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【僕の人生を変えた写真】

吉田ひろきのブログ


初めまして。

「スタジオくるくる」の吉田です。



記念すべき最初の日記ということで、自分がなぜカメラマンになったかをお伝えしようと思います。



当時の僕は、平日はサラリーマン(カーナビの開発)をしながら、休日に趣味のカメラでブライダル等の

撮影をするという"二足の草鞋"を履いてました。


そんな中、友人に面白いイベントがあるからと誘われ向かった先が、

音楽家たちの集いの場でした。


大勢の音楽家たちが、談笑しながら酒を交わし、気の向くまま演奏を楽しむという

音楽に馴染みのない僕にとっては凄く新鮮で、なんとも居心地の良い空間でした。



酒も場も進み・・音楽家たちの演奏が終わりに近づいた時、ほろ酔い(結構泥酔!?)のおじいちゃんが

立ち上がりチェロを奏で始めました。


産まれ故郷である沖縄民謡でした。



なんとも緩やかで流れるような音に、周りの空気が優しく包み込まれるような・・ 

心地よい音色でした。


そんな中、なにかにつられるように一度だけシャッターをきったのが、この一枚です。



構図も設定も何も意識することなく、吸い込まれる様に撮った 



いや・・・



撮れてしまった一枚でした。



この一枚の写真が、劇的に自分を変化させました。



というより、周囲の眼が変わりました。


「私もこの写真のように撮って欲しい」という音楽家たちの依頼が殺到し、

コンサートやライブの写真の依頼が舞い込んできました。



しかし、そこから僕の苦悩の始まりでした。



コンサートへ行った事もなければ、写真の専門学校に通った事もなかったのです。


経験も知識もありませんでした。


とりあえず、近くの本屋へ行き、写真の雑誌を片っ端から買いあさり、

必要な機材を買い集め、撮って、撮って、撮りまくりました。


仕事が終わってから明け方まで写真の勉強をし、時間を見つけてはコンサートに

足を運ぶ日々が続きました。


苦労が実を結び、依頼して頂いた音楽家たちからは

満足して頂ける写真を撮ることが出来ました。



しかし、自分の中では満足いく作品ではありませんでした。


必死になって勉強して撮った一枚よりも、偶然撮れてしまった一枚を

超えることが出来なかったのです。


仕事中も、頭の中は写真のことで一杯でした。



「なぜ、あの時のような写真が撮れないんだろう。」


「どうやったら、あの一枚のような満足できる写真が撮れるのだろう。」


「そもそも、今の写真と何が違うのだろう。」



様々な葛藤が頭の中をぐるぐる回っていました。


悩みを抱え続け一ヶ月が経つ頃、おじいちゃんと偶然話す機会がありました。


彼は本当に穏やかな人で、自分の話や、息子さんの話を微笑みながら語ってくれました。

彼には3人の息子がいて、3人とも芸術家という素晴らしい家庭をもっていました。


『 僕は、音楽の講師という、安定した収入のある環境に身を置く事ができた。

その地点で僕は音楽家ではなく、音楽屋になってしまった。でも、息子たちは違う。

自分の才能という十字架を背負って日々闘っている。


そんな息子たちを僕は心から尊敬する。 』





涙が出てきました。




息子を愛するだけではなく、敬意も持てる父親の姿に感動しました。

人の話をきいて、鳥肌がたったのは始めての経験でした。


そして、僕の事についても語ってくれました。



『 僕はあの写真が好きだ。

音楽が聞こえてくるような素敵な写真は何枚かあったが、

心の奥底の哀しみを表現してくれたのは初めてだ。

今まで生きてきたなかで最高の一枚だよ。 』


とても嬉しい言葉を頂きました。


ただ、あの写真は偶然撮れてしまった事も話しました。それで悩んでいる事も。。

正直に全部話しました。 




おじいちゃんは、全部分かっていた様でした。




『 君も才能をという十字架を背負った人なんだね。


この先も苦しむと思うよ。でも、写真が好きだという事は決して忘れてはいけないよ。


自分を認めてあげなさい。君は選ばれた人なんだから。


好きな事をとことんやりなさい。




但し・・・




"本物"になりなさい。 』







その言葉に、はっとしました。



なぜ撮れないのか。

それは、自分が本物でないからだと。




そこからは、迷いはありませんでした。



個展を開催した後、周囲の反対を押し切り、会社に辞表を出しました。



自分の才能を背負った時から、信じられないぐらいの速さで自分が変わっていきました。

同じ十字架を背負った方々と出会い、日々成長している自分がいます。


撮れてしまった一枚が人生を変えました。




この一枚を超える為に。






本物 になる為に。







スタジオくるくる 吉田裕輝






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