【第145話あらすじ】「なつよ、この十勝をアニメに(145)」 マコプロダクションで日曜日も忙しく働くなつ(広瀬すず)たち。そこに千遥(清原果耶)とその娘、千夏(粟野咲莉)が現れた。「大草原の少女ソラ」のファンだという千夏に、麻子(貫地谷しほり)がソラのセル画をあげるも、足早に去ろうとする千遥。なつのことは千夏には何も話していないのだと言う。今どうしてるのかと聞くなつに、千遥は神楽坂の料理屋で働いているので、お客として一度来てほしいと言い残して去り…。 (Yahoo!テレビより引用) |
昭和49年(1974年)――『大草原の少女ソラ』は、テレビの向こう側から現実へ飛び出し、別れていた姉妹を結びつけました。千遥の娘・千夏がマコプロを訪れ、そしてなつが気付くのです。
「千遥だよね? 私がわかる?」
深く頷く千遥。
「お邪魔して、すみませんでした……」
「何言ってるの? うれしい。来てくれて、ありがとう」
再会した姉妹の物語が、こうして始まります。
千遥は、どこがぎこちない声で、娘の千夏がファンだと説明します。家族で楽しんでいるのだと。
毎週どんなところで作っているのか、見たくなったそうです。
でも、そこまでするファンは、そんなに多くはないでしょう。マコもびっくりして感激していましたっけ。
「本当に千夏っていうの? こんにちは」
なつは感激し、千夏に挨拶をします。名前から妹の愛を感じてしまう。千のなつ。そこまで姉のことを忘れなかったんですね。ここで千遥は、やや焦り、釘をさします。娘には、あなたのことは何も話していないのだと。再会しても素性すら言えない――そんな苦しみがそこにはあります。
なつはここで、様子を見に来たイッキュウさんと優を紹介します。
「私の夫と娘です。娘の名前は優、夫は一久です」
感動はするけれど、やっぱり悲しい。千遥の夫はどこにいるのだろう?
この場面は、敬語が複雑に混じり合っています。距離感です。言葉遣いだけで、姉妹の間の溝がわかる。清原果耶さんにも、圧倒されてしまう。ちょっと暗いニュアンスのある顔が、すごく似合います。どこか寂しそうでもある。ただかわいいだけではなのです。
千遥は、イッキュウさんにも挨拶し、そして立ち去ろうとするのです。
「いつも拝見しています。ありがとうございました。失礼します」
「ちょっとまって! 今、どこにいるの? 教えてもらえない? お願い!」
「……神楽坂の、杉の子という料理屋です。もし、よかったら、お客様としていらしてください」
「行く、必ず行く! 兄を誘ってもいい?」
「あなたが誘いたい方なら、私は構いません。それじゃさようなら」
「さようなら……」
姉妹が別れると、イッキュウさんは状況を分析します。あ、出た、めんどくさいイッキュウさんだ。
いや、ここでのやりとりはそうでもないんですけど。例えばの話、頭痛がするとこぼした時に、心配して声をかけるよりも前に、即座にグラスと頭痛薬を持ってきそうな。そういうところはある。
「大丈夫か? なつ」
というルートにはいかない。そこは頭の隅にでもどうぞ。
「居場所を教えてくれたのか」
「うん、今でも昔のこと、隠しているみたい。ああ、でも、よかった、信じられない!」
「そうだよ、すごいことだ」
「ねえ、写真の人でしょ? ママの妹でしょ」
「そう、そうだよ。優の叔母さん。千夏ちゃんは優のいとこ」
ここで、優は気づいてしまう。小道具にはこういう意味があるんですよね。
なつと咲太郎は、絵にせよ写真にせよ、家族を常に考えてきました。
これは重要なことだと思います。いくら家族愛を強調する作品でも、そういうディティールに欠けていたら説得力がないってことでもあります。
そして、なつも優に釘をさしました。
「でも、それは内緒」
うーん、悲しい。せっかくの再会や、いとこの初対面という場面であっても、素性を隠さねばならないとはつらいこと。そしてこういうことは、心理的な負担にもなるのです。
マコは、戻ってきたなつにどうかしたのかと聞きます。戻るまでにちょっと時間がかかったのでしょう。心配そうな表情です。
「あの子のお母さん、私の妹でした」
ここで下山が、戦争で別れ会えなかったと説明します。
そういうことを語ってきたなつは恵まれていたともわかる。千遥は違うのです。
