【第155話あらすじ】「なつよ、あっぱれ十勝晴れ(155)」◆最終週◆

十勝が冷害水害に見舞われた昭和50年。柴田家の居間では剛男(藤木直人)と照男(清原翔)が古い牛舎を建て替え、新しい設備を導入しようと話していた。多額の借金をして設備投資しようとする照男に対し、泰樹(草刈正雄)はやりたいようにすればいいと言う。その晩、十勝には激しい落雷の音が響き渡る。翌朝なつ(広瀬すず)が起きると停電になっていた。牛の心配する泰樹は若返ったように声を張り、指示をしていくが

Yahoo!テレビより引用)

昭和50年(1975年)――8月。十勝は冷害と水害に襲われました。

柴田家では、照男と剛男が牛舎の今後について話し合っています。じいちゃんはもう自分に任せた、と言う照男。夕見子は今のバケットミルカーではいけないのか?  と問いかけます。

バケットを運ぶ手間が省けると、照男はメリットを説くのですが、本作の会話は双方向性があります。兄である照男が、妹の夕見子に対して、黙っていろとは言いません。口塞ぎはしない。

「したけど……」

父・剛男の懸念は、費用です。組合からも補助金を出すという名目はあるからには、断れない。むしろ推奨している。柴田牧場が先頭に立つことで、他の牧場も続く。メリットは十分にあるのです。 照男は、自分たちが率先すべきだと使命感を抱いています。

剛男は、膨れ上がる借金が不安ではある。

照男は、だからこそ規模を拡張していくと言う。

照男の開拓は、じいちゃんの牧場を十勝一、日本一にすること――そう意欲を燃やしています。

ここで、イッキュウさんが気になってこう言い出します。

「規模を拡大すると、終わりが見えなくなるのでは?」

「イッキュウさん……」

なつがやんわりと抑えます。

彼等の話を聞いていた泰樹は、全てを任せ切っています。

「照男が開拓すりゃいい」

「わかった!」

これも祖父と孫の性格の違いはあるべな。泰樹は周囲から「流石は柴田さんだべ」と一目置かれている。カリスマ性もリーダーシップもある。

とはいえ、集団を率いたり、支配することにあまり興味がなさそうに思える。

泰樹が飲み会に参加する場面って、本作でありましたか?部屋で饅頭を食べたり、雪月でうれしそうに甘いものを食べるくらいでしたね。

社交が苦手なのでしょう。シャイなんだねキラキラ

 

その晩、嵐がやって来ます。

朝方、目を覚ました泰樹が、電気の紐を何度も引っ張ります。

つかない……。

彼は電気普及前を知っているためか、それがなくなること、依存しすぎてあることへの警戒心があったのでしょう。

時刻は朝の7時。しかし、停電は続いています。ミルカーは動かない。バルククーラーも。

そこへ皆が起きて来ます。

なつたちの「おはよう」に対し、夕見子はこうです。

「なしたのさ、みんなで!」

御行儀が悪いわけではありませんね。彼女なりに異変を察知して、警戒しているのでしょう。策士として有能です。

皆の顔に焦りが見えます。搾乳しなければ、乳房が張ってしまう。ここで照男が昼まで搾乳しなくても大丈夫だとは言いますが……

目は不安げですし、実体験ではなく伝聞なのです。つまり、確信しているわけではない。発電機を借りれるかどうか電話をするもののダメです。

そもそも停電はエリア単位で発生します。発電機がある家だって貸せるとも思えない。

ここで、泰樹が叫びます。

「牛が鳴いてるべ! すぐ牛舎に行け! 牛をほっとくな!」

牛は信じてくれている。だから乳を出してくれる。

その牛を裏切っていいのか?

「牛を助けるんじゃ! こちらの都合で待たせるな、乳を搾れ!」

はじめこそ、錯乱したのかと見ていた周囲ですが、泰樹の悲痛な叫びが伝わりました。

なつは千遥に子供の世話を頼み、牛飼いの顔に戻ります。

「乳房炎になるべさ!」

◆牛の乳房炎について◆

 

皆で牛を助ける中、剛男は農協に行くと断ります。

彼も農家を助けたいのです。対策を練るのならば、彼は頼りになります。頼りないと自嘲気味ではありますが、やる時はやる。それが剛男です。

「みんな行くべ! 着替えてこい!」

皆で牛舎に向かいました。先にいた砂良と菊介に合流。菊介は分娩直後の牛から搾っていたと言います。

なつは乳房炎になった牛も優先したほうがいいと知恵を出す。

「なつ、ついてこい!」

泰樹のあとをなつが追いかけます。引退していた悠吉もやって来ました。さすがだ〜!

