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真夜中のジェイドからの電話・・・・
アニタは僕が魘されていたと言っていた。

ジェイドの時間と僕達の時間・・・・

ジェイドの魂が僕に会いに来ていた。

僕はジェイドが新しい土地に慣れ、新しい相手を見付け、楽しそうに笑っている姿を想像した。
せめて彼が今、誰かを愛しているのなら・・・・
せめて彼が今、楽しそうに笑っているのなら。
せめて君がこの大地の何処かに生きてさえいてくれるのならば・・・・・
ジェイド、今こそ僕はこの部屋を出ようと思う。






僕はジェイドの墓の前に立っていた。
僕は年に一度、ジェイドに会いに来る。
僕は彼の生まれた日を知らない。だから僕がこの世に生を受けた日に、ジェイドに出会えたという運命を抱いて僕は毎年君の元に足を運ぶ。
ジェイドがあの日、僕に言った言葉・・・・

「愛してるよ、心から、ずっと、永遠にだよ・・・」

死んでしまいそうなくらい僕はジェイドを愛していた。
僕の素直な感情が次から次へと溢れ、涙となって零れていった。

苦しいよジェイド、胸が張り裂けそうだ。

僕の周りの風景の壁が、僕に向かって押し寄せて来る。
風景が揺れ、壁が壊れる。
陽の光が眩しく、それは僕に沢山のジェイドとの朝を思い出させた。

過酷だった・・・・・

ジェイドの僕への愛は、本当に永遠のものになってしまった。

「ジェイド、君はいつでも正直すぎるんだ・・・」

僕は苦しくて涙が止まらなかった。
声をあげて泣いた。

陽の光を受けても尚、ジェイドのその冷たい墓の前で、僕はいつまでも声をあげて泣いた。
いつまでも、いつまでも泣きじゃくっていた。
墓にしがみ付き、いつまでもこの場所から離れたくはなかった。

「エヴァリー、行かないで・・・」とジェイドが言っているような気がした。



僕は見た。
最後の日、僕にやさしくネックレスをかけてくれた時の悲しい瞳のジェイド・・・・
それは僕達の運命を意味していたのだろうか。
ジェイドのやさしい青い瞳は涙一杯に溢れていた。
僕は今、その時のジェイドの瞳を見たのだった。

ジェイド・・・・僕達はこれからだったんじゃないのか?

僕も永遠に君を愛してもいいのなら・・・・
長い一年を待ち、また君に会いに来ることはないだろう。
一年もの長い間、君がたった一人でいるなんて僕にはもう耐えられそうにもないよ。
僕はいつでも君の傍にいたい。

ねえジェイド、それもいいよね。

僕はジェイドから貰ったネックレスを首から外すと、それを墓の前に置いたが直ぐに手に取り、力強くギュッと握り締めた。
僕はゆっくりと空を見上げた。
視線を下ろしたその先には、遠く煙突から一筋の煙が静かに立ちのぼっていた。

「いい場所だね、ジェイド・・・・」

僕はもう疲れていた。

君に会いたくて堪らないよ。
君に口づけもできない。


煙突の煙・・・・

僕達の空。

夕暮れ・・・・・・


遠く離れた二つの愛が、一つになった時、そして、それはやがて小さく光る星の光となって立ちのぼる工場の煙突の煙を見下ろす。


                         さよならアニタ




         ___ 完 ___
その男はジェイドの新しい職場の人間で、ジェイドが通る道に面する場所に住んでいた。
その日ジェイドとその男は乗り合わせて彼の案内で職場へと向かう途中だった。
彼が言うにはその後ジェイドは数々の写真を撮りながら、ゆっくりと職場への旅を楽しんでいたという。何故ならばジェイドが僕達と別れてから直ぐに途中の公衆電話で職場に連絡を入れ、今から出ることを伝えたところ後数週間待ってほしいと言われ、まさか今更アニタのアパートには戻る訳にもいかず、それならばと少しずつ目的の地まで気に入った風景などをお気に入りのカメラに収めていきながら、ゆっくりと車を進めて行くことにしようと決めたのだった。
そしてジェイドは僕達と別れてから数週間後にこの地に辿り着き、そして・・・・死んだのだった。


彼らは交代で運転をしながら平均時速で走る車たちを次々と脇目に追い越しながら、追い越し車線を順調に走っていた。
ジェイドは首から掛けたカメラを片手に「アルバムの整理をしてくれる奴がいるから、俺は好きなだけ撮れるんだ」などと楽しそうに話しながら、気に入った景色を見つけては次々にカメラに収めていったという。

車は順調に走っていた。
トンネルの前で一台の大型トレーラーを追い越した時、後方に見た大型トレーラーが故障でトンネル内の脇に停車していた乗用車に激突した。互いの車両があっという間に炎に包まれた。更に悪い事に後ろから来た三台の乗用車が止まりきれずにトンネル内の炎の中に突っ込んでいったという。
数秒前にそこを通過していたジェイド達は、自分達の後ろで激しい爆音と炎をミラー越しに見た。
自分達が先程追い越した車があの中にいるかもしれない・・・・
小さな子供が乗っていたという。
二度目の爆発音が聞こえた。引き止めるその男を背に大切なカメラさえおろすのも忘れて、ジェイドは燃え盛る炎と熱風の勢いも増し恐ろしい程に渦巻く黒煙の中へと足を引き摺りながら走って行った。

彼らしい最後だった。