界されていることです。
他の作品どんなの出してるのかなーと思ってwiki見たらその記述が…残念です
そして痛覚マスキングとかイントルードポッドとかがメタルギア感あるなあとも思っていたら、著者が小島さんの大ファンだったということでまたびっくり。
まあ、「近未来」と「戦争」のキーワードが揃えば多少なり似通った部分は出るもんかな?
とりあえずメタルギアのノベライズは機会を見つけて読んでおこうと思います。
色々と書きましたが、登場人物もさほど多くなく読みやすい小説なんじゃないかと思います。
それだけに新刊がもう出ない、というのが非常に残念…
とにかく今出てる分は読みたい、と感じました。
