【第154話あらすじ】「なつよ、千遥よ、咲太郎よ(154)」◆最終週◆ 「大草原の少女ソラ」が終わり、なつ(広瀬すず)は約束通り、優(増田光桜)と千遥(清原果耶)と千夏(粟野咲莉)を連れて、坂場(中川大志)とともに夏の十勝を訪れる。牛の乳搾りをやりたがっていた子供たちにやり方を教えるなつ。久々に柴田家の食卓を大勢で囲み、賑やかな夕食となる。夜になり、かつての子供部屋で一緒に布団を並べるなつと千遥たち。これまで二人がどうやって生きてきたかをお互いにもっと知りたいと話し… (Yahoo!テレビより引用) |
昭和50年(1975年)――「しばた牧場」の看板前に立つ、坂場家と奥原家。楽しい夏休みが始まりました。富士子と砂良がお出迎え。
優は富士子に抱きつき、千夏はきちんと挨拶をしています。優に対して、あんな聞き分けのいい子供はいないだの、育てやすいはずだの、そういう意見もあるようですが。優は活発ですし、楽に育てられるおとなしいだけの子には見えません。千夏と比較するとわかりやすいですよ。
富士子は挨拶はいいからとそんな優に寛大です。
「なんもバスでなくてよかったのに!」
「歩きたかったので」
駅、バス停から徒歩で来るくらいなら、電車の時刻を教えておいてくれたらいいのに。夏休みはまだしも、冬ですと危険です。地方生活の車は命を守ります。生活必需品です。
この後、なつたちは牛舎の泰樹のもとへと向かいます。
「ご無沙汰してます」
千遥がそう挨拶すると、泰樹は無言のまま、感無量の表情となって、彼女に抱きつくのです。
表情も仕草も、まるで無邪気な子供のよう。迷子だった子供が、誰かに抱きつくように見えなくもありません。
なつよ、誰もが歳を取る。
そして深くなるんだ――。
父がナレそうで告げます。
この場面は、泰樹の加齢が凝縮されていました。ゆっくりと牛を撫でる手。挨拶もなしに頼るように抱きつく動き。立っているだけでも疲れていそうな様子。なつと千遥、そしてイッキュウさんの目にも、彼を労る気持ちが溢れています。老化に衝撃を受けていることも、伝わってくるのです。
「じいちゃん、ただいま」
「おかえり。千遥も、おかえり」
泰樹はやっとここで言葉を発します。千夏を紹介され、優ともどもゆっくりと撫でるのです。
「おじいちゃん、ただいま」
「ああ……」
彼はそう返すのでした。残り少ない日を噛み締める、そんな姿があります。頬には涙が光っています😖。
「数を数えるように、指を折ってしぼる。そう!」
なつがそう指導し、千夏が搾乳に挑んでおります。
すると牛乳が出てきます。
「ほら、できた! 上手だね」
泰樹の教えはなつに引き継がれ、『大草原の少女ソラ』を通して視聴者に見せてきました。
記憶の継承がそこにはあります。
優も挑み、これもうまくできるのですが。イッキュウさんもやってみたいと言ったところで、なつは冷静に言います。
「イッキュウさんは、やめた方がいい……」
何気ないシーンですが、イッキュウさんはムッとしていない。それになつの判断は妥当だと思います。イッキュウさんは育児に理解があって最高の夫だけれども、彼は手先が不器用、危険性への判断が鈍く、いきなり動く大変なことなるからね。そこは、理解と受容です。
食卓で、搾乳のことを話す一家。
ソラみたいにできたと千夏は誇らしそうです。
「優ちゃんもできたよ!」
「僕もできるよ!」
「張り合わなくていいの」
拓男をそうたしなめる砂良。
子供も大人も、楽しそうな食卓です。
なつに『大草原の少女ソラ』の感想を求められた泰樹は、こう答えます。
「うん、うん……」
横から剛男が、毎週欠かさず見ていたと説明。
しかし、泰樹はうまく説明できないのです。
「ちょっと……ちょっと疲れた、先に休む」
そう告げて、食卓から寝室へと向かってしまいます。
「じいちゃん大丈夫?」
なつがそう告げます。富士子は安心させるように言います。
「大丈夫さ、いつものことだから。歳だしね、自然現象。今日は動いた方」
照男はこう続けます。
「ゆっくりさせた方がいい」
もう90を超えていて、あれが普通だと説明されるのです。
これもリアリティのある描写です。離れて暮らすということは、帰省時に歳老いた人と向き合い、自分の心に痛みが刻まれるということでもある。
その夜、娘を挟んでなつと千遥姉妹は語り合います。
まるで昔の自分たちを見ているみたい。そう思い出すのです。
この姉妹は、ちゃんとした布団で寝ることはなかったけれども……。
思い出されるのは、兄・咲太郎と姉妹が身を寄せ合っていたときのこと。
「よく生きたね」
「育ててくれて、ありがとう」
感謝する妹に、姉はこう告げます。
「千遥がいたから、生きられた。つらい思いをさせたけど」
「浮浪児でよかった。今まで出会えた人がいるから」
「元気でいてくれてありがとう」
「お姉ちゃん、こちらこそ」
「生きてくれてありがとう、千遥……」
姉妹が語り合うところへ、風呂上がりのイッキュウさんがやって来ます。
しかし、話の腰を折らないよう、彼は見守っているのでした。
翌日、あの企画がお目見えです。
アイスクリーム!