夕見子とイッキュウさんも手伝おうとします。教えてくれと頼まれて、泰樹は「見て覚えろ」と答えるしかありません。夕見子は、富士子に教えられつつ搾ることに。

一方でイッキュウさんは、なつから集乳缶を運んで欲しいと言われて従います。

はい、これも大事なんです!

【イッキュウさんは、どうして搾乳してはいけないのか?】

・不器用。非効率だし、牛にも不安感を与えかねない

・彼は危険性への認識が鈍い。そして牛は、なまら危険!

・行動が唐突で、いきなり立ち上がったりしかねない

カチンコ一つ鳴らせないのか!と怒鳴られた、イッキュウ青年。

イッキュウさんと臆病な牛は、最悪の組み合わせです!

夫のプライドだの、男を立てるだのなんだの考える前に、止めないと。最悪大事故、死傷の危険性もあるでしょう。

 

搾乳をクリアしても問題は残ります。バルククーラーで冷やせないと、出荷できないのです。

照男は、富士子と砂良に「アイス屋を壊していいか?」と聞いています。

水槽を使って冷やすためです。 緊急事態の中で、照男はきちんと彼女らに断っている。所詮、おばさんたちの小遣い稼ぎだと小馬鹿にはしてはいない。

「地平、井戸水くんでこい!」

息子にも、そう指示を飛ばして作業を急ぐ照男は、今やすっかり頼り甲斐のある牧場主になりました。

ここで搾る中、夕見子がニンマリとしています。

「なんだ、私にも才能あるんでないの」

この非常時に何を言っているのか、となりそうですが。夕見子なのでそこは仕方ない。

イッキュウさんは、不器用だから若干こぼしながらも、牛乳を集めています。

搾り終えた牛乳をミルカーに入れて、水槽で冷やす。

そこまでが限界です。

「牛は助かった……」

乳房炎にはならないはず。と、一仕事終えて、皆ほっとしています。

しかし、照男はふっと自嘲気味です。

照男は力なく言葉にします。

「俺なんかダメだ……」

「そんなことはない。よくやった」

泰樹はここから、叱咤激励のような、彼自身の生き方のような、そんな言葉を告げるのです。

「一番大事なことは、働くことでもない。稼ぐことでもない。牛と生きることだ。よくやった、ご苦労さん」

これを聞いて、なつは笑みを浮かべます。じいちゃんが好きで、その人生から開拓者魂を伝えられたから。

そんな笑みです。

ただ、照男の胸には何かが刺さったことは考えられます。

翌日、なつと泰樹は天陽の畑へ。

靖枝が出迎えます。

「大変でしたね」

「はい……」

彼女は子供たちと、荒れ果てた畑を復旧しておりました。

山田正治とタミは、家の片付けをしています。

アトリエで天陽のあの馬の絵が無事であるのを見て、彼らは喜びの声をあげます。

「よかった! なんとか守れて!」

「天陽を!」

我が子を抱きしめるように、馬の絵を撫でる両親。彼はまだここにいるのです。

靖枝は畑の現状を見せています。

「畑はこの通り。でも芋は残ってます」

水浸しで、売り物にはならない。けれども、デンプンには使えるかもしれない。そう見通しを語るのです。

「天陽が守ってくれた……」

「はい」

靖枝は泰樹の言葉に同意します。

「わしらも手伝う」

「なつさん、ありがとう」

「なんも」

「陽ちゃんも喜んでいます」

靖枝の言葉に、なつはあの道産子の言葉で返します。

「あの、なつさん。なっちゃんって呼んでいい?」

「当たり前だべさ、やっちゃん」

「みんなでがんばるべ!」

二人はそう言葉を交わします。天陽が二人の友情を築き上げてゆくのかもしれませんね。

天陽の、土に勝ちたい思い。それを受け止めて、泰樹が耕したこの畑。

荒地が開拓され、美しき里の風景になりました。その畑で、泰樹、なつ、天陽の家族が働いています。あのとき泰樹が贈った農耕馬。畑を耕す馬を、天陽は描き続けました。

なつも馬をアニメにしました。

天陽の馬への想いは、『大草原の少女ソラ』のレイにも引き継がれています・・・きっと。

あの開拓から、始まったものが広がり、繋がってゆきます。

"この里を、美しき我が里の風景に変えるのじゃ!"

やっと会えた。そう喜びを語るソラに、会えなかったけれどずっと一緒にいたと語ります。だからこそ、夢を叶えたのだと。

『なつよ、また大事なものを受け継いだな――』

そう父ナレが語る中、いよいよ明日は最終回です。

次回最終回に続く・・