【第136話あらすじ】「なつよ、天陽くんにさよならを(136)」 十勝へ帰省中のなつ(広瀬すず)は、雪月を訪れ、菓子職人となった雪次郎(山田裕貴)と夕見子(福地桃子)に再会する。娘の優が雪次郎の作った菓子を食べていると、妙子(仙道敦子)やとよ(高畑淳子)も現れ、わいわいと賑(にぎ)やかになり、昔の雪月の雰囲気が戻ってくる。そこへ雪之助(安田顕)が現れ、天陽(吉沢亮)が描いたというあるモノを見せる。天陽がそれに込めた想(おも)いを、雪之助は静かに語り出すのだった… (Yahoo!テレビより引用) |
昭和48年(1973年)――なつと優は、しゃれた内装を始めた雪月へ。
あのカフェのような内装も、きっとヨーロッパ視察をしてきたあいつのセンスでしょう。
セットひとつで、夕見子センスを醸し出す!そんな本作は、今朝も猛烈に駆け抜けていきます。
雪次郎は、熱心に語り始めました。
・ロールケーキ ・シュークリーム ・餡バタサンド |
隠し味は焼き塩だと、優にまで語り始める雪次郎。
短い場面で、商売繁盛を示す、素晴らしい出来栄えです(´∀`*)ウフフ。
夕見子は三角巾をかぶっているものの、
「いいから食べな」
と、仕切っている。
優に隠し味を説明してどうするのかと夫にツッコミ。
その傍で、父親に似ていると思われる息子・雪見はニコニコ。彼は優相手に、幼い頃、夕見子にはしゃいでいた父そっくりの笑顔を見せております。どうしたってあの頃を思い出してしまいますね。
そんなことを思い出したのか、夕見子は重々しくこう宣言します。
「雪見の人生は、雪見のもの……」
製菓センスがあるとする雪次郎を牽制しているんですね。後継を産むわけじゃないと言い切っていたもんな。
いつもの夕見子ですが、素晴らしいと思います
親の跡を継ぐことが当たり前になっている世界ってありますもんね。
もちろん、雪見本人が父のように、店を継ぐ意志があるのなら文句はありません。
なつはそんな雪見を見て、大変そうだと感想を漏らすのでした。
ここで、妙子が顔を出します。
「なっちゃん、よかったね、笑ってて」
「お義母さん、それではなつが無理して笑っていると決めつけるようなものでは⁉」
妙子も知略が高い。夕見子もそう。小畑家は、嫁姑が上下関係ではない関係があるから見ていてホッとします。
「無理してないよ、夕見。天陽くんは、ちゃんといたから。びっくりするくらい、今でも変わらずいるような気がする」
「天陽がいなくなった気がしない……」
なつは、雪次郎ともども、そう彼の存在を感じているのです。
雪月には、天陽の絵が飾られていました。
ここで雪之助が出てきました。
優を見て目を細めると、こう告げます。
「なっちゃんに見てほしいものがある」
雪次郎が、まだ早いと気遣います。
「それ見たら、なっちゃんが泣くべや」
しかし、雪之助は差し出します。
天陽に描いて貰った絵で作った包装紙でした。
幼いなつが十勝の景色を見下ろすような風景です。
夜遅くに、天陽はこの絵を持ってきました。
「素晴らしいな。ひょっとしてなっちゃん?」
そう問われ、天陽は認めます。
なっちゃんみたいな子。
十勝、北海道にたくさんいる子。
開拓精神を持っている子。
そういう子たち。
そういう子たちとの出逢いを、雪月にこめたい。
「なっちゃんも、それを聞いたら喜ぶだろうに」
天陽は雪之助に頼み込みます。
なっちゃんがくじけそうになっていたら、この包装紙でつつんで、雪月のお菓子を東京に送ってあげて欲しい。雪月のお菓子が、人を喜ばせるように。なっちゃんも、たくさんの人を喜ばせなければならない。
「天陽くんは、子供の頃の思いを、ずーっと大切にしてきたんだね」