陽平も、感極まった顔。
「やっと会えたのか!」
神っちは、彼独特のドヤ顔気味でこうだ。
「すげえ! ソラのおかげかよ!」
「この作品のおかげで会えた……絶対、いい作品にする!」
なつが感極まって告げるように、奇跡が一つ、既に起きているのだから。
マコは締めくくります。
「みんなでがんばって、この作品で、奇跡を生むわよ!」
マコは強いし、リーダーとして抜群の適性があるんですよね。
ここまで強いとは、私も思いませんでした。カッコいいなぁ。
千遥は、杉の子に戻ります。
なかなかしゃれていて、立派な店ではある。上品でセンスがいい。なんといっても神楽坂ですから。裏路地の雰囲気がバッチリ出ている模様です。
母娘の服装にせよ、この店にせよ。
経済的には恵まれていると思います。
「さっきの人、お母さんのお友達?」
セル画を持って嬉しそうな千夏は、そう尋ねてきます。
「お母さんの子供の頃の友達」
「ソラを作ってるの? すごいね!」
千遥は、どこかさみしそうな顔で娘を見つめます。
それから2階の部屋で話があると伝えます。
2階の子供部屋は、狭いなりに千夏の暮らしがわかる工夫はあります。
おもちゃが多い。当時のものをよく再現している。
ここで場面は、咲太郎と光子が尋ねてきている坂場家へ。
「神楽坂……そんな近くにいたのか」
咲太郎はそう驚いている。
なつは、柴田家を去ったあと、そこに行ったのだと説明します。かつ、客としてならば来てもいいと。
「会いたい! 俺も行っていいのか?」
なつは、なつが誘う客ならばいいと許可を得ていると説明します。
でも、喜びだけでもない。
「ねえ、お兄ちゃん。どうして今になって、会ってくれるんだろう」
答えは千遥が、千夏へと説明してくれます。
「もしかしたら、このままお父さんとお母さん、別々に暮らすかもしれない……」
背景に映されるのは、入学式のスナップ写真です。親子三人が並んでいるほほえましい写真ではあるのですが。
「お父さんは家に帰ってこない……」
写真の登場とセリフだけで、この父がゲスである可能性が浮上してきましたね。
千夏は、別離を薄々と察知しています。
「そのくらいわかるのね」
千遥はそうしみじみと語ります。
「そうなっても、お母さんと一緒にいられる?」
「どんなことがあっても、ずーっと、ずーっと、千夏と一緒にいる……だけどね、千夏。そうなったら、ここにいられなくなる。お店も辞めて、ここから離れる。知らない街で、お母さんと二人で暮らすことになる。それでもいい?」
「それでもいいよ! お母さんといっしょなら」
ここで我が子を抱きしめる千遥。
「ごめんね、お母さん、千夏にちゃんと家族を作ってあげられなくてごめんね……」
「大丈夫だよ。お母さん、私がいるでしょ」
「そうだね……」
坂場家では、咲太郎と光子も来て夕食です。
メニューはカレー。
この食事の場面が見ていてすっきりします。手を合わせて、「いただきます」と一礼してから食べ始めると。
口の中にものを入れたまましゃべるとか。食器を振り回すとか。
食べながらおいしいぃ〜と奇妙な声で叫ぶとか。
ズベベベ、ベチャベチャと音を立てるとか。
そういうことはない。これも、役者の力量だけではなく、演技指導の賜物です。
運命の日は、土曜夜に決まりました。本作はこういう、次はいつにするかという期日設定の細かさがいいと思う…おそらく(*´σ-`)エヘヘ
イベントがダラダラと流れない。スケジュール管理が、ドラマ内だけではなく外でもきっちりできている証拠でしょう。
「信哉さんにも知らせないと」
なつたちはそう話し合います。
イッキュウさんと優は後回しで、その間、預かっていると説明されるのもよいところ。家長である俺を立てろとオラオラしないところが、イッキュウさんの魅力です。
「早く食べないと、始まっちゃうよ」
と、ここで優がやきもきしています。19時ごろってことですね。
食べ終えて、お茶を飲みつつ、『大草原の少女ソラ』を見守る一家。
坂場家も。
そして千遥も千夏も。
『なつ、咲太郎、千遥――なつよ、きみの作った作品で、家族の時間がまたつながったな――。』
父ナレがそう語る中。かつて、父の残した絵を動かして、家族の姿を夢見ていた少女。
そんななつの動かす絵が、家族をまたつなぐのです。
次回に続く・・