【第123話あらすじ】「なつよ、新しい命を迎えよ(123)

帰宅したなつ(広瀬すず)に坂場(中川大志)は、なつの仕事中、麻子(貫地谷しほり)の会社に行ってきたことを打ち明ける。坂場は、子供が生まれ、預けやすい年齢になるまで入社を待ってもらうと決めたと言う。なつは保育園の事情を調べ、熟考の上決断をした坂場に感謝し、思わず涙を浮かべる。いよいよ、出産の日が近づいてきたなつは、仲(井浦新)や下山(川島明)、神地(染谷将太)たちに見送られ、産休に入るが…。

Yahoo!テレビより引用)

昭和42年(1967)年――アニメの新天地を目指さないか。マコ・プロダクションという新天地を遠くに見ながらも、なつとイッキュウさんは出産を目指しています。

 

なつは、産婦人科の椅子で別の妊婦さんと、そのお嬢さんを見ています。お母さんのお腹にいる下の子が動かないと、少女はこう言います。

「キラキラバンバン、キラキラアニー!」

すると、胎内で赤ちゃんが動き始める。

姉の誇りに瞳をキラキラと輝かせる少女。それを見守る母。

こういう場面を見せられると、母になったからとなつを追い出そうとする社会は、いかに欺瞞的かわかるというものです。

そして診察室には、産婦人科医・高橋秀子がおります。

 演じるのは田中裕子さん、再放送の『おしん』とあわせてみますと、その女優としてのキャリアが窺えます。朝ドラアベンジャーズ枠には、そういう意味もあると。

ここでの秀子のセリフも、なかなかしっかりしている。

尿検査の結果、血尿でもなければ、タンパク尿でもない。問題ないと言う。

美人女優の尿検査にドキドキする――そういうなんちゃらの水的な話はいらんのよ。興奮する側がふざけているだけだから。そんなフザけたお話ではなく、医療考証しているってことでもある。

していないと、赤ちゃんが動いているところを確認して、広瀬すずさんの笑顔を写して、ハイ終了でしょ。妊婦のリアルに、本作はきっちりと向き合っているわけです。

それから、なつはこう切り出します。

産後6週間での仕事復帰は可能であるか?と。

「生まれてみないと何とも言えない」

秀子はそうキッパリと言い切ります。母は赤ちゃんがかわいいはずだとか、そういう目線はない。励ますわけでもない。

プロだ。結果重視のプロだ。

特に女医ともなりますと、男性医師には要求されない情緒ケアだの、心理的な寄り添いをジャッジされるものですが。医者は医者です。ケアは家族なり、友人なり、カウンセラーなりにお願いしましょうね。

そして、続けてこうです。

「何とかするしかない、坂場さんの場合」

そして自分の体験を語ります。 彼女自身は、産後一週間で仕事に復帰したと。

当時はまだ産婆。産めよ増やせよの時代だから、仕事が途切れない。

まさしく産婆に暇なし。復帰するしかなかったのです。

そうした実体験を踏まえて、不敵にこの女医は笑うのです。

「共働きが当たり前にならないと。医者としては無理するなと言いたいところだけど、働く母としては頑張れだ」

本音と建前が凝縮された、この笑み😊

 

なつは、大きなお腹できっちり仕事をしています。

アニーの表情をめくりながら、担当した中島を呼び出します。

「表情が足りない。泣いている時は、目を閉じているだけでなく、何か工夫しないと」

ここでそれを聞いている堀内が、指示通りではいけないと言い出すのがいい味を出しています。ガッツリと身に覚えがあるもんね。

中島はムッとしながら、子供はそこまで見ていないと反論。 時間がないのに、無駄なことはしたくない……と。

「だったら、アニメなんてやめなさい」

なつはきっぱりと、そう言い切ります。

子供はそこまで見ない。そう言うけれど、私たちは子供の想像力と戦っている。

超えてこそ、夢を見せられる。

「子供をバカにするなら、アニメ作りの資格なんてないんです」

なつはそう断言しました。

これは、本作の根幹だと思います。

子供の創造力が何かを作る。

それは『半分、青い。』に通じるテーマではないかと思うのです。

岐阜にいた創造力豊かな子供である鈴愛と律が、発明を成し遂げたように。なつとイッキュウさんもそうする。

ショックを受けた様子の中島を、なつはなだめます。このあたりは、相手にパンチを入れたまま情緒ケアできない、かつてのイッキュウさん、それに神っちとは違うのです。

「ごめんね、私、産休に入るからけど、しっかりお願いね。中島くんが見せたいと思うもの、しっかり見せてね」

なつの言葉をしっかりと受け止める、そんな中島。

 

最後のカットを仕上げて、なつは荒井に渡します。

「おそくなってかんにんやで」

よそもの関西弁を頑張って使ってる!

