『最強のコミュニケーション ツッコミ術』村瀬健(祥伝社)を読みました。

最強のコミュニケーション ツッコミ術(祥伝社新書)/祥伝社

笑いのプロ村瀬健氏によるツッコミ指南書です。

前作『楽しく生き抜くための笑いの仕事術』も本書と同様にビジネスにおける「笑い」の効用を説くものでした。

前作では、普通のビジネスマンがビジネスに「笑い」を取り入れるのに一番手っ取り早いのが「適度にボケる」ことであるとして「ボケ」がテーマでしたが、本書は「ツッコミ」です。

ビジネスシーンにおいて、相手を笑わせることができればグッと距離が縮まりますが、人を笑わせるのはそう簡単ではありません。

「ボケるという行為は、照れくさいものです。意図的におかしな発言をするわけですから、シャイな人にとってはハードルが高いかもしれません。」(p.30)

「お笑いでのボケとは、常識とかけ離れたおかしな発言をすることです。そして、ウケるには創造力が必要とされます。」(p.7)

そうなんです。ボケるのは照れくさいし恥ずかしい。

そのうえボケには才能、創造力が求められるというのですから、この根本的なところが決定的に欠けているぼくには向いてない。

これに対して、本書によれば「ツッコミ」は努力と経験で上達可能な「スキル」であり、才能は不要だそうです。

「ツッコミの能力は、努力すればするほど、場数を踏めば踏むほど身についていく、後天的なものなのです。」(p.7)

「ボケ」ることを諦めたぼくですが、上記の著者の言葉に背中を押されて「ツッコミ」という未知の領域に足を踏み入れてみました。

まず一番に感じたのは「ツッコミ」の守備範囲は思ってたよりも広いこと。

具体的に紹介するために、ちょっと長いですが該当箇所をそのまま抜粋させて頂きます。

『取引先「しかし、今日は暑いですね」
あなた「そうですね」
取引先「汗をかきすぎて、シャツがびしょびしょですよ」
あなた「失礼ですが、◯◯さんって汗かきなんですか?」←ツッコミ
取引先「ええ。ものすごい汗かきだから、夏はいつもハンカチを三枚持っています」
あなた「三枚もですか!?」←ツッコミ
取引先「そうなんですよ」
あなた「それは大変ですね。でも汗をかいたら、仕事終わりのビールがおいしいでしょ?」
取引先「それが私、お酒がまったく飲めないんです」
あなた「意外ですね。お強そうなのに!」←ツッコミ』(p.23~24)

文中に「ツッコミ」とある箇所が「ツッコミ」ということなのですが、

「失礼ですが、◯◯さんって汗かきなんですか?」
「三枚もですか!?」
「意外ですね。お強そうなのに!」

どれも普通のやりとりであってツッコんでる側には笑いを誘う意図はありません。

けれどこれらも立派な「ツッコミ」の一つであるという。ツッコミの本質はウケることだとばかり思い込んでいました。

では「ツッコミ」の本質は?と言えば要するに「違和感(ボケ)を指摘すること」のようです。

さらに、他人が繰り出したボケをほったらかしにせず、ボケは全て拾っていく姿勢が大事であると。

ボケたのにほったらかしにされたらボケた人はいたたまれなくなりますもんね。

ついつい長くなってしまいましたが以上は序の口です。

「本書は、お笑い全般ではなく、ツッコミ一本に絞り、広く深く追究するものです。」(p.8)と言うだけあってツッコミの実際のテクニック、作法などが詳細に解説されていますが、中でも興味深かったのはツッコミの分類法。

「現代のツッコミには10種類の型」があるそうです。

「指摘ツッコミ」や「擬音ツッコミ」「ノリツッコミ」などいろいろな型が紹介されていますが、その中でも最高難度はフットボールアワー後藤さんが得意とする「たとえツッコミ」だそうです。それぞれの型を比較することで「ツッコミ」に関する理解が深まりました。

本書読了後には、シャイで臆病な私ですが、ボケは無理でもツッコミならやれるかもしれない、いや、むしろちょっとやってみたいと思うようになりましたから不思議なものです。

『違和感を探して、拾っていく。この姿勢が大事』(p.41)

振り返ってみると日常は「違和感」に満ち溢れています。優しさを持ってできるだけ数多く拾っていきたいと思います。

一気呵成に読み終えました。
面白かった。