「それはなっちゃんも同じだべ」
届けたい夢の詰まったお菓子が、なつの前にあります。
ここでとよが、しみじみと語ります。
「なっちゃん、残された者は辛いけどさ。そのぶん強くもなれるべさ。ならねばね。逝ってしまったものに恥ずかしいべさ。亡くなったものに恥ずかしくないように、ならねばね」
「はい!」
「東京のなっちゃん……」
なつは、涙を浮かべて菓子を見るのでした。
その日、柴田牧場にて。
ミルカーでの搾乳を終えて、富士子と砂良が食事を作っています。
富士子は、なつと優を送ってきた夕見子に軽く驚いています。うん、まぁ、うん、夕見子は事前連絡しないタイプだから・・・。
家には、泰樹、弥市郎、剛男がいます。酒がもう入っております。ここでも正座をしている剛男の、婿らしさよ。
弥市郎は、天陽の生き方を振り返っています。
長いも短いもない、ただそこにあるだけだ。
天陽は、ただそこにあるだけ。
天陽は自分の作品になったのだ。
そこが羨ましい。
カムイが地上の生き物の皮をまとい地上に降りてきた。そしてまた戻る。そういう信仰心です。
彼の言動は、和人とは異なる何かを感じさせます。
夕食になったあと、弥市郎はしみじみとこう言いました。
「俺は天陽になり損ねて生きている」
「そうですね」
剛男は思い切り同意し、食卓が気まずい空気になります。
弥市郎も思わず「あ?」と口にしてしまいます。
剛男はこういうところがある。富士子がそこに惚れた詩人肌ではあるけれど、ズレちゃうんだな。
あわわわわ、と本人が慌ててフォローします。
弥市郎のことではない。天陽は作品そのものとして帰ってきたのだと。
富士子はしみじみと語ります。
「それでも、悲しいものは悲しい……」
「悲しいからこそ、帰ってきた」
と照男が付け足すと、砂良も続きます。
「悲しみが大きいからこそ、家族に残る……」
そして、まだ中学生の地平は、はしゃいだ声でこう言ってしまう。
「生き方までカッコいい!」
「軽々しく言うな」
そうたしなめられる地平ですが、若さだけではなくて世代もあるかもしれません。
富士子の世代は、夫が戦死した未亡人が多い。
その子である照男たちの世代は、父が戦死した世代。なつのような戦災孤児も多い。
地平は、戦争を知らない子供たちなんです。
砂良は、ラブレター熊の思い出を持ち出して、ちょっとその場を和ませます。
賢い女性です。
思い出で、悲しい空気を紛らわせるのだから。
泰樹はこうきました。
「なつ、お前は大丈夫か?」
「じいちゃん。天陽くんは、やっぱりすごいわ。こうしてみんなの中に、生きている」
きっとそれが答えだね、天陽くん――。なつはそう思うのでした。
その晩、なつは優に『大草原の小さな家』』を読み聞かせています。
広い天地に、小さな幌馬車。メアリィ、ローラ、キャリーという三姉妹。
広い十勝に、泰樹の馬車。夕見子、なつ、明美という三姉妹。
そう。まるでそれは、彼女の人生のようでもある。
電気をつけて、なつはスケッチブックに向き合います。
一心不乱に、向き合うのです。
そして朝――。
「ママ、ママ! ママ、すごい! ママの描いた絵、昨日のお話! 見たい、優ちゃん、これ見たいよ、ママ!」
優が大興奮しています。そこにあったのは、絵の中でいきいきと生を受けた三姉妹でした。キャラクターデザイン案です。
なつは、布団の中から優に聞きます。
「優、これ見たいの?」
「うん、見たい!」
そのあと、着替えたなつは階下に降りて、富士子に電話を借りたいと聞きます。
「なんもいいけど」
そして興奮気味に、電話をかけ始めるのです。
『なつよ、それが君の答えか――。』
そう語る父ナレでした。
次回に続く・・・