「おっ、なんもなんも」

荒井も、よそもの北海道弁で返す!

調子こいてペラペラ話されるなんちゃって関西弁は蛇蝎の如く嫌う方。

関西には多いものですが、こういう話し方ならばむしろ歩みよりですもんね。

歩み寄りは、なつだけじゃなくて。 茜に対しての荒井の対応は、雑なものがどうしてもありました。

でも、彼は変わった。なつたちが、彼らを変えていったのです。

彼はこう送り出します。

「ええ子、産んでや。あとは任せろ」

そしてなつは、仲と井戸原にも産休の報告へと向かいます。

丈夫な子を産んで、また猛烈に働けるように――そう願われるなつ。

それが彼女の実力なのでしょう…多分ねてへぺろ

 

産休に入ったなつは、福祉事務所へ向かいます。 村川という女性職員に、保育園の相談を持ちかけるのです。生まれる前に、そこはクリアしておきたい。

来年春から預かる保育園について尋ねたところ、村川は理由を聞いてきます。

すぐに働く理由として、生活がかかっているのかと、確認してくるのです。

それもあるけれど、そう前置きしつつ、なつはこう言い切ります。

「私は働きたいんです」

「子供を犠牲にしても?」

生活のためならば、致し方ない。

「本来、子供は母が育てるもの。勘違いされていませんか?」

母が家に待っていない鍵っ子は異常。働く女は異常。

そういう一方的な像を作り上げて、経済状況が変貌して働く女性が増え出すと、出る杭を叩けとばかりに文句を言い募る。

『半分、青い。』の鈴愛は、まさしくこういう思想で袋叩きにされていた感があります。

なつにも、そんな打撃がここで当たりました。

 

自宅に戻ったなつは、母子健康手帳をじっと見つめています。

泣くわけでもない。ただ、静かに見るだけだ。

そこへ、イッキュウさんが帰宅します。

イッキュウさんは、なつの様子に気がつきます。

「どうした?」

「何でもない……」

「君が何でもないと言う時は、一人で我慢する時だ。言いたくないなら、言わなくていいけど」

そう告げて、イッキュウさんはなつの肩を抱き寄せます。

イッキュウさんが人間的に成長している!

なつは、そっと一人悔しさを噛みしめています。この重さ、苦しさ。泣かないからこそ、伝わってくる重さがある。

それに応えた広瀬すずさんは、素晴らしい演技だと思いますグッ

 

答えの出ないまま、なつは臨月を迎えます。

そして夜。痛みが腹部に走るのです。

陣痛か? とイッキュウさんが聞くと、まだ早いと答えるのでした。

イッキュウさんとしては、病院に行きたいものの、なつは言います。

「病院には、痛みが10分間隔になってから……

なつは苦しそう。演技指導も、かなり気合を入れたと思いますよ。

「おかしいな……」

イッキュウさんは、不安になっています。

時間が縮まらなくてももう病院に行くべきだと、不安を募らせているのです。

なつよりも、彼が不安でたまりません。

ここでよぎる恐怖。

「陣痛でなかったらどうしよう。この子に何かあったら……」

それは想像するだけでも、大変なことだ。

すると玄関のブザーがなります。

「誰だこんな時に!」

イッキュウさんですら、怒るタイミングである。

無視しようとする彼に、なつは出るように言います。

ガラリと戸を開くと、そこには……。

「おはようございます!」

富士子がいました!

よっしゃあ!

「母さんっ!」

「どうしたの、なつ?」

こんなに素晴らしい登場の仕方があっただろうか。

まさに奇跡的な登場。

朝ドラアベンジャーズが、なつの出産を祝福しています。ああ、ほんとうに女神のようだ。

父ナレはこう告げます。

『なつよ、もうこれで大丈夫だ――。』

次回に続く…