昔の牛舎を改装しました。かつて泰樹が、照男、戸村父子と作業をしていたあの場所です。寂しいような、よい利用のような。
そこは北海道の女性が仕事の合間にがんばって考えたような、ちょっと田舎っぽいけどめんこい装飾があります。
ここで富士子が、三種類のアイスを出してきます。食器がバラバラなのが、いかにも 副業ぽくていいですね。
「うん、おいしい!」
「おいしいっ!」
「でしょ!」
味は抜群――これぞ牧場の味なのでしょう。食べたくなる。
「お客さん来てるの?」
「うん……まぁ」
ちょっと返事が鈍い富士子です。と、そこへ……。
「来るわけないしょ。宣伝も何もしていないのに、誰もここまで来るわけないしょ」
げえっ、夕見子!容赦なく、宣伝をしなければダメ、開業前にしておくべきだったと言い出します。
富士子は東京にいたのに、できなかったのだからそちらが考えるべきだったと、反論します。
「喧嘩しないで! 夕見、私の妹、千遥」
「やっと会えた!」
夕見子よ。そこは「はじめまして」あたりじゃないのか。
夕見子は、富士子をやりこめようとしるわけではない。独自の策を考えて披露した結果、挨拶の順番がおかしくなるだけなのです。
千遥とも挨拶を抜きにして本気でコンタクトを取りたくて、興味津々といったところでしょう。
さて、ここから雪月へ。
夕見子は送迎係ですね。
優と千夏にとっては夢のような一日。こんなにおいしいものを食べちゃって。
はー、やっぱり北海道旅行はこうでないと!
『大草原の少女ソラ』以来、旅行者が増えてこの店もますます大繁盛だそうで。
「儲かって儲かって、足向けて寝らんない!」
とよが嬉しそうなホクホク顔を見せています。
「やらしい! 儲かるって、どうでもいいしょや!」
すかさず姑を軽く叩きつつたしなめる妙子。
いい味出してますなぁ。妙子は儲け以前に、アニメが面白くて毎週楽しみにしていたと言います。
「何より面白い! 家族で見てた!」
雪次郎がそう言います。劇団仲間の蘭子とレミちゃんが声優として活躍することも、彼にとっては懐かしいのです。あの日々は、無駄になっていませんね。
雪之助は、あの作品のおかげで雪月の包装紙が全国にまで広まると嬉しそうに言います。
なつは、あの絵がソラの原点だと言います。
「天陽くんもうれしいべな!」
そう思い出されます。天陽も作品の中で、包装紙の中で生き続ける。そして広がってゆくのです。
「天陽くんにも足向けて寝らんないねえ〜」
「そればっかり〜」
とよがある意味感動をぶち壊しにきます
「たくさん食べてね〜」
そう促されるわけですが、なつは天気が崩れそうだから、早めに帰ると告げます。
とよは、なつにじいちゃんが何か言っていなかったかと聞いてきます。
「漫画だよ。感動してたべさ」
「アニメのことですか?」
「そうだよ。しゃべってないのかい? 朝日を見たって」
夜明けの中、開拓をしながら、朝日を見る泰樹。その帽子を風が飛ばしてゆきます。
開拓に励んでいた日――何度もああいう朝日を見た。この土地を捨てようと思っても、朝日を見ると勇気が湧いて来た。
ここであきらめてなるものか!
それをなつが、見してくれた。そのことをとよから聞かされて、イッキュウさんともども感無量の思いを噛みしめています。
それが千遥にも伝わってゆきます。
「なっちゃん、ゆっくりしていきなさい。じいちゃんのそばに、少しでも長くいてやって」
「とよばあちゃん、ありがとう」
なつは、噛み締めるようにそう言います。
なつだけでなくて、泰樹ととよの関係を示すような場面だと思いました。とよ相手には、素直に話せる。とよは彼を理解して、受容できるから
天気が崩れる中、夕見子が柴田家へなつたちを送ってゆきます。
そんな中、照男はパイプラインの説明。
思い出のある古い牛舎が壊されるとなつは聞き、ちょっと時代の流れを感じています。
でも、壊さなければ進めない。社会も、朝ドラもそうです。
ここで激しい雷鳴が鳴り響きます。怯える優がしっかりとなつに抱きつきます。千夏も怖がっています。こういう反応で異常事態を見せます。
『なつよ、嵐になりそうな気配だ――。』
父ナレがそう語る中、泰樹の目つきが鋭くなっています。
次回に続